メニュー

第150湯 中世の歴史遺産が点在する静かな山里

悠湯 旅情2013年5月号 Vol.474

自然あふれる山間の宿 登録文化財の和風旅館

大阪府河内長野市・天見(あまみ)温泉

中世の歴史遺産が点在する静かな山里

喧騒あふれる大阪難波からわずか40分。和歌山県との県境にある天見温泉「南天苑」は四方を山に囲まれた長閑な山里にあります。

「南天苑(なんてんえん)」は、広い敷地に建つ風格の漂う和風建築の温泉旅館です。この宿は日銀本店や東京駅の設計者である辰野金吾氏が設計した数少ない和風建築物であり、1913(大正2)年に「堺大浜塩湯別館」として建てられたものが、1935(昭和10)年に移築されました。2003年に国の登録有形文化財に指定されており、どっしりとした造りのなかに、落ち着いた佇まいを見せています。

また3千坪の日本庭園は金剛・葛城山系を借景とした造りで、四季折々に趣を変える豊かな自然が楽しめ、庭園を訪れる野鳥のさえずりは都会の喧騒から隔絶した癒しのひと時をもたらしてくれます。

湯の泉質は天然ラジウム泉で、強い発汗作用で新陳代謝を促し美容と健康によい軟らかい肌触りの湯です。この湯は、南北朝時代当地に開湯された湯治場の名から「極楽湯」と呼ばれています。

料理は会席料理を部屋食で供され、家族連れはもちろん、一人でも泊まれることから、気ままな一人旅にも絶好の宿です。

この地は、真言密教の聖地・高野山に近く、参詣者の宿泊も多いといいます。

高野山は、海抜850メートルにある山上の宗教都市で、金剛峯寺(こんごうぶじ)、根本大塔(こんぽんだいとう)を中心とした壇上伽藍(だんじょうがらん)、老杉(ろうさん)の木立のなかに苔むした二十万基に及ぶ墓石が立ち並ぶ奥の院参道など、空海の作った真言密教の世界が広がっています。

さらに奈良県境に連なる金剛山、葛城山麓には南北朝時代に南朝を支え、足利幕府軍と奮戦し、「大楠公(だいなんこう)」と尊ばれている楠木正成(くすのきまさしげ)ゆかりの千早城址や寺が点在しています。なかでも正成の首塚のある「観心寺(かんしんじ)」では、門前に巨大な馬上姿の正成像があり、遺品も数多く残され、後に軍学の神様とされた正成の往時を偲ぶことができます。

また「願わくは花の下にて春死なん その如月の望月の頃」と詠んだ西行法師臨終の地にふさわしく、桜の寺と呼ばれる「弘川寺(ひろかわでら)」など、奥河内地方は豊かな自然のなかに、中世日本を偲ぶ名所が数多くあります。歴史好きには見逃せない場所です。

▲南天苑の日本庭園

▲楠木正成の首塚がある観心寺

温泉メモ

【天見温泉「南天苑」】

所在地/
〒586−0062 大阪府河内長野市天見158
問い合わせ/
0721−68−8081
交通/
南海高野線「天見」駅徒歩1分
立ち寄り入浴なし。但し、5250円からの料理付きでの日帰り入浴は可
泉質/
単純放射能泉(天然ラジウム泉)

▲辰野金吾設計の南天苑