原発に依存しない、地域・自治体づくりへ
自治労連が原発立地自治体の地方組織会議を開催

 自治労連は、原発ゼロを実現し、再生可能エネルギーをいかす地域、自治体づくりの取り組みを進めていますが、原発が立地する地域・自治体においては、①原発なしで地域経済と自治体財政を再建する、②国や電力資本からの地域支配から脱却し、住民本位の地域づくりを進めるために、地域で独自の取り組みが必要になっています。また、原発立地および周辺自治体では、①国が7月まで定める「新安全基準」と再稼働問題への対応、②国の「原子力防災・災害対策指針」を受けた地域防災計画の策定など、当面する課題への対応が重要になっています。

 3月6日、「自治労連原発立地自治体関係地方組織担当者会議」(以下、「担当者会議」と略)を静岡県掛川市内で開催し、学習、各地の交流、自治労連の取り組みについて討議をしました。担当者会議には、北海道自治労連、青森自治労連、福島自治労連、茨城自治労連、静岡自治労連、滋賀自治労連、京都自治労連、佐賀自治労連、自治労連本部、研究機構が参加。会議の前に浜岡原発を視察し、原発問題住民運動静岡県連絡センターの岡村事務局長と、「原発をなくす静岡の会」の小林事務局次長に案内をして頂きました。

いびつな産業・財政構造で、地域コミュニティも衰退
内発的な産業振興、電源三法交付金の改革が必要

 会議の冒頭に「原発立地自治体の調査に向けて」と題して森裕之氏(立命館大学教授)が講演。原発立地自治体の財政について、「電源三法交付金制度(1974年)と発電所施設に関わる固定資産税の電気事業課税減免措置廃止により、『財政効果』が急増し、自治体の原発誘致を進める重要な契機になった」と指摘。「電源三法交付金制度は創設後も改正されて、交付期間の延長、交付金額の拡大、使途の拡充がされてきた。さらに、電力会社から立地自治体への『協力金』という名目で、電源三法交付金の使途制限を埋め合わせている。原発立地自治体財政の特徴は、①電源立地地域対策交付金が歳入総額に占める割合、原発関係の地方税と固定資産税の割合が高いこと。とりわけ町村では財政力指数が1を超えていること。②地域経済への影響では、原発の建設投資のうち、立地県内への発注割合は2~3割程度にすぎない。福井県の美浜発電所の雇用は、半分が県内で、美浜町には雇用者の4分の1程度にとどまっている。立地自治体では、『原発誘致で地域経済が発展する』と夢を描いていたが、現実は、地域資源の喪失、いびつな産業構造、無駄なハコモノ施設が林立し、地域コミュニティが衰退している」と指摘。「原発の廃炉に向けて、地域資源を活かした内発的産業振興を進めることが必要。また、電源三法交付金を『廃炉交付金』にして、地域経済の再生に活用するなど、制度上の工夫が必要だ」述べました。

国と電力会社の「原発マネー」で、がんじがらめの地域支配が

 学習会の後、山口祐二副委員長を座長に会議を再開。久保中央執行委員が、①安倍内閣の再稼働をめぐる動き、②国の「新安全基準」、「原子力災害対策指針」などの情勢報告と、自治労連本部、原発立地関係の地方組織での取り組みについて提案を行った後、各地の現状と取り組みについて報告・交流しました。

 北海道自治労連の東原さんは「泊村では人口がほぼ半減した。周辺自治体も30~40%人口が減っている。漁業収入も半減した。一方で建設業は収入が若干増え、電気・ガスでの雇用者は3人から72人に増え、サービス業も3割増えた。村税の収入に固定資産税が占める割合は95%になる。積立金は17億円。原発ゼロで、どう雇用の場を生み出すのか、近隣の首長とも懇談していきたい」と報告。

 京都自治労連の池田さんは、「舞鶴市役所と福井県の高浜原発との距離はわずか12キロ。人口6000人のおおい町に、日帰り温泉が3つもあるなど、交付金、補助金、寄付金など原発マネーによるがんじがらめの地域支配がされている。関西電力による地域支配の構図を地域調査で明らかにしたい」。

 京都自治労連の松下さんは、「昨年、福井県おおい町の公共施設を調査した。ある小学校は建設費が32億円で全館冷暖房完備。スポーツ施設などもたくさんあり、サッカースタジアムも建設中だった。これらの施設は住民からの要望で造られたのではない。莫大なお金をいかに消費するかという行政の都合で建てられたものばかりだ。秋までに調査結果をまとめ、提言を発表したい」と報告しました。

 佐賀自治労連の浦中さんは、「玄海原発から唐津市まで15キロ。玄海町は『九州のチベット』と言われ、反対運動がおこらないくらい貧しい地域だった。そこに原発がつくられた。玄海町は人口6300人だが、原発の定期検査で1日1800人が町内に入る。原発が停止してから、駅前のシティホテルや旅館が倒産した。原発への依存度は高い。佐賀自治労連が玄海町の旅館業組合にヒアリングをしたところ、今後は修学旅行や大学のスポーツクラブの合宿などを誘致しようと学校や行政に働きかけていると語っていた。原発関連の税収や交付金が町予算の7割を占め、地域経済への影響は大きい」と述べました。

周辺自治体は「徹底した安全対策なしには再稼働反対」

 静岡自治労連の林さんは、浜岡原発の再稼働問題について「浜岡原発が立地する御前崎市は別として、原発の周辺自治体は、『徹底した安全対策なしには再稼働反対』や『再稼働は絶対反対』と表明。県知事は、県国民大運動実行委員会との交渉で、『使用済み核燃料の保管可能期間が2~3年しかなく、浜岡原発を動かせるメドがたたない』と発言している。一方、中部電力は海抜22メートルの防波壁を建設中で、再稼働へ向けての環境整備をすすめている」と説明。「静岡自治労連は、憲法キャラバンを実施し、再生可能エネルギーの普及について自治体と懇談している。静岡市や県内のいくつかの市でも検討が始まっており、掛川市は市民参加型で太陽光発電の普及をめざし『掛川モデル』と言われている。今後、労働金庫や生協とも懇談して、再生エネ事業を普及していきたい」と述べました。さらに防災問題に触れ、「南海トラフ地震で予想される死亡者は全国で30万人と予想されているが、そのうち10万人が静岡県での死者と言われており、県民の第1の関心事になっている。静岡自治労連は『地域防災計画にもの申すチーム』を立ち上げ、今後要求書案をまとめていく。自治労連として、原発の廃炉を視野に入れた中長期課題を明らかにしてほしい。少なくとも、『地域防災計画ができなければ、再稼働の判断はするな』という統一した要求を掲げてほしい」と要望しました。

 こうした、現状やとりくみの報告を受けて、本部から今後の取り組みについて提起し、①各地方組織で原発立地自治体の地域調査を行い、「原発なしでの地域づくり」の運動を進める、②原発再稼働を阻止する取り組みを進める、③「原子力災害対策指針」に基づく「自治体の防災計画策定」に対する取り組みを進める、④原発廃炉を視野に入れた中長期課題、政策課題について検討することを確認しました。また、自治労連として、「脱原発首長会議」との共同や、原発立地自治体首長との懇談を追求し、原発なしで地域・自治体を再生するシンポジウムなどの開催についても検討することにしました。

浜岡原発を視察~「使用済核燃料プールは耐震構造に弱い」など問題が


※浜岡原発5号機を望む高台で説明を聞く参加者

 「担当者会議」に先立ち、浜岡原発を視察しました。

 中部電力は原発の敷地内への立ち入りを禁止しているため、浜岡原発の施設を紹介する「原子力館」で、原発問題住民運動静岡県連絡センターの岡村事務局長に説明していただきました。浜岡原発は福島第一原発と同型の原発であり、原子力館には実物大の模型を展示し、格納容器もわかるように紹介しています。海抜62メートルの展望台から原発の敷地の全体を望むことができました。また、「使用済み核燃料は水から出すことができないため、格納容器からプールに移す際も水の中で行う必要がある。そのため、使用済み核燃料プールは必ず格納容器のすぐそばにある。格納容器は頑丈にできているが、使用済み燃料プールは耐震構造の関係で軽くなければならず構造的に弱い。使用済み核燃料プールが原発のアキレス腱のひとつ」と説明をうけました。


※実物大 原子炉模型