7月26日(土)~28日(月)まで「被災地で学ぶホンモノの地方自治─わたしたちの震災復興」のテーマで開催された「第56回自治体学校in仙台」において、自治労連公営企業評議会が企画・運営する分科会が約50 名の参加者で開催されました。

 いまだ収束の目処さえ立たない福島第一原発事故。敷地内には立錐の余地もないほどタンクが置かれ、放射能汚染水が「保管」されています。それどころか、その汚染水の一部は海洋に流れ続けています。

 市民に安全安心の飲料水を供給し、人間の営みの中で汚れた水を再びきれいにして海や川に戻す役割をしている上下水道の労働者を組織する公営企業評議会では、原子力発電所の事故でいのちの水が汚され続けることは、とても深刻な事態だと受け止めています。

 今年の分科会は、被災地で開催されることもあって、この問題を取り上げることになりました。テーマは「放射能汚染と水循環」、日本大学准教授で放射能の専門家である野口邦和先生を助言者に迎え、先生の講演と上下水道に働く仲間を中心に各地の報告が行われました。

 午前中に行われた野口先生の講演は「放射能とは何か」といった基礎的な話から始まり、トラブル続きの放射能除去装置「アルプス」でも取り除けない「トリチウム」の話へと続きました。トリチウムは「三重水」と呼ばれる水素の同位体の一種として水に含まれ、通常の水循環の中に組み込まれてしまうこと、自然界にも若干は存在するものであるが、それを取り除くことは実験室レベルならともかく、大量の水からは困難であることなどが話されました。kousisyasin1

 放射能汚染の影響の大きなものは事故当初のものであるが、今の汚染水の状況をみれば未だ事故の継続状況であり、これ以上の汚染は止めなければならない。データでは海洋の汚染は希釈・拡散・沈殿が進み放射能の濃度や、魚などの生物への汚染も当初に比べると下がっており、基準値以下のものも増えてきている。食物から摂取する放射能の影響については、チェルノブイリの周辺の地域は地産地消の食生活を行っているためこれができず、人体に対する影響も大きいが、日本では行政が濃度を管理し、消費者が数値と食品の種類を選ぶことでその影響のリスクを下げられると話されていました。

 自然界にもともと存在した放射性物質だけでなく、原発事故以前にも大気圏内核実験によってトリチウムをはじめ多くの放射性物質が環境を汚染しており、1960年代はじめには日本の雨水1リットルあたり100ベクレルものトリチウムが含まれていた事実は、その時代に生きていた者にとって放射能による環境汚染の恐ろしさを改めて感じました。

 各地からのレポートでは、上下水道の汚染された汚泥の問題が多く取り上げられました。原発から遠くはなれた横浜でも、事故直後に空間線量が上がり、その後、雨によって流され下水処理場に流入した汚水から発生した汚泥焼却灰に最高で8000ベクレルもの放射性物質が含まれ、住民の反対運動もありその処分がいまだにできず、34000トン以上の焼却灰が場内に保管されている状況が報告され、放射性物質が汚泥に濃縮されるメカニズムの説明から、下水の焼却汚泥は通常の下水処理工程の中で「除染・濃縮」をおこなった「成果物」であり、これを他の土などと混合して線量を下げることは問題であるとの考え方が示されました。

東京では、震災前に資源化されていた汚泥も線量が高くなることで資源化できなくなり、全量が住民に対する十分な説明もないまま東京湾の中央防波堤に投棄されていることが報告され、国が自治体に8000ベクレル以下の汚染土壌の処分を任せたことで、扱いの違いが出ている問題が報告されました。

新潟水道からは、福島県を源とする阿賀野川や信濃川から原水を取水しているが、最大時には17,000ベクレルもの汚染された汚泥が発生したことが報告されました。新潟「県」の基本的スタンスは東電に引き取らせるということであり、新潟市でも100~200ベクレルの比較的線量の低いものはコンクリートの材料などとして扱っているが、それ以上の線量のものは保管状態が続いており、大きな負担となっていると報告されました。

近隣の住民からは、自宅近くの線量が高いが、保管された汚泥のせいではないか?などの問い合わせがあり、浄水場内で住民参加の空間線量の測定会などを行っています。当局が一方的に安全だと言うのではなく、住民の人たちが納得する方法で説明することが必要であり、住民とどう向き合っていくか水道労働者としての立場、私達も当局も被害者だということで、原発政策や再稼働反対の立場に当局を立たせていくことも必要と訴えました。

 会場からは質問や意見が多く出され、まさに「みんなが先生、みんなが生徒」の有意義な分科会となりました。私たち公営企業評議会では、持続可能な社会、水循環、エネルギーをいかに構築していくかを常に運動課題として捉えて活動を行っています。今後とも住民の方たちや学者研究者のみなさん、そして現場に働く私たちが協力共同してこれらの問題に取り組んで行きたいと思います。