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第145湯 宮城蔵王の奥深く、大自然に囲まれて

悠湯 旅情2012年12月号 Vol.469

伊達62万石の保養所青根(あおね)温泉 宮城県川崎町

宮城蔵王の奥深く、大自然に囲まれて

 片倉小十郎影綱(かたくらこじゅうろうかげつな)で有名な伊達藩唯一の支城・白石城天守閣は木造3階建てで再建された珍しい城です。東日本大震災でその木造骨組は無事だったものの、漆喰壁のいたる所で亀裂ができ、今年9月に修復工事が完了しました。名物白石温麺(しろいしうーめん)の昼食をとり、遠刈田(とおがった)温泉街を過ぎ、宮城蔵王に向かって坂を登ります。国道457号線を進むと、自然豊かな風景のなかに数件の温泉宿が建つ青根温泉に着きました。  そのなかのひとつ、「湯元不忘閣」は伊達藩当主代々の保養所で、470年前に入浴した伊達政宗が「忘れられない湯」と語ったことに由来します。  以来、不忘閣の歴代主人がこれを守る「湯別当」として高禄を拝領し、守り続けた名湯です。アルカリ性単純泉の美人湯で、400年前に30人の人夫が2年がかりでつくった石風呂をそのまま新たに木造空間で囲った大湯金泉堂、明治初期に土蔵内に造られ檜の優しい香りに包まれた「蔵湯浴司(くらゆよくす)」、貸切露天風呂「亥之輔(いのすけ)の湯」、伊達一門の入った「御殿湯(ごてんゆ)」など、どの浴槽も絶妙です。伝統を感じる懐石料理も堪能。  殿様が使用した青根御殿は昭和7年に同じ姿で再現されたものですが、この旅館の風格を表しています。現在は、宿泊には使用されていませんが、毎朝、不忘閣の従業員が青根御殿を案内してくれます。3つの蔵には伊達家ゆかりの遺品が多数収められており、御殿には虫干しを兼ねて飾ってあるとのことです。  また、多くの文人が逗留し、執筆している宿としても有名です。山本周五郎が『樅(もみ)の木は残った』で眺めつつ執筆したという樅の大木も庭に残っています。  遠刈田温泉には遠刈田こけしの「新地こけし集落」があり、工房で直接買うことができます。  蔵王エコーライン(11月〜GW前まで通行止)を登ると夏はコマクサ平に高山植物が一面に咲き誇り、「不帰の滝」などの滝も多数。県境付近ではエメラルドグリーンの火口湖「御釜」が見事です。  山形蔵王に抜けると蔵王スキー場で有名な蔵王温泉です。白濁の硫黄泉もまた魅力ですが、スキー場はブナ林のなかにあり、新緑・紅葉・沼巡りの散策など、冬以外にも魅力の高原です。

▲夏まだ雪が残る、霧に隠れることの多い「御釜(おかま)」(7月)

▲伊達藩主が泊まった青根御殿のある宿 (3月)

 


温泉メモ

【青根温泉湯元不忘閣】

交通/
JR白石蔵王駅下車路線バスで
遠刈田温泉、
そこからは送迎バス(要連絡)、
東北自動車道白石ICから40分
営業日/
通年営業
所在地/
宮城県柴田郡川崎町青根温泉1−1
問い合わせ/
0224−87−2011
 

▲蔵湯浴司