My Way My Life2011年11月号 Vol.456

山口・周南市職労 伴 一利(ばん かずとし)さん

虫は美しい「自然芸術」

 現在日本には、海外から飛来したものをあわせて218種ものトンボが生息しています。  伴さんは自他ともに認める「昆虫博士」、なかでもトンボが大好きです。子どもの頃に買ってもらった「昆虫採取セット」をきっかけに、トンボを主とした昆虫採集と標本づくりを続けています。これまでに作成した標本は約3000匹。足をそろえる、翅(はね)を広げるなど整形し、乾燥させ、虫の名前や、いつどこで採集したかを記録した紙とあわせ、標本に仕上げます。「標本なら写真と違い、いろいろな角度から虫を見られます」と伴さん。標本には、翅・体の色、大きさ、模様の違うトンボがズラリ。見くらべながら、それぞれのトンボの特徴や美しさを観察できます。  一般的に「アカトンボ」と言われるものは「アキアカネ」「ナツアカネ」「ミヤマアカネ」など、体が赤いトンボを指しますが、体の黒いアカトンボもいることが標本でわかります。模様のつき方、位置もさまざまです。そして、すべてのトンボの翅には黒い点のようなものがあることに気づきます。「これは『えん紋』と言い、飛ぶ時に空気の摩擦で翅が振動するのを防ぐ役目をします」と教えてくれました。こうした発見も、じっくりとトンボを見ることができる標本ならでは。しかし伴さんに言わせると「アカトンボの赤はもっと鮮やかなんです。美しさを出せず、自分の標本にはまだまだ納得がいかないことも多いです」と、こだわりを見せます。  昆虫採集は植物や石などの間を這って探すなど根気を必要としますが、伴さんは「じーっと探すことが楽しいんです」とうれしそう。最近では「マンシュウアカネ」「タイリクアキアカネ」など海外からの飛来トンボの採集に成功しました。「草にとまっている時にそうと気づき、網を持つ手が震えましたよ」と、その時の興奮を笑顔で振り返ります。  「山口むしの会」の会員でもある伴さんは、現在山口県のトンボの分布を調べています。「調査を続けながら、県外、特に北海道や沖縄などのトンボを自分でとってみたい」と夢をふくらませます。「住む場所や飛ぶ時間帯によって、さまざまなトンボが見られます。その姿形は美しく、おもしろく、自然の芸術です。ぜひ観察してみてください」と、熱を帯びる伴さんです。

▲トンボ(左)とセミ(右)の標本を手にする伴さん。「美しい標本をつくるポイントは、乾燥剤できちんと乾燥させることです」

▲毎年7月に開催される「豊田ホタルの里ミュージアム」(下関市)主催「トンボ観察・採集・標本教室」の風景。伴さんは講師として参加しています