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第49録 レトロな建物たたずむちりめん街道

いい旅ニッポン見聞録2020年5月号 Vol.558

地域の織物産業を伝え、支える

レトロな建物たたずむちりめん街道

京都府与謝野町

▲どこから写真を撮っても雰囲気いっぱい。道幅も当時のまま

京都府与謝野町の加悦地域には、江戸時代以降「たんごちりめん」で名をはせた商家や旅館など近世の建物があります。2005年に重要伝統的建造物群保存地区として選定されたちりめん街道です。800㍍ほどの街道を歩くと、昭和初期の洋風建築の旧加悦町役場や、丹後を代表するちりめん商家で、当時は珍しい2階部分に洋風建築を取り入れた旧尾藤家住宅、昭和初期の老舗旅館井筒屋など、レトロな建物が調和して並んでいます。同じ地割に70%以上の当時の建物が残り、今でもごく普通の生活道。買物袋を持って歩く主婦や学校帰りの子どもたちの声が聞こえます。

もちろん、「ちりめん街道」の名前どおり、本格的な着物・帯から、バッグや小物などちりめんを使った商品を扱うお店や工房でショッピングを楽しめます。また、「シルク体験」として、コースターやストールなどの製作体験や、織物の製作現場に訪れる工房めぐりをすることができます。ちりめん街道の北端に位置し観光案内や休憩スペースを設ける旧加悦町役場内の与謝野町観光協会を訪ねてみてください。

伝統継承と「今」を支える

昔から織物が営まれてきたこの地に、江戸時代、京都西陣から持ち帰った織物技術を発展させ地域特有の気候をいかした「シボ」と呼ばれる独特の風合いを持つちりめんが生まれ、地場産業として根付きました。今でも与謝野町を含む京都の丹後地方は日本最大の絹織物の産地で、日本で生産される和装用白生地織物の約70パーセントを生産しています。

高い技術と高品位な製品は世界中から注目され、日本での生産拠点が減少する中で、和洋装生地だけでなくインテリア商材などさまざまな用途に用いられる素材としての製品作りも行われています。

与謝野町内には、現在400もの織物事業所(人口1000人当たりの織物事業所数では日本一)がありますが、廃業による従事者減少と高齢化などによる人手不足は深刻です。

伝統技術の継承と今も息づく地域産業の発展のため、設備投資に対する支援や織物技能訓練センターでの技術指導など人材確保事業などで地場産業を支えています。

見聞録メモ
問い合わせ
与謝野町観光協会 0772-43-0155
ホームページ「与謝野日々是」
https://yosano-kankou.net/

▲モダンな洋館の旧加悦町役場庁舎、3月に保存改修工事を終えたばかり

▲与謝野町織物技能訓練センター。力織機(りきしょっき)や手機(てばた)の技術指導を行っています