メニュー

機関紙『自治体の仲間』2017年 5月号 Vol.522 職員増やして、子育て応援

「育休代替」6人の正規配置が実現

職員増やして、子育て応援

愛媛・新居浜市職労

全国の職場で人員不足、長時間労働、そして過労や病休などが深刻になっており、長時間労働の是正・人員増は、さしせまった課題です。全国の地方組織・単組で予算人員闘争のとりくみが始まっており、長時間労働是正、人員増、育休正規代替、現業採用等を実現させるなど先進的な経験をつくり出しています。愛媛・新居浜市職労は、育休代替の正規職員配置を「すべての職場の願い」としてとりくみ、実現しました。

学びと議論かさね、粘り強い交渉

新居浜市職労では、職場の人員不足の抜本的解決を模索していたところ、岡山市職労がとりくんだ育休代替の正規配置の先進例を知り、「これだ!」と、一昨年12月に行われた岡山市の情報交流集会に参加しました。

単組では昨年、昼休みを利用した婦人部年代別懇談会(6・7月)、フロアー別全職場懇談会(9・10月)で丁寧に職場討議しました。

年代別懇談会では、育休取得時は臨時職員へ業務の引き継ぎをするしかなく、職場への遠慮や不安が大きいことや、育休明けの短時間勤務が職場によっては取得しにくいなど、仕事と育児の両立のつらい想いを吐き出す仲間とともに涙することもありました。

「男性もも、すべての職員が、子育て育休への理解を深めることが大事です」と、婦人部の曽我部智香さん。

フロアー別職場懇談会は管理職にも参加してもらい、労使交渉でも、「イクボス(育児BOSS)」宣言する市長と当局の思いに合致することを確認しました。育休代替の正規配置は「すべての職員の要求」として交渉した結果、「岡山方式を考える」との市長回答を引き出して、人事当局も岡山市へ研修にでかけ、今年4月には6人の正規配置が実現しました。

▲現職職員との育休・産休者の懇談会で、職場の様子や人勧・休暇制度等改正の説明、子育ての楽しさや悩みを共有します
働き続けたい思いを大事に

仕事への思いをたずねると「安心して職場に戻れる体制が必要です」と堀口美穂さん。4人の子どもを育てている帆谷麻衣さんは、「子どもの『いってらっしゃい』でがんばれる」そうです。家族と職場と地域への思いが重なった強い思いが運動の原動力です。

婦人部が開いた4月20日の新入職員歓迎会で、入庁2年目市民課の伊藤瑞城さんは、職場の先輩・組合員として「私も去年は不安だった。先輩たちを頼ってください」「もっと働きやすい職場にしていきましょう」と組合加入を訴えました。

歓迎会で、就職の動機を聞かれた新入職員が「慣れ親しんだ新居浜で働きたい」と新入職員にも同じ原動力が見えてきます。

今後の課題は、30人ほどいる育休代替の正規職員をさらに増員すること、職種別採用枠の計画をつくり市当局の定員管理として位置づけさせることです。

仕事も家庭も子育ても精一杯できる職場づくりとともに、地域全体も子育てしやすいよう、行政サービスの充実・向上に向け予算人員闘争をすすめます。

▲34年間続けている新入職員の歓迎会は毎年100人を超える参加。安葉美穂さんは「組合で訴えてきた正規採用を勝ち取ったよ」「何でも相談して」と声をかけます

全国の経験と成果が大きな力に 予算人員闘争をすすめる交流集会

4月22~23日 静岡・伊東市内

自治労連は夏に本格化する予算人員闘争を前進させるため、各地方、職場での予算人員闘争や住民共同の経験と教訓を交流する集会を開催し、全国から150人が参加しました。

育休代替の正規配置を実現した岡山市職労、給食まつりで住民とともに運動を広げて現業採用を実現した長野・上田市職労、労働基準監督署を動かし、保育士の時間外手当請求と人員増への道をひらいた東京・足立区職労の仲間をパネリストに、予算人員闘争をすすめるポイントについて意見を交わしました。

集会では、各地からの職場実態の把握と、職員の声を掘り起こす実践が報告されました。各地の実践と教訓を受けて、自治労連の全国統一行動として、「なくそう長時間残業、自治労連いっせい職場訪問」へのとりくみが呼びかけられました。

5~6月に職場の長時間労働の実態をつぶさに把握し、職場の思いや要求を共有するため、労働組合の姿を職場に示しながら、組合役員が職場訪問でつかんだ職場の実態や組合員の声を、夏期からの予算人員闘争にいかすことが重要です。

▲パネルディスカッションの様子


仲間を増やし力強く夏季闘争へ

安心して働き、くらせる賃金・雇用を
▲パワーポイントで「職場環境と区民サービスの向上につながる」と組合の運動を説明(板橋区職労)

17春闘の賃金引き上げは、民間大手のベースアップが軒並み昨年を大きく下回った一方、中小の引き上げが大手の水準を上回りました。この春闘では非正規職員の雇用と労働条件の改善が課題となっています。最低賃金引き上げ・ディーセントワークの実現は公務と民間労働者共通の課題として力強くすすめられ、新入職員を迎えた組織拡大の運動も各地で前進しています。これから人事院勧告を見据えた各自治体・地方人事委員会への要請や、予算人員闘争にとりくみ、賃金引き上げと人員増を勝ち取るため、夏季闘争に力を結集しましょう。

臨時・非常勤の声を聞け

現場の不安受け止めた法案審議を

自治体職場のあり方に大きな影響を及ぼす地方自治法・地方公務員法「改正」法案成立がねらわれるもと、自治労連は4月11日に参議院議員会館で緊急の院内集会を開催しました。東京、大阪、広島、岡山から非常勤職員らが参加し、職場の実態と慎重審議を訴えました。

雇い止めの「お墨付き」はいらない

大阪・吹田市関連労組児童厚生員支部の田野城晶子(たのしろあきこ)さんが職場の実態を報告。「正規・非正規に関係なく、同じように働き続けられる法整備が必要」と訴えました。

大阪・吹田市内にある10館の児童センターは日曜祝日も開館。100人近くの利用者が訪れます。すべてのセンターに地公法17条非常勤職員と22条臨時職員が勤務しており、週27時間15分のローテーション勤務のなかで、正規職員と同じように働いています。法案は新たに「会計年度任用職員」は1年雇いとするもので、いつでも雇い止めができると、「お墨付き」を与えるようなものになっており、職場に不安が広がっています。

学習をすすめ夏季闘争へ

法案が成立した場合、夏季闘争時の課題として、職場での「改正法」の問題点や課題の学習をすすめ、臨時・非常勤職員の組織化を強めながら、当局交渉、人事委員会要請、職場改善のとりくみが求められます。

新入職員に加入を訴え 安心して仕事ができる職場を

東京・板橋区職労

板橋区職労は4月4日、新任研修に合わせ、組合加入説明会を行い、研修終了後には「新人歓迎会」にとりくみました。

当日はお昼休みの15分間という限られた時間に、新歓企画の実行委員会の金原善弘さんが、パワーポイントを使って「区職労があるからこそ、安心して仕事ができる環境がつくられ、区民サービスの向上につながっている。加入届けを書いて、まわりの先輩職員に手渡してください」と呼びかけました。

民間経験から組合の大切さを知って

金原さんは、もともと民間企業に勤めていました。「6年前に勤めていた民間企業では、退職金廃止、昇級減額が行われ、ワンマン経営で、誰一人そのことに異論を唱えることができませんでした。その後、区の職員になり、区職労に入って労働組合の大切さを実感しました」とふり返ります。

「職場環境の改善はひとりではできません。区職労のとりくみは、現場から声を吸い上げ、区側と交渉し、職場環境と区民サービスの向上につながっています」と力強く語りました。

まともな生活ができる最賃を 新宿駅でアピールとサウンドデモ

4・15最賃・ディーセントワーク行動

全労連・国民春闘共闘は最低賃金大幅引き上げ実現を求める「4・15最賃・ディーセントワーク行動」を全国規模で提起。東京では新宿駅で宣伝行動を展開しました。

この日は最低賃金1500円の実現を求める市民運動「エキタス」による「上げろ最低賃金デモ」もとりくまれ、自治労連からも首都圏の組合員を中心に多数参加しました。1500人が参加したこのデモでは、サウンドカーによる音楽とDJによるコールが響き、沿道の注目と訴えへの共感を集めました。

最低賃金の全国平均は現在823円です。8時間労働で1カ月22日間勤務の場合、月給にして14万4848円。一方、全労連・愛労連が行った「最低生計費調査」にもとづくと、若年(25歳)単身世帯で月額25万3000円、時間給にすると、少なくとも1400円以上が必要という結果になっています。

日本の最賃の低さは国連からも指摘されています。最低賃金法の目的にある国民経済の健全な発展を実現する最賃引き上げは急務です。最賃署名を積み上げ、大幅引き上げを実現させましょう。

▲新宿駅前で最賃1500円への引き上げを訴える


共謀罪を今すぐ廃案に

労働組合のとりくみも捜査対象に?
▲共謀罪法案の廃案を求める4・6大集会(東京・日比谷野外音楽堂)

現在国会では、「テロ等準備罪法案」(以下、共謀罪法案)が議論されており、治安維持法の現代版ともいわれる共謀罪法案は、地方自治、市民生活、労働組合に大きな影響を与えます。今号では、自治体の活動における共謀罪の問題と、実際に想定されうるケースをあげ、また共謀罪法案のおさえておきたいポイントをまとめて、その危険性を明らかにします。

ケース1

住民・職員のための活動が組織犯罪

地方自治体は「地方自治の本旨」にもとづき、「住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする」ことが基本的役割です。

そのもとで自治労連は、住民のためのいい仕事がしたいという思いをうけ、住民に責任が果せる仕事と、それに見合う自治体公務労働者の賃金・労働条件の改善や人員体制の充実の実現を政府に対し迫っています。

こうした地域の充実を求める住民・職員・労働組合の共同したとりくみや「残業をなくして、人員補充を」「賃金を上げてほしい」といった「あたりまえの声」を上げること自体が、共謀罪では捜査の対象とされる恐れがあります。

ケース2

市民の自発的な活動が捜査対象に

自治体には、住民のあらゆる情報が集中的に集まります。その点で問題となる一例として、個人情報保護制度との関係が指摘されます。

例えば、捜査機関等からの自治体に対する照会です。「犯罪捜査という理由で捜査機関から照会を受けた場合、その請求に必ず応じなければならないのか」等です。

市民活動について、公民館の使用や公的施設を使用する際、「共謀の恐れがある」と捜査機関が判断すれば、それは否応なしに捜査対象となり、強制捜査の危険が高まることも考えられます。

また、こうした捜査機関の圧力によって、自治体が公民館や公的施設への使用不許可や「密告」という事態にもなりかねません。

ケース3

住民との共同企画が捜査対象に

自治体において、社会教育行政を担う公民館でいえば、住民と職員とが共同して作り上げた学習会などが、捜査対象になりかねません。

さらに、職員自身もそこに「関与した疑い」がかけられ、共謀罪が適用される可能性も大いにあります。

本来であれば、市民の活動を支え発展させる役割を持ち、民主主義の学校といわれる地方自治体の役割が、共謀罪法案の成立によって、住民監視の機関に変質させられる恐れがあります。

▲京都では京都弁護士会主催で共謀罪に反対する集会が開かれ、府内の単組も多く参加

地方自治を否定し、国民・住民監視の法案は廃案しかない

自治労連は法案の危険性を知らせ署名活動などをすすめ、住民の安全・安心を守る自治体の役割が発揮できるよう、運動をすすめていきます。

おさえておきたい共謀罪法案のポイント

なんと共謀罪法案の提出理由も答弁も…
ウソだらけ?「共謀」してるのは安倍政権

●2003年、04年、05年、法学者や弁護士、市民団体、労働組合の批判で3度廃案
●「テロ等準備罪」なのにテロ対策条文がない。しかも当初は「テロ」の文言すらなかった
●全国160人余の刑事法研究者が「現行法制でテロ対策は十分」など法案に反対する声明を発表
●「組織的犯罪集団」の定義は、捜査機関が「疑ったら」。つまり明確な定義なし。捜査機関まかせ。

実際には、共謀罪が適用された場合、即時「逮捕」にはなりません。しかし、最も問題になるのは、自由な表現・言論活動が共謀罪によって委縮する恐れがあること、さらに「疑わしきは捜査」によって、メールやLINEの内容など「まだ危険な行為がされていない段階」で捜査対象にされてしまい、さらに捜査に踏み切る判断は捜査当局の「さじ加減」ということにあります。

共謀罪は、個人のプライバシーの侵害および、地方自治への国家の不当介入、市民団体・労働組合といった、あらゆる団体を規制する法であるという点において、戦前に団体・個人の弾圧法として猛威を振るい、日本を戦争への道に加速させた「治安維持法」の現代版と言えます。


主張 日本国憲法・地方自治法施行70年

世界に誇る日本国憲法を掲げ平和外交のイニシアティブを

今年の5月3日、日本国憲法と地方自治法が施行されて70年の節目を迎えます。

日本国憲法とともに地方自治制度は確立されました。悲惨な戦争と国家の暴走を抑止するため、憲法第99条は公務員に平和主義と民主主義を掲げる憲法尊重擁護義務を課しました。

しかし、安倍政権は、憲法の理念を真っ向から否定し、国民生活には犠牲を押し付け、大企業とアメリカの要求にもとづいて政治をすすめています。

具体的には原発再稼働を押しすすめ、沖縄への米軍基地の押し付けを強めています。そして、日本が武器をもって再び戦争できる国への準備として、憲法違反の「戦争法」をはじめとした諸法律の整備を強行採決や委員長職権での議事進行など強引な手段で成立させています。

今国会では、戦前に多くの労働者や一般市民を無実の罪で取り締まり逮捕した「治安維持法」の現代版ともいわれる「共謀罪」を新設しようとしており、さらに日本国憲法そのものを改悪する動きも強まっています。

北朝鮮とアメリカの対立、対話こそ日本の役割

北朝鮮問題を巡っても大変緊張した状況となっています。米トランプ政権は、北朝鮮の核・ミサイル開発に対して、北朝鮮近海に駆逐艦2隻を含め空母を軍事展開するなど強硬な姿勢を突きつけています。対する北朝鮮も、「米国の全面戦争には全面戦争で、核戦争には核攻撃で対応する」と発言するなど対抗姿勢を強めています。

この事態に安倍首相と日本政府は、北朝鮮からのミサイル発射などの不安や緊張を国民にあおるばかりで、トランプ政権の行動に無批判に追従しています。本来、近隣国としても、平和憲法を持つ国としても、トランプ政権と北朝鮮との外交交渉を通じて平和的対話を迫ることこそが、日本の役割ではないでしょうか。

憲法を守りいかすとりくみをすすめよう

私たち公務公共関係労働者は、憲法を守りいかす立場で仕事をすることが求められています。全労連は、5月を憲法月間として位置づけ、平和のとりくみを進めることを呼びかけています。自治労連も全労連に結集し、全組合員参加で核兵器廃止を求める「国際署名」や平和行進など、多彩なとりくみを全国で展開しましょう。


4.14熊本地震発生から1年

すべての被災者が希望を持てる「人間の復興」めざして

熊本県事務所
▲「メモリアルふっこう集会」には100人以上が参加し、日付を示す〝灯り〟を囲み、地震発生時刻の午後9時26分に黙とうしました

2016年4月14日の熊本地震発生から1年が経過しました。ブルーシートが張られた被災家屋が目立ち、復興はいまだ途上です。震災を風化させず、被災者本位の復興をめざそうと「メモリアルふっこう集会」が開催されるなか、自治労連熊本県事務所に当時をふり返ってもらいました。

当時、通常業務に加えて避難所の運営や罹災証明の交付など震災関連業務が山積みで、「罹災証明の交付はいつになるのか」「新しい住まいを早く見つけたい」など住民から切実な問い合わせが相次ぎました。

避難所の運営に携わった組合員は、避難解除で自宅へ戻る住民から「長い間お世話になりました」と感謝され、「胸が熱くなった。被災者支援こそ自治体労働者の使命を感じる。『住民の幸福なくして自治体労働者の幸せはない』です」と当時をふり返ります。

被災者支援共同センターには全国からのべ800人を超えるボランティアが参加しました。センターの運営に携わった自治労連の仲間に、「自宅は大丈夫なの」と温かい声をかけてもらい、はりつめた気持ちがすっと軽くなりました。

集会では、自治体問題研究所の岡田知弘理事長が講演し、阪神淡路大震災・東日本大震災と同じ「災害復興に便乗した大規模開発」が熊本でもくり返されようとしていることに警鐘を鳴らし、生業・生活の再建である「人間の復興」こそが必要だと強調しました。

住宅再建の遅れ、仮設住宅での孤独死の発生、「創造的復興」の名の下での大規模開発、財政圧迫のしわ寄せで非正規職員の雇い止めが起こるなど課題は山積みです。被災者の最後の一人まで救済することを求めて運動を続ける決意です。


すすむ評(29)

一年越しで職場復帰を勝ち取る

鹿児島県事務所 たねがしまユニオン
▲2010年、「たねがしまユニオン」結成時の写真

2010年に結成された自治労連種子島地域労働組合、通称「たねがしまユニオン」です。西之表(にしのおもて)市分会では、会議のたびに学習を中心に、要求を出しあい、非正規雇用職員の要望を練り上げてきました。昨年は「全労連わくわく初級講座」を全員で学習して力にしてきました。

「非正規雇用の職員はインフルエンザになったら賃金にペナルティがある。有給休暇を時間単位でとれず、子どものためのちょっとした用事でも半日休みをとらないといけない」などの不満や、毎回の契約更新の時期が雇用不安になっていること、昨年からはじまった「子育て支援センター」で人手が足りないことが語られています。

こうした声や学習を力に、政府がすすめる「働き方改革指針案」で示された「通勤手当や出張旅費、食事手当、慶弔休暇等は非正規職員にも正規職員と同一の支給をしなければならない」という考え方を直ちに取り入れることを求める要望や、公務職場で安心して働き続けられる要望、職員の配置・増員の要望を西之表市に求めています。

こうしたなか、有期雇用の女性組合員が市に4年勤めた後、業務委託された西之表市まちづくり公社に移籍し、1年勤めた後、「業務を市に戻す」という理由のみで昨年3月に不当な雇い止めにあいました。

労働局や労働委員会に訴えて、最終的には今年3月の団体交渉で一年越しの職場復帰を勝ち取りました。怒りに加え、生活や将来への不安、ストレスを抱えながらも、自分は間違ったことをしていないと職場復帰を求めた女性組合員とそれを支えた組合の勝利です。


長時間労働がもたらす弊害は

許すな 過労死合法化

安倍労働法制の本質を暴く [第5弾]

安倍「働き改革」の柱である残業時間規制について、連合と経団連は3月13日に労使合意しました。4月27日から厚労省労政審議会で法案化への議論が始まるなか、労使合意の内容とともに、改めて長時間労働がもたらす弊害について学びます。

過労死ライン上回る水準

日本経済団体連合会(経団連)と日本労働組合総連合会(連合)の労使合意文書では、「過労死・過労自殺ゼロを実現」することをうたう一方で、「一時的な業務量の増加がやむを得ない特定の場合の上限については、①年間の時間外労働は月平均60時間(年720時間)以内とする、②休日労働を含んで、2カ月ないし6カ月平均は80時間以内とする、③休日労働を含んで、単月は100時間を基準値とする、④月45時間を超える時間外労働は年半分を超えないこととする」と、過労死ライン月80時間を超えた水準を容認する内容です。

「上限規制は、罰則付きで実効性を担保する」と労使合意していますが、月45時間、年360時間の原則については、あくまで「近づける努力が重要である」として、各企業職場による自主規制を委ねているだけです。

健康だけでなく業務にも悪影響

厚生労働省が作成した「健康づくりのための睡眠指針2014」には、「睡眠不足は仕事の能率を低下させる。睡眠不足は疲労や心身の健康リスクを上げるだけでなく、作業能率を低下させ、生産性の低下、事故やヒューマンエラーの危険性を高める可能性がある」としています。

研究では、人間が十分に覚醒して作業を行うことが可能なのは起床後12~13時間が限界で、起床後15時間以上では「酒気帯び運転と同じ程度の作業能率」まで低下すると指摘されています。

公務職場でも異常超勤が顕在

総務省は3月29日、「地方公務員の時間外勤務に関する実態調査」の結果を公表しました。2015年度の時間外勤務が月平均60時間を超えた職員数の割合は、全体で2・8%、本庁5・4%、出先機関等で1・2%。60時間超80時間以下労働の割合は、全体1・7%、本庁3・2%、出先機関等では0・8%となりました。

過労死ラインとされる80時間超労働の割合は、全体では1・1%、本庁では2・2%、出先機関等では0・4%となりました。自治労連の各地方組織・単組ですでに実施していた超勤実態調査の結果を後追いする形で総務省調査でも明らかになりました。さらに、地方組織・単組段階の調査では、「タイムカードを、いったん定時で打刻し、仕事に戻る」といった状況があるなど、表面化されない「残業」があります。能率的な業務をすすめるのであれば、人員増と8時間労働の徹底は必須です。予算人員闘争をすすめ、職場の切実な要求を吸い上げ、要求前進を勝ち取りましょう。

法を活用しよう

労働安全衛生法は、長時間労働者に医師による面接指導実施を義務付け、事業者にも面接結果に応じて、就業場所の変更、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置、衛生委員会等への報告を義務付けています。職場での労働安全衛生活動も、職場改善に大きな役割を発揮します。


現場の声

公務職場においても異常超勤が顕在化するなかで、春闘アンケートや『自治体の仲間』に寄せられた現場の声。読者の声はお休みします。

早出・居残りはお金がつくが、週のうちに何度もあると、通常の仕事にも支障をきたすこともあるため、人員確保をお願いしたい。人手不足は充分承知だが、なるべくなら8時間勤務で無理なく仕事ができたら長く続けることができるのではないかと思う。
(30代女性)

仕事量も増になり、休憩時間も十分とることができない状況。賃金も下がって、士気も下がる、休暇も思うように取れないなか、人員増をお願いしたい。
(50代女性)

書類などの残業が多いため、勤務時間内に終わらせられない。そのため休日や時間外に残業しないとならないため、残業手当をつけてもらうか、業務量の削減をしてもらいたい。
(30代女性)

サービス残業が多い。会議等では「申告して」と言うが、全く言い出せない雰囲気があり、若い職員や中間管理職以上は8時まで残っているのもざらである。日中の業務で精一杯で、17時から事務仕事をする毎日。時間が足りないです。
(40代女性)

私自身ではないですが、保育士の勤務状況があまりに過酷すぎると思います。毎日のなかに自分のために使える時間があまりにも少なすぎます。
ものすごい責任を負って頑張っているのに、充分な残業代も与えられず、すごく辛そうです。体調もよく崩しているそうで、転職も考えているとのことでした。
人員を増やすことはできないのでしょうか。まだ20代半ばで、欲しい物も行きたいところもたくさんあるはずなのに、全て我慢してまで仕事をしなければならないのでしょうか。
(20代女性)


8時間労働で人間らしい職場を

▲[中央] 東京・代々木公園で行われた中央メーデーには、公務と民間の労働組合、市民団体から約3万人が集まりました。メーデーの原点「8時間労働制」を確立させようと、こぶしをつきあげました

長時間・過重労働が蔓延し過労死や過労自死、健康被害が広がるなか、人間らしく働き生活できる職場と社会に変えていくことは労働者だけでなく、その家族と地域社会全体の課題です。メーデーでも全国の労働組合が声をあげています。

各地のメーデーから

▲[岩手] 岩手では、被災地や岩手公園での中央集会で、今村雅弘・前復興大臣への議員辞職を求める緊急の特別決議が提案され、満場の拍手で採択されました
▲[京都] 京都市職労ではの起案で、各職場の要求を鯉のぼり横断幕に書き込みました。中京ブロック保育所分会は「保育所を守ろう」とアピールしました
▲[山口] 山口は地域ごとにメーデーを開催。宇部地域メーデーには宇部市職労から23人が参加し、働く者の団結で生活と権利を守ろうと元気に声をあげました
「8時間労働」の思い変わらない メーデーの歴史

今から131年前の1886年の5月1日、当時 1日12時間から14時間労働が当たり前だったアメリカ・シカゴを中心に「8時間は仕事のために、8時間は休息のために、8時間は、自分の好きなことのために」をスローガンに、35万人の労働者が決行した「8時間労働制」を要求するストライキがメーデーの起源と言われています。世界各地に広がり、この日を祝日とする国もあります。日本では、1920年5月2日に東京・上野公園で第1回メーデーが開かれました。しかし、1936年から終戦の45年まで、政府は治安維持を理由にメーデーを禁止します。終戦後、多くの職場で労働組合結成に立ち上がった仲間が、第17回メーデーを再開し、今年第88回のメーデーへとつながります。


定数増を実現

仲間が増えて笑顔広がる

滋賀県職
▲滋賀県職守山支部のランチタイム交流会。大きく拡大した給与明細書を示しながら労働時間と基本給、時間外手当等の見方を解説

労働基準監督署の是正勧告から定数増実現へ

滋賀県職は、県立成人病センター労働者の「残業しても時間外申請が認められない」「年休も取れない」の声をうけ、再三にわたり病院当局との団体交渉を重ねてきました。「事実が確認できない」と病院当局は職場実態を認めない回答に終始したため、滋賀県職は職場での丁寧な議論のうえ、労働基準監督署への労基法違反申告に踏み切りました。

労働基準監督署の立入調査が行われ、その結果、昨年10月に時間外勤務手当不払いや休憩時間を取らせていないなど労働基準法違反について是正勧告が出されました。

滋賀県職は是正勧告の事実と職場実態を記者会見で発表し、命を守る職場での人員不足について広く問題提起をしました。記者会見後、成人病センターだけでなく土木事務所でも36協定違反で是正勧告を受けていたことも明らかにし、大きな話題となりました。

そして、減らされ続けた職員定数と長時間労働の実態へと議論が深まり、県知事や県議会、県人事委員会を動かし、今年、知事部局として37年ぶりの10人の定数増を勝ち取りました。

組合のとりくみに新採職員からも信頼高まる

滋賀県職守山支部は、ランチタイム交流会を4月24、25日の2日間で開催し、新採職員を含めて94人が参加しました。

交流会では給料表の見方や休暇制度を解説し、今回の不払い残業問題にも言及すると、新採職員だけでなく中堅看護師からも「勉強になった」「もっと詳しく知りたい」と声があがり、労働組合への信頼が高まりました。

滋賀県職全体でも、新採職員から労働基準監督署の是正勧告について「テレビで見た」「組合は必要だと思う」と反応があり、労働組合への加入に結びついています。

是正勧告で職場が変わった これからも職場改善へ

「仕事が終わらないのは自己責任、残業申請なんてするもんじゃない」と言われていました。その職場が、「ちゃんと申請してね」と、声がかかるようになった、と是正勧告後の職場の変化を、滋賀県職守山支部の宮本真里奈さんは語ります。

しかし、24時間対応の病院では、長時間労働の規制には、交代勤務体制、夜勤労働の弊害、勤務間インターバルなど課題が多くあります。

勤続40年の今井知子さんは「働き始めた当時は夜勤2人体制でした。それから労働組合で声をあげ、全国的な運動となり、3人体制を勝ち取った」と、職場での長い組合活動経験をふり返り、「勤務間インターバルを含めた8時間労働が医療の現場でも実現できれば」と、宮本さんに思いを託します。

宮本さんは、「長時間労働により、集中力の低下、判断が鈍くなり、仕事のミスにもつながるかもしれない。患者さんの命を守るためにも職場を変えていきたい」と仕事と組合活動に決意を新たにします。


今月の連載・シリーズ

いい旅ニッポン見聞録
第16録
鹿児島県熊毛郡屋久島町
水がつくりだす山海のめぐみと温泉

自然と人と神の島

かがやきDAYS
〔35〕
山口・防府市職労 大庭(おおば)健太郎(けんたろう)さん
ガーナと日本の架け橋に
まちコレ
Collection35
彩誉(あやほまれ)
きしわだ発の新しいブランド人参

大阪府岸和田市

うレシピ
第66品
静岡・浜松市職 宮下 早紀子さん
もやしとチンゲン菜のおかかいため

情熱燃やし(モヤシ)、活を(カツオ)入れる!

関連記事

関連記事