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第22録 魅力はレトロな町並みと人の息づかい

いい旅ニッポン見聞録2017年12月号 Vol.529

広島県尾道市

魅力はレトロな町並みと人の息づかい

寺社が多いのは港の発展と戦禍を免れたから

▲千光寺山の展望台から一望する尾道のまち

JR尾道駅の改札口を抜けたとき、江戸時代に疫病退散を願った奇祭「ベッチャー祭り」の3人の鬼神に遭遇。人だかりのなか、幸運にもソバという鬼神に祝棒で頭をコツンとたたいていただいた。後でご利益を調べると…子宝に恵まれる…のか。

ここ尾道は、瀬戸内海に面し気候は穏やか、目の前は向島がでんと座り、海は川のようで「尾道水道」の呼び名で親しまれています。尾道三山の千光寺山、西國寺山、浄土寺山が海まで迫っているため観光スポットはギュッとコンパクト。ロープウェイで千光寺山展望台まで行き、そこからの眺めは素晴らしく、尾道を一望できます。

天然の良港とともに繁栄

さて、尾道の歴史は古く、繁栄は港とともにあったようです。平安時代1169年、後白河法皇の所領地からの年貢の積出港となった尾道は天然の良港として発展します。その後は、足利尊氏の厚い庇護を受け、室町時代の対明貿易、江戸時代には北前船の寄港地に選ばれるなどで飛躍的に発展しました。当時は白壁の蔵が建ち並び、豪商たちは商売繁盛を祈願して、寺社仏閣を寄進造営していったのです。

尾道は、幸いにも戦禍を免れ、今もなお古い町並みと25カ所の寺社が点在しています。すべての寺社を参拝するのは無理じゃ~と思うのは私だけではないようで、「尾道七佛めぐり」(7カ所)があります。

明治中頃の1891年に山陽鉄道が敷かれたことをきっかけに住宅や別荘が建ち並び、次第に迷宮のような入り組んだ細い道が形成され、「坂のまち尾道」とも呼ばれるようになりました。

尾道はもとより気候温暖・風光明媚なところで多くの文人墨客が訪れ滞在しました。また、多くの文人・芸術家を輩出しています。「文学のこみち」は、美しい風景とともに尾道ゆかりの正岡子規、林芙美子、志賀直哉など25人もの作家・詩人の詩歌・小説の断片が点在する自然石に刻んであります。また、大林宣彦監督の尾道を題材にした「時をかける少女」など映画の撮影スポットが今でもそのままの姿で残っています。

今は、レトロな商店街や裏道、迷路のような山手側にも、古い建物や町並みをいかした個性的な店が増えています。人の息づかいを感じる元気なまち、また行ってみようと思ってしまう魅力的な「まち」でした。

▲ベッチャー祭りの鬼神さん

▲レトロな「尾道商業会議所記念館」

見聞録メモ
・駅に着いたら「尾道商業会議所記念館」にどうぞ。
・観光スポットは盛りだくさん。プランを立てるのがベスト。