自治体労働運動資料室

民主的自治体労働者論アーカイブ

日本共産党「住民奉仕の行政を効率的な機構でーー地方自治体の人件費問題その他をめぐる日本共産党の見解」

 日本共産党は1975年3月22日、「住民奉仕の行政を効率的な機構でー地方自治体の人件費問題その他をめぐる日本共産党の見解 宮本談話」(見解)を発表しました。
 「見解」は戦後の自治体労働組合運動が創始した自治研活動や、大阪・衛都連、京都府職労が模索・探求、実践してきた民主的自治体労働者論の成果を集大成したものでした。また60年代から学際的に探求してきた公務労働論の総決算ともいわれました。
 「見解」は政党である日本共産党の立場を踏まえたものでした。しかしその「見解」は、思想・信条の違いを認め合い要求で団結する自治体労働組合運動に積極的に受け止められ重要な影響を与えました。
 幾つか理由はありますが、まずその「見解」が政府・自民党の「人件費」攻撃とたたかう自治体労働組合に、理論と実践の両面で激励を与えたことが挙げられます。
 もうひとつは「見解」が、政府、自民党など支配層の日本国憲法第15条が持つ公務員の「全体の奉仕者」規定を歪曲した反動的自治体労働者論に、理論と実践の両面から批判を加えたことでした。
 自治体労働者は「全体の奉仕者」なのだから労働基本権や政治的・市民的自由は制限されて当然とする政府、自民党の攻撃は、当時も止むことがなくむしろ激しさを増していました。そうした下で「見解」はその「全体の奉仕者」規定を、公務員を「前近代的な身分的隷属的関係から解放」し「国民全体に奉仕」すべき存在と位置づけ、同時に「公務員が持つ基本的人権、勤労者としての諸権利はその役割発揮の重要な条件のひとつ」と明示したのでした。そして「見解」は「全体の奉仕者」であることを理由に自治体労働者の労働基本権を制限する行政当局の主張を「この反動的自治体労働者論は自治体労働者を反動勢力の特権への忠実な奉仕者に仕立て上げて地方自治を破壊するための議論である」と批判しました。自治体労働者と自治体労働組合はあらためて、日本国憲法が明記する「全体の奉仕者」規定と「勤労者の権利」は対立するものではなく、むしろ統一され発展することで地方自治が発展し、自らの要求と住民の要求もともに実現することに確信を深めたのでした。
 (「民主的自治体労働者論」第1章より)

カテゴリー:
民主的自治体労働者論
年代:
1970年代