辺野古新基地建設阻止へ、新たな出発を 
 沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設問題で、最高裁が昨年12月、翁長沖縄県知事が行った辺野古沿岸域の埋立承認取消処分を違法とした不当判決をふまえて、「辺野古裁判の検証と今後の展望」と題するシンポジウムが1月20日、那覇市内で開催されました。
 このシンポジウムは、辺野古基金を基に、裁判を支援する行政法学者などで構成する辺野古訴訟支援研究会が主催し、「辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議」が共催しました。辺野古訴訟支援研究会は、自治労連地方自治問題研究機構の行政法研究者が運営の中心を担っています。会場には、県民、運動団体、議員、研究者、報道機関など約350人の参加であふれ、新基地建設阻止に向けた新たな出発の場として、決意を固め合うシンポジウムとなりました。

「県民の心を一つに、新基地は絶対に造らせない」翁長知事が決意表明
 シンポジウムは、主催者である辺野古訴訟支援研究会を代表して人見剛氏(早稲田大学教授)が「辺野古裁判の判決内容は、弁護団の主張した点について十分な審査もしておらず、法理論的に見ても、とうてい納得できるものではない。判決の問題点を明らかにし、これからの展望を語るシンポジウムにしたい」とあいさつしました。
 来賓あいさつをした翁長雄志沖縄県知事は、「辺野古新基地建設の阻止に向けて、不退転の決意をのべたい。全国知事会にも『米軍基地負担に関する研究会』が設置され、沖縄の現状について理解が広まりつつある。今後も、オール沖縄の『建白書』の精神に則り、①岩礁破砕許可や設計変更の審査といった県知事や名護市長の持つ権限を用いた行政の力、②現場での県民の心を一つにした運動の力、③今後の一連の選挙に勝っていくことの3つの要素を力にして、辺野古新基地は絶対に造らせない」と決意を表明しました。
 続いて「辺野古裁判の行方~最高裁判決をふまえて」と題して、辺野古訴訟研究会代表の紙野健二氏(名古屋大学教授)が基調講演を行いました。紙野氏は「高裁判決は、拙速な審理で翁長知事の承認取り消しに至る慎重な検証過程を無視し、仲井真前知事の埋め立て承認に広範な裁量を認めた極めて不当なものだ。このような最悪の高裁判決を放置した最高裁の判決は、司法機能を放棄するに等しい」と指摘。「新基地建設を止めるために、今後、県が取り得る有効な手立てとして埋め立て承認の撤回がある。仲井真前知事が行った埋め立て承認の留意事項には、基地周辺の生活環境や自然環境の保全に万全を期すことが定められているが、埋め立て承認後にオスプレイの墜落事故など新たな事態が発生している。今後は、国と再び裁判になることも踏まえた上で、裁判所の審理に耐えうるような撤回の理由づけができるかどうかが課題となる。今日を新たな出発点にして、新基地建設を許さないとりくみをすすめよう」と述べました。

「地方自治や沖縄県民の人権を無視する不当な判決」「埋め立て承認の撤回に向けた検討をすすめるべき」
 その後、「辺野古裁判の検証―新基地建設阻止の今後の展望―」というタイトルでパネルディスカッションを行い、辺野古訴訟弁護団長の竹下勇夫氏、岡田正則氏(早稲田大学教授)、白藤博行氏(専修大学教授)がパネラーとなり、本多滝夫氏(龍谷大学教授)の司会で進行しました。
 竹下弁護団長は、「この裁判は、地方自治の問題も含め多くの論点があったにも関わらず、裁判所はわれわれの示した論点をまともに審議することなく、国の主張をそのまま認める不当な判決を行った。県は和解条項に基づいて国との協議を求めていたが、国はこれを無視して翁長知事を訴える裁判を起こした。和解条項が予定していた手続を外れたことによって、『判決の趣旨に従う』とした和解条項には法的意味がなくなった。翁長知事の新基地建設阻止に向けた行動が、最高裁判決によって制約されることはない」と述べました。
 白藤氏は「この裁判は、国と地方自治体が対等であることを定めた1999年の地方自治法改正後初めて、最高裁が国の地方自治体に対する関与の適法性を判断する裁判だった。どんな判決を下すのかを注目をしていたが期待は全く裏切られた。判決文は、日本政府とアメリカ合衆国による日米合意を尊重することが出発点となっており、地方自治や沖縄県民の基本的人権はまったく無視されている。『法治主義』の名のもとに沖縄を無法地帯にすることは絶対に許してはならない」と強調しました。
 岡田氏は「前知事の誤った判断を、なぜ知事が訂正してはいけないのか。東京都では前知事がすすめていた築地市場の移転を『安全に問題があるから』として知事が止めている。間違いがあれば知事として訂正するのは当たり前だ。最高裁判決は、仲井真前知事が行った埋め立て承認について『明らかに妥当性を欠く場合』や『特段不合理な点』がない限りは適法だとして知事の裁量権を非常に広く認めている。そうであれば、埋め立て承認後に新たに発生した事情により埋め立てをしてはまずいということがはっきりすれば、翁長知事は埋め立て承認を撤回しても適法だということになる。今後は、埋め立て承認の撤回についても検討し、大いにすすめるべきだ」と述べました。
 本多氏は「このような判決を許せば、今後は沖縄だけでなく、全国で地方自治が踏みにじられることになる。辺野古新基地建設の問題を日本全体の問題としてとらえていこう」とまとめました。
 閉会あいさつを行った武田真一郎氏(成蹊大学教授)は「本日のシンポジウムでは、辺野古新基地建設を容認する高裁那覇支部と最高裁の判決が、地方自治を蹂躙(じゅうりん)する間違ったものであることが明らかにされた。いくら国策であっても地元の住民が納得しないことを国はしてはならない。これが地方自治の原則だ。今後、新基地建設に対する住民投票の実施など、間違った国策を是正させるとりくみを県民ぐるみですすめよう」とよびかけました。