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第122館 小さな博物館の大きな「鳴り物」の世界に驚愕

日本列島 おどろき・おもしろミュージアム2012年5月号 Vol.462

東京都東久留米市 及川鳴り物博物館

小さな博物館の大きな「鳴り物」の世界に驚愕

 東京の郊外、武蔵野の面影が残る東久留米市の住宅街の片隅に、日本で唯一の「鳴り物」に特化した小さな「及川鳴り物博物館」があります。  民家そのものを利用した小さな博物館ですが、収蔵品は館内の至る所に置かれ鳴り物類で3000点、資料が2000点もあり、圧倒されます。  明治23年製の国産第1号の山葉(やまは)オルガンに始まり、琵琶、琴、大正琴、三味線、尺八、笛、法螺(ほら)貝、トーフ屋のラッパに太鼓、最後には仏具の鈴や木魚に至るまで、ありとあらゆる「鳴り物」がこれでもかとばかりに展示されています。  驚かされるのは数ばかりでなく展示品のすばらしさ。特に琴や琵琶の木目は唸るほどの美しさです。また象嵌(ぞうがん)の施された琴の素晴らしさにも目を奪われます。  これらの展示物のすべては、公立中学の音楽教師であった館長の及川尊雄氏が、27歳から40年以上かけて全国を歩き回って収集したものです。  館内では、及川氏が展示品についてまるでわが子を慈しむ父親のようなまなざしで丁寧な説明をしてくれ、その時間は1時間を上回ることもままあるそうです。  及川氏の「鳴り物」の収集は、単なるマニアとしてではなく、人間が言語を持つ以前から「音」「音楽」を持っていたことに着目し、それが人間の感性にどのような影響を与えてきたのかをたどる手がかりとして収集してきたことがうかがえます。  縄文時代の石笛から大正・昭和に至る日本人の生活のなかにあった「鳴り物」。これらの展示品の一つひとつから醸し出される音(音楽)が、あるいは喜びを、また悲しみを表現することで、日本人の心のなかにどのような潤いをもたらしてきたのかを思いめぐらすことのできる世界となっています。  東京郊外の小さな小さな博物館ですが、そこには、人間の生活のなかに常に存在してきた「鳴り物」の大きな世界が詰め込まれていました。

▲明治23年の国産第1号山葉オルガンなどを所狭しと展示

▲住宅街の普通の民家。なかに入れば驚きの鳴り物の世界が

 


ミュージアムメモ
所在地/ 〒203−0051 東久留米市小山2−11−3
交通/ 西武池袋線東久留米駅西口徒歩10分
開館日/ 水〜日曜日
開館時間/ 午前10時〜午後5時
入場料/ 大人600円、中学生・小学生300円
問い合わせ/ 042−473−5785
事前に電話連絡をして開館日を確認してください