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実効性ある原発事故の避難計画へ国の役割発揮を~原発事故避難計画で内閣府に要請

 

 自治労連は昨年12月14日、原発事故の避難計画問題で内閣府に要請・懇談を行いました。自治労連からは原発ゼロ・再生エネ委員会委員長の桜井副委員長、同事務局長の小泉中央執行委員のほか、地方ブロック選出委員など総勢8名が出席。内閣府は担当参事官はじめ3名が対応しました。

 冒頭、桜井副委員長が、実効ある原発事故避難計画の策定などを求める要請書を内閣府に手渡しました。要請書では、現在の避難計画には実効性において課題が多いことを指摘した上で、①実効性ある避難計画や避難者の受け入れ計画へ向け国として必要な措置をとること、②避難計画を策定する自治体を30キロ圏内にとどめるのではなく、原発事故の被害がおよぶすべての自治体を対象とすること、③避難計画を策定する自治体や避難者を受け入れる自治体に、財政・技術・人員などの支援を強化するなど3点を求める内容となっています。

 各要請項目に係り、内閣府は「国として必要な措置をとること」について、他県に避難する計画など行政をまたぐ調整は難しいため、国として地域原子力防災協議会をすべての立地地域に設定し調整を行っていると回答。「避難計画策定は原発事故の被害がおよぶすべての自治体を対象に」には、避難計画を策定する自治体を30キロ圏とすることは原子力規制委員会の指針によるものだとした上で、「福島第一原発事故の教訓から、それまで8キロ圏内だった概念をIAEAの基準最大の30キロ圏内に広げた。まずは30キロ圏内の実効性の高い計画作りをやらせていただいている」と答えました。また「避難計画をつくる自治体や、避難者を受け入れる自治体に対して、財政・技術・人員などの支援の強化を」には、一定の資材購入に内閣府の予算を充てることができるよう柔軟な対応を現在しているが、自治体のニーズには「可能な限り対応したい」と述べました。

被曝の安全基準、人員・技術・財政の不足など計画の具体化で矛盾に直面

自治労連 「実効性に懸念ある」・内閣府 「関係省庁にしっかり伝えたい」

 これを受け各委員から、現場の実情を踏まえ、避難誘導に従事する民間バス運転手や自治体職員の被爆の安全基準があいまいな点や、原発立地自治体と周辺自治体との原子力災害への理解のギャップがある問題、避難させる市町村と避難者を受け入れる側の市区町村との間で意見交換する場が不足している点などについて、「自治体が避難計画を具体化すればするほど深刻な矛盾に自治体職員が直面する場面が多い」と指摘し、「国がさらに主導して措置を講ずる必要がある」と求めました。

さらに、人員・技術・財政の不足は深刻で、「原子力災害に対しても一般的な災害担当の職員が対応する自治体も多く、現実に事故が起きた場合に今の体制で対応ができるのか」との懸念が述べられました。さらに「現場の職員は矛盾に直面しながらも、実効性のある計画にむけ終わりのない努力をしている。これだけのリスクを負いながら原発の電力が必要なのかという根本的な疑問もある。そういう思いも受け止めてほしい」と訴えました。

 内閣府の担当者は、「私自身も地方の説明会に出向くことが多い。人員不足などの声は自治体職員から聞くこともある」と述べ、被曝の安全基準が各自治体が判断する「目安」にとどまっている点や、市区町村の声を国が直接く場が不足しているとの指摘などを「関係省庁や内閣府の各地域担当にしっかり伝えたい」と述べました。

 最後に桜井副委員長からは「原発事故の被害は日本全体におよぶもの。全国の市区町村のレベルまで共通認識を持つことは必要。今後も継続して意見交換を」と述べました。

 

(要請書)

2017年12月14日

内閣府特命担当大臣(原子力防災担当)中川雅治 様

日本自治体労働組合総連合 中央執行委員長 猿橋 均

 

住民の生命・安全を守るために、実効ある原発事故避難計画と避難者受入れ計画の策定を求める要請

 国民のくらしの向上、地域の振興に、日々ご尽力されていることに敬意を表します。

 私たち日本自治体労働組合総連合(以下、自治労連)は、自治体・公務公共関係職場で働く労働者を組織し、地方自治の発展、自治体・公務公共関係労働者の生活と権利の向上をめざして運動を行っている団体です。

 政府は、原発再稼働に反対する国民多数の意見に反して、原発再稼働を進めようとしています。一方で原子力災害特別法及び災害対策基本法に基づいて地方自治体が策定している原発事故避難計画は、①避難業務に携わる人員の体制や労働安全衛生対策が不十分であること、②高齢者、障害者、妊婦、入院患者など災害弱者を避難させる対策が不十分であること、③児童・生徒は保護者が迎えに来るまで学校に待機させるなど、現場の実態と合わない国の指針がおしつけられていること、④避難者を長期間に渡って受け入れる計画が策定されていないことなど、福島第一原発事故の教訓をふまえた実効ある内容にはなっていません。

 原発事故は自然災害と異なり、いったん事故を起こせば、被害は市町村、都道府県、国境を越えて、広域かつ長期間にわたって拡大します。原子力に関する科学的・専門的知識を持った人員の配置と必要な機器の配備も必要です。実効ある原発事故避難計画と避難者受入れ計画は、地方自治体の自己責任に任せるのでなく、国が責任を持って必要な措置をとることが求められます。以上のことから私たちは、原発事故避難計画の策定について下記の通り要請します。

1.原発事故から住民の生命・安全を守るために、地方自治体において実効ある原発事故避難計画および避難者の受入れ計画が策定されるように、国として必要な措置をとること。

2.避難計画を策定する地方自治体を、UPZ(原発から30キロ圏内)の範囲にとどめるのでなく、福島第一原発事故の教訓を踏まえ、原発事故の被害が及ぶすべての地方自治体を対象にすること。

3.避難計画を策定する地方自治体および避難者を受け入れる地方自治体に対して、財政、技術、人員などの支援を強化すること。

以上

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