風力、家畜排せつ物・木質バイオマス、太陽光・・・地域に眠っている資源を“宝”と見い出して、再生可能エネルギーに活用

自治労連プロジェクトチームが、岩手県葛巻町を現地調査

 自治労連の「原発ゼロ、自然・再生可能エネルギー政策推進プロジェクトチーム」(団長:山口祐二副委員長)は、5月17日~18日、再生可能エネルギーの先進地・岩手県葛巻町を訪ね、再生可能エネルギーを全国で普及するにあたっての自治体の役割や課題などについて現地調査しました。

人口7千人のまちに、乳牛1万頭、肉牛1千頭。東北一の酪農郷人
 葛巻町は、盛岡駅から車で1時間半、岩手県の北部にあり、「北緯40度、ミルクとワインとクリーンエネルギーのまち」がキャッチコピーです。町の面積は434.99㎢で、横浜市とほぼ同じです。森林が86%を占め、人口は7273人、2877世帯です(2012年4月1日現在)。牛の飼育頭数は、約11000頭で、人口よりも牛が多く「東北一の酪農郷」と言われています。
 ここでは、13年前から、風力発電を皮切りに、太陽光発電、木質バイオマス、家畜ふん尿を活用したバイオガスなど、自然・再生可能エネルギーを活用したまちづくりを行っています。

「天と地と人のめぐみを生かす」を基本理念に
 葛巻町は、「スキー場なし、ゴルフ場なし、高速道路なし、駅なし」の町。1999年3月、産業の振興や環境問題の観点から再生可能エネルギーの積極的な導入を進めようと、「葛巻町新エネルギービジョン」を策定しました。風力や太陽光などの「天のめぐみ」、畜産ふん尿や水力などの「地のめぐみ」、豊かな風土・文化を守り育てた「人のめぐみ」を柱に据えた基本理念を具体化してきました。2004年2月には、「葛巻町省エネルギービジョン」を策定し、エネルギー自給率100%をめざすことを目標に掲げました。
初めにつくったのは、袖山(そでやま)高原風力発電所。第三セクターであるエコ・ワールドくずまき風力発電(株)が実施主体になり、1999年6月に400キロワットの風車3基が建設されました。標高1200メートルの山岳地帯に建設したのは日本で初めてです。さらに、2003年12月、電源開発(株)が出資する(株)グリーンパワーくずまき風力発電所が上外川(かみそでがわ)高原風力発電所を建設。1基1750キロワットの風車が12基建設されました。年間予想発電量5400万キロワットは、町民の全世帯数を上回る約16000世帯分の電力発電量に相当します。

家畜ふん尿バイオマスや木質バイオマスに挑戦するも課題山積
 葛巻町は、「地域に眠っているもの、邪魔なものを宝と見出して、活用しよう」と、家畜ふん尿バイオマスや木質バイオマスに挑戦しています。
 葛巻町が事業主体となり、2005年、牛のふん尿の適正処理を目的に、メタン発酵槽とガスホルダーから成るバイオガスプラントをくずまき高原牧場内に建設しました。牛のふん尿と一般家庭などの生ごみをブレンドし、発酵槽に入れることで、使用後のふん尿は消化液という臭いの少ない良質な液体肥料になります。
 その処理過程で、発酵槽で発生するメタンガスと少量の軽油を燃料にして発電することができます。発電に使うふん尿は、牛200頭分で、発電能力は37キロワットです。しかし、今のところはコスト的に見合っていません。 今後は、ガスの発生を促すための対策が求められています。
 また、2005年に、国の実証実験に協力し、くずまき高原牧場のなかで、間伐材を使う木質バイオマスガス化発電事業を始めました。設備は2009年に町に無償提供されましたが、間伐材の搬出経費がかさみ採算があわず、現在は休止しています。この処理過程で温水をつくることができますが、配管が整備されていないので利用ができていません。今後は、これまで廃棄処理していた温水の利用や、採算ベースなどについての検討が必要です。

「町内で生産された電力を、町民に還元してほしい」の声が
 葛巻町は、葛巻町省エネルギービジョン後期推進計画を策定するにあたり、町民アンケートを実施しました。再生可能エネルギーへの関心度は約70%と高く、今後の町の取り組みとして、太陽光発電の普及や風力発電の増設・新設への期待が大きい結果となりました。その一方で、「風力で生み出した電気を町民に還元してほしい」「町は再生可能エネルギー自給率100%以上の町と言われているが、その電力を町民が利用しているわけではないので実感がない。100%以上なら他に売らないで町民に利用させてもらいたい」との声も寄せられています。

国の電力政策の見直しが不可欠
 こうした町民の声に応えるためには、国の政策の見直しが不可欠です。既存の送電線を一般に開放し、自由に使えるようにする、いわゆる発送電分離が必要です。さらに、現在、町で生産された電力を1キロワット8円~10円で東北電力に売電する一方で、東北電力からは25円~26円で買います。7月からスタートする再生可能エネルギー固定価格買い取り制度は、すでに契約して売電している施設は対象としない可能性が高いとされており、地域で発電をする意味も問われかねません。この事態を打開するためには、発送電分離とともに、7月から始まる固定価格買取制度による新たな買取価格を既存の施設にも適用することが求められます。同時に、国や自治体のエネルギー政策推進に対する国民、住民の参加も重要な課題になっています。自治労連は、4月に実施した長野県・大町市の視察結果もいかし、8月の定期大会で「再生可能エネルギー政策の提言案」をまとめることにしています。