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機関紙『自治体の仲間』2014年 8月号 Vol.489 「給与制度の総合的見直し」は中止を 賃上げで景気を回復しよう

賃上げで景気を回復しよう

「給与制度の総合的見直し」は中止を

2014夏季闘争 7・25中央行動
201408-01-01
▲日比谷野外音楽堂に2000人が結集

 全労連公務部会・公務労組連絡会は7月25日、人事院による「給与制度の総合的見直し」反対、全国一律最低賃金1000円以上の実現などを求め、中央行動にとりくみました。気温が35度を超える猛暑のなか、公務・民間あわせて2000人の怒りが結集しました。自治労連は全国から280人を超える仲間が参加しました。

アメリカの代表が生活できる最賃訴え

 日比谷野外音楽堂で行われた「諸要求実現7・25中央総決起集会」の主催者あいさつで全労連・大黒作治議長は「全国一律最低賃金1000円以上、まともに暮らせる賃金制度の実現を迫り、安倍政権の暴走を阻止するたたかいに全力をあげよう」と訴えました。

 連帯あいさつは、アメリカのファーストフード労働者の賃上げ・組織化運動を進めているニコラス・ルディコフ氏。日本の最低賃金のたたかいに連帯し「ガンバロウ」と訴えると歓声とともに大きな拍手が沸き起こりました。

最賃引き上げと公務賃金改善を

 集会後、人事院・厚生労働省前で要求行動が行われました。静岡自治労連・中東遠総合医療センター非常勤職員組合の河原崎由利子副委員長は「国に最低賃金引き上げを求める陳情をすべての首長に提出してきた。東部地区では隣の神奈川県と最低賃金が119円の差があるために若年労働力を中心に人口流出の要因となっている。職場の要求実現とすべての労働者の賃上げで地域の景気回復、地方自治を守るとりくみを進めていく」と訴えました。

 また、人事院前要求行動(パートⅡ)では、長野県自治労連の和田吉正書記次長が「今回の〝見直し〟は大都市と地方の格差を固定させるものであり、認めるわけにはいかない」と訴え、「人事院は我々の声に耳を傾け、見直しを撤回して欲しい。4000筆余の署名を長野から持って来た」と述べました。

 この間全国でとりくんだ「公務員賃金改善署名」約17万人分の署名提出・要請行動に参加者を送り出した後、人事院に対し、「給与制度の総合的見直しは中止せよ」「賃上げで景気を回復しよう」と、シュプレヒコールをぶつけました。

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▲人事院前で「見直し」中止を訴える長野県自治労連・和田書記次長
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▲銀座をデモ行進
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▲厚労省・人事院前でシュプレヒコール

 隅田誠さんと城野万国博(じょうのまくひろ)さんは「鳥取県は最低賃金が一番低く、非正規パートの組合員が多いので最賃大幅引き上げが切実な要求です。大幅引き上げで地域経済を活性化させたい」と中央行動に鳥取県本部を代表して参加しました。

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▲鳥取県厚生事業団職員労働組合から参加。隅田さん(左)城野さん(右)


公務員給与削減を許すな

最低賃金引き上げを

愛媛県本部
201408-02-01

 愛媛県本部では県公務員共闘など地域の仲間とともに6月27日に松山市駅前で「公務員給与見直し反対、最低賃金大幅改善」などをテーマに街頭宣伝・署名とデモ行進を実施しました。

 県本部・堀川孝行書記次長や県国公、愛媛労連部、県社保協などがマイクで市民に訴えました。通りがかった青年が話しかけてきて対話になったり、年配が「家族がアルバイトで給与は生活保護水準よりも低い。少しでも時給が上がれば」と署名に協力してくれました。


許すな!大幅賃下げ

学習と行動ではね返そう

名古屋市学校事務職員労組(学事労)
201408-03-01
▲愛知県本部作成のパワーポイントを使って学習

 学事労は、愛知県本部の伊藤英一書記次長を講師に「給与制度の総合的見直し」の学習会を7月1日に開催し、25人が参加しました。

 伊藤書記次長は「『地域手当ダウン』『人事評価制度の導入と賃金リンク』などで大幅な賃下げになる。上司の顔色をうかがう職場、公務賃下げによる地域経済の崩壊。何より賃金決定の生計費原則を無視することは許されない」と訴え、最後に学事労の鈴木かおる執行委員長が「この問題を私たち、そして若者からお年寄りまで地域全体の問題としてとりくもう」と呼びかけました。


集団的自衛権行使容認「閣議決定」の暴挙

「戦争する国づくり」許さない

緊急行動実施
201408-04-01
▲7月1日、官邸前集会の様子

 安倍政権が「集団的自衛権」行使容認の閣議決定を行なった7月1日は早朝から抗議行動がとりくまれ、昼休み官邸前抗議行動には全体で3000人がプラカードや横断幕などを手に結集し、自治労連の仲間も首都圏を中心に参加しました。

 自治労連・中川悟書記次長が「自治労連は日本の若者を二度と戦場に送り込まないために先頭に立って運動をすすめる」と決意表明しました。同日夕方には新宿駅西口で緊急宣伝行動にとりくみ、1人で30~40筆の署名を集めるなど、若い女性が署名をする姿が多く見られました。

 また、集団的自衛権の国会集中審議が行われた7月14日には閣議決定撤回を求めて、国会正門前で抗議行動に約1200人が参加。各団体からの1分間リレートークで自治労連・福島功副委員長は「関連法案の改定がない限り、実質的には集団的自衛権の行使はできない。沖縄県知事選挙やいっせい地方選挙などで地域・職場から徹底してたたかっていこう」と訴えました。

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▲7月14日の国会前行動で集団的自衛権行使容認阻止を訴える福島功副委員長


報道されない「福島の今」自分の目と耳で知る

この夏もこれからも原発いらない

自治労連女性部福島応援ツアー
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▲がれきの山の向こうに福島第1原発の煙突が

 自治労連女性部は7月19~21日、福島の浜通り地域を訪れ、原発事故後の状況と運動を学ぶバスツアーを行いました。

 短い日程の間に、原発20キロ圏内の南相馬市小高区、浪江町などを視察。また「福島復興共同センター子どもチーム」、「生業(なりわい)を返せ 地域を返せ」訴訟の原告団長、相馬市の仮設住宅に住む被災者の話を聞きました。

 訪問箇所の1つ、浪江市の「希望の牧場」は、牛の殺処分を拒否し原発事故の証人として今後の研究にも活かすため、踏みとどまって運営している所です。何十頭もの牛が草原に放たれ一見平和な光景ですが、線量計の針は大きく振れて3マイクロシーベルト以上を記録し(一般人の平常時被曝限度量は、1時間あたりに換算すると0・114マイクロシーベルトと言われる)、背筋に冷たいものが走りました。

 参加者からは、「個人ではなかなか行けないところに行き、聞けない話を聞かせてもらえた」「福島の今を多くの人に知らせたい」「自分なりにできることを考えていきたい」という感想が多数聞かれ、原発ゼロへの決意を固め合うツアーとなりました。

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▲相馬市で仮設住宅に住む被災者の話を聞く


5500人が「再稼働反対」

6・28 NO NUKES DAY首都大行進
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▲「さようなら原発集会」(6月28日 東京・明治公園)

 「さようなら原発 首都大行進」が6月28日に行われ、全国から5500人が東京・明治公園に集結し、自治労連の仲間も多数参加しました。

 原発をなくす全国連絡会の伊東達也さんは「福島は震災から3年が経過しても事故収束にはほど遠いのが現実。苦しみを怒りに、怒りを行動に変えて希望を見い出していこう」と訴えました。参加者から「未来を担う子どもたちのために再稼働反対、原発廃炉の声を大きく広げていかなければいけない」と感想が寄せられました。


核兵器廃絶を

平和行進が全国を行く

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▲常総市・高杉徹市長(中央)

茨城 茨城県内全市町村を結んで6月27日から7月9日の13日間、行進。7月4日の常総市では、高杉徹市長が歓迎集会であいさつした後、行進団の求めに応じ、行進に参加しました。

山口 炎天下、7月24日に宇部市内を通過しました。出発式は55人が集まりましたが、行進には保育園の子どもたち35人が加わり、総勢90人が元気よくにぎやかに平和を訴えながら歩きました。

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▲新天町商店街を行進


住民の基本的人権守るため委託撤回をめざす

コスト増・偽装請負など問題噴出

東京・足立区職労のたたかい
201408-08-01
▲後列左から福田特別執行委員、二見書記次長前列左から大滝区労連議長、鈴木執行委員長

 東京都足立区では、コスト削減とサービス向上(待ち時間短縮)を謳って今年1月から戸籍窓口業務の民間委託を強行しました。編集部では足立区職労のたたかいを取材しました。

緊急ルポ 足立区が戸籍窓口業務を民間委託

 足立区での、戸籍や課税業務など委託困難と言われる職場を民間委託する動きは2006年の市場化テストから強まり、これを突破口に自治体業務全般の委託がねらわれています。

 足立区職労は、昨年9月の区当局の民間委託通告に対し、要求書を提出し、当局交渉や地域でのとりくみを進めています。

 地域では、昨年11月に区労連などが呼びかけて「足立区政の外部委託を考える会」(以下、考える会)を発足させ、学習会、政策づくり、宣伝など行いました。今年5月21日には区に要望書を提出、6月17日に開催した区民集会に480人以上の区民が参加。7月10日には外部委託中止反対の署名3840人分を区に提出するなど運動を展開しています。とりくみの中心を担ってきた足立区労連・大滝慶司議長は「住民の基本的人権を守るためにも戸籍窓口業務の委託は仕組みとして問題があることをもっと知らせたい」と語ります。

 今回の委託では、「5分の手続きが3時間かかった」という住民の声や経費節減のはずがかえってコスト増に、さらに偽装請負などさまざまな問題が噴出しています。

 足立区職労・福田一夫特別執行委員は区政の外部化に関する区職労見解を示しながら「窓口委託は再考すべき」という職員の声を紹介してくれました。

 東京法務局は、2月に現地調査を行い、委託業者が公権力行使を行っていると区に是正指導を行いました。さらに東京労働局も4月に現地調査を行い、7月15日「偽装請負」として是正指導を行いました。このようななかで、近藤弥生区長は6月定例記者会見で「区民を混乱させた」「委託になればすべてうまくいくイメージを与えた」と謝罪しましたが、区当局は、委託推進の姿勢を変えていません。

 二見清一書記次長は「住民は公務員だから安心して窓口に相談に来ます。職員も住民との対話を通して区政を考え政策化することができます」と語り、鈴木俊治執行委員長は、公務公共サービスの根幹を脅かす窓口業務委託撤回に向けて「考える会」とともに「外部委託中止署名」の推進に向けた街頭宣伝や「住民ビラなどで幅広く区民に知らせていきたい」と今後の決意を述べています。

足立区に対する東京労働局の是正指導内容(要約)

【違反事項】
 足立区と富士ゼロックスの間で行うエスカレーションについて、責任者間で行う調整行為と評価することはできず、事実上の指揮命令となっていることが偽装請負に当たる。
【措置事項】
 現在行っているすべての業務委託契約について、同様の違反等がないか点検を行い、労働者派遣法に違反する事項がある場合は、労働者の雇用の安定を図るための措置を講じることを前提に、速やかに是正し、書面で報告すること。

201408-08-02
▲区民集会には480人以上が参加


「憲法をいかし住民生活をまもる」を実践し共同広げよう

主張 第36回定期大会成功に向けて

 結成から25年、自治労連は一貫して憲法と地方自治をいかし、職場要求と住民要求を結合して運動してきました。この間のたたかいの積み重ねで、厳しい情勢のなかでも局面を打開してきました。

 第36回定期大会は、安倍暴走政治への怒りと反撃の一点共闘に、多くの国民が立ち上がり、来春のいっせい地方選挙や2年後の選挙を視野に、国・地方の政治の在り方が厳しく問われるという情勢のもとで開催されます。

 今大会の任務は、憲法を壊す策動が強められるなか、来春のいっせい地方選挙を当面の焦点に、「憲法をいかし住民生活を守る」自治労連の「特別な任務」を飛躍させる構えを確認し、それを進める運動方針を確立することです。

 そのため、第1にすべての自治体への憲法キャラバンの実施とともに、「憲法がいきる、こんな地域と日本をつくりたい」の政策提言運動を地方・単組で具体化する方針を確立します。

 第2に集団的自衛権行使容認の閣議決定、社会保障の切り捨て、原発再稼働と輸出、TPP交渉参加、辺野古新基地建設と全国へのオスプレイ訓練・配備拡大、道州制導入など、安倍暴走政治と正面から対決し、各課題で「一点共闘」を広げ、「暴走政治ストップ」の国民的共同を広げる方針を確立します。特にいっせい地方選挙や2年後の国政選挙を見据え、地方での意思統一を重視します。

 第3に、安倍「雇用改革」阻止の運動の先頭に立つとともに、「給与制度の総合的見直し」に対し、職場内外での世論と共同を広げた運動の教訓をいかし、「すべての労働者の賃上げと雇用の安定で景気回復」を掲げ、自治体・公務公共関係労働者の働きがいある職場をめざし、公務員総人件費削減を許さず、労働基本権回復を求める運動を強化します。

 第4に自治労連運動の発展を展望し、「30万自治労連、10万非正規・公共」めざす「第5次組織財政強化中期計画」の2年目の実践と同時に、「おきプロNEXT」の成功を確信に、引き続き次世代育成を促進します。9月の地方自治研究全国集会を中央・地方が力を合わせて成功をめざします。

 職場を基礎に「憲法をいかし住民生活をまもる」ため自治体・公務公共関係労働者の役割を発揮し、地域に出て住民との共同を大きく広げましょう。すべての自治体・公務公共関係労働者を視野に職場から全国で心一つに大いに力を発揮しましょう。


自治労連 第21回 全国囲碁将棋大会

盤上の熱戦・接戦・激戦

7月11~12日 神奈川県湯河原町
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▲囲碁 東海北信ブロックチーム(愛知)
大混戦を勝ち抜き優勝した東海北信ブロックチーム。左から須崎真弥さん、鳥居信一さん、小林哲広さん
201408-10-02
▲将棋 中国ブロックチーム(岡山)
持ち前の実力を発揮し優勝した中国ブロックチーム。左から柏野静雄さん、小松原道広さん、吉本晃さん

 自治労連・自治労連共済25周年「自治労連第21回全国囲碁将棋大会」は、予選を勝ち抜いた囲碁8チーム、将棋10チームが、3人1チームの団体戦で4回戦をたたかいました。

4チームが3勝1敗で並ぶ混戦 囲碁

 初日の3回戦を終えた段階で、昨年の優勝の中国ブロックチーム(岡山市職労)が全勝。2勝1敗で東海北信ブロックチーム(愛知・豊川市職労、名古屋市職労)、近畿ブロックチーム(滋賀県職)、関東甲越ブロックAチーム(群馬自治体一般労組)の3チームが追う展開となりました。

 最終戦は近畿ブロックチームが2年連続優勝をめざす中国ブロックチームに2―1で勝利し、東海北信ブロックチームが北海道・東北ブロックAチームに3―0で勝利するなど、前日の上位4チームが3勝1敗で並ぶ大混戦となりました。総勝敗数の結果、東海北信ブロックチームが第14回大会(2007年)以来7年ぶり3回目の優勝を果たしました。準優勝は総勝数で同点でしたが主将勝数で近畿ブロックチームを上回った中国ブロックチーム(岡山市職労)、第3位は近畿ブロックチーム(滋賀県職)でした。

実力ぶつかり合う勝負の行方 将棋

 将棋は、3回戦まで中国ブロックチーム(岡山・倉敷市職労)と関東甲越ブロックAチームが全勝し実力を見せました。2勝1敗で北海道・東北ブロックAチーム、近畿ブロックAチームが追う展開となりました。

 最終戦で注目の中国ブロックチームと関東甲越ブロックAチームが激突。どちらが優勝してもおかしくない実力伯仲の試合でした。結果は中国ブロックチームが関東甲越ブロックAチームに2勝1敗で勝利し、2年ぶり12回目の優勝を果たしました。関東甲越ブロックAチームも三将戦で勝利し、中国ブロックチームの完全優勝を阻みました。準優勝は大会史上初めて勝数・総勝数・主将等勝数すべて同点で並んだことから抽選を行い、近畿ブロックチームが準優勝、関東甲越ブロックAチームが第3位となりました。

 大会ではプロ棋士(囲碁・孔令文(こうれいぶん)七段、宋麗(そうれい)五段、将棋・上野裕和五段、中村真梨花女流二段)に協力いただき、各チーム代表者との多面打ちや景品付き詰碁・詰将棋を楽しみました。

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▲囲碁・宋麗棋士(右)が2面打ちで指導対局
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▲詰将棋を解説する上野裕和棋士(右)と中村真梨花棋士

大会の結果

囲碁の部
優 勝 東海北信ブロックチーム(愛知・豊川市職労、名古屋市職労)
準優勝 中国ブロックチーム(岡山市職労)
3 位 近畿ブロックチーム(滋賀県職)
4 位 関東甲越ブロックAチーム(群馬自治体一般労組)
5 位 関東甲越ブロックBチーム(東京・都庁職都税支部、世田谷区職労、品川区職労)
6 位 九州ブロックチーム(福岡市職労)
7 位 北海道・東北ブロックAチーム(岩手・一関市職労)
8 位 北海道・東北ブロックBチーム(岩手・盛岡市職労)
※四国ブロックと、近畿ブロック1チームは欠場

将棋の部
優 勝 中国ブロックチーム(岡山・倉敷市職労)
準優勝 近畿ブロックAチーム(大阪・東大阪市職労、茨木市職労、大阪市労組)
3 位 関東甲越ブロックAチーム(埼玉・埼玉県職、深谷市職労、飯能市職)
4 位 北海道・東北ブロックAチーム(岩手・盛岡市職労)
5 位 東海北信ブロックチーム(愛知・名古屋水道労組、名古屋市職労)
6 位 北海道・東北ブロックBチーム(岩手・一関市消防本部)
7 位 四国ブロックチーム(愛媛・宇和島市職、今治市職)
8 位 近畿ブロックBチーム(京都府職労)
9 位 九州ブロックチーム(福岡市職労)
10 位 関東甲越ブロックBチーム(神奈川・鎌倉市職労)

個人4連勝
【囲碁】小林哲広(名古屋市職労)、藤居忠治(滋賀県職)、片山孝(岡山市職労)
【将棋】吉田昌弘(埼玉・飯能市職)、佐々木啓二(大阪市労組)、小松原道広(岡山・倉敷市職労)、吉本晃(岡山・倉敷市職労)


人事評価を実施した公務職場の実態

あふれる不満、疑問の声

人事評価制度シリ―ズ(2)

 人事評価制度シリーズ2回目は、すでに能力・実績主義による人事評価制度が導入されている自治体職場の実態や職員の声、働き方や住民サービスへの影響などについて事例を紹介し、問題点を明らかにします。

上司の主観に頼らざるを得ない不透明であいまいな評価

 行政の仕事は多様です。客観的な評価基準を作るといっても、実際の評価は、評価者である上司の主観に頼る以外にありません。この4、5月に実施した人事評価制度に係る聞き取り調査でも、人事評価制度がすでに導入された自治体職場で、成績に無理に上下を付けることについて、評価される職員からも、評価する管理職からもさまざまな不満や疑問の声があふれています。

住民サービスにも影響

 この夏から勤勉手当のリンクが始まった大阪府では、絶対評価(評価で付けられた点数区分)が同じでも、実際の支給率に格差が付けられ、圧倒的な職員がアンケートに、人事評価制度は「資質・能力・執務意欲の向上につながらない」と答えており、モチベーションの低下に拍車をかけています。

 また、政府による地方交付税の大幅削減等から自治体財政が逼迫しているもとで、一部の自治体では生活保護の受給抑制や地方税の徴収強化が数値目標とされ、弊害も報告されています。

評価される職員の声
・部署や人による評価のバラツキが大きい、評価が納得できるものではない。
・職員の気持ちのハリを失わせるようなもの。何が基準なのかわからない。
評価する管理職の声
・わざわざ人に点をつけなくても、管理職は部下との信頼関係を築き、話し合いながら人材育成をすればよい。人事評価は信頼関係を壊しかねない。

数値目標を課して生活保護の受給抑制
 2005年から2007年にかけて、北九州市では、生活保護受給者が連続して3人餓死や自殺するという痛ましい事件が起きました。
 この事件を契機に行った生活保護行政検証委員会最終報告書によれば、同市では「水際作戦」として、福祉事務所職員に対して、「生活保護の申請書の交付は月5枚までとし、廃止ノルマは年間5件といった数値目標を課していた」としています。市当局は数値目標の存在を否定しましたが、検証委員会としては、「数値目標の存在が否定し切れない」としています。


住民のためにいい仕事をしたい

各地ですすむ自治研集会
201408-13-01
▲全体会。180人近い参加者の中には初参加の若手も目立ちました

 第12回地方自治研究全国集会in滋賀の開催まで1カ月余となりました。集会成功に向けて各地で自治研集会が開催されています。今回は、埼玉県地方自治研究集会と大阪衛都連・職種別交流集会の様子を紹介します。

第34回地方自治研究集会in埼玉

熱気あふれる若手の報告

 埼玉県本部では第34回自治研集会を6月29日に開催し、27単組から160人、市民も含め全体で179人が参加しました。

 県本部では「新しい参加者層」の「開拓」に重点を置いて準備を進める意思統一を図り、若手の初参加でこれまでとは少し異なる参加者の顔ぶれが見られました。

 基調報告で中村栄士・県本部自治研事務局長は、「憲法・地方自治・社会保障が揺れ動くなかで自治体労働者の役割を再確認し、自信と誇りを取り戻す場にしよう」と呼びかけました。

 日野秀逸・東北大学名誉教授による基調講演では、財界の全面的後押しで国民無視の「閣議決定」を連発する安倍内閣の暴走を告発。「国民全体への奉仕者を、具体的・現実的に保障するのが専門性。自治体職員でなければできないと住民に認められるような仕事をしてほしい」と自治体労働者への期待が語られました。

 分科会は「保育・子育て」「地域保健」「生存権保障」「住民とつくるまちづくり」「社会教育」「公契約適正化」の6つを開催。それぞれに若手の新たなレポート発表者も加わる中、活発な議論が交わされました。

 「住民とつくるまちづくり~自治体労働者の挑戦」と題する分科会には34人が参加。「地区まちづくり」「地域防災計画」「エコタウン構想」「学校給食まつり」「清掃職員による市民環境学習会」「エコツーリズム」のそれぞれの異なる分野で、若手職員がさまざまな壁にぶつかりながらも、住民とともにまちづくりに奮闘する報告が行われました。

 その後にパネルディスカッション。仕事の率直な悩みやこれからの展望が生き生きと語られ、参加者から「それぞれの話が深く聴けてよかった」「頑張っている職員が多くいることがわかって、自分も自治体職員として頑張っていきたい」と感想が聞かれました。

 埼玉県本部ではこの集会をステップに、9月の自治研全国集会in滋賀では全国のとりくみから学び、埼玉のとりくみを発信するために集まろうと呼びかけています。

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▲基調講演をする日野秀逸東北大学名誉教授

自治体は困った人を助けてほしい
大阪衛都連第18回 職場・職種別交流集会

改めて仕事を考える良い機会に

 大阪自治労連・衛都連は6月20日から21日、第18回職場・職種別交流集会を大阪市内で開催し、183人が参加しました。

 元日弁連会長の宇都宮健児さんが、「安倍政権の暴走と自治体・自治体職員の課題と役割」と題して記念講演を行いました。

 記念講演では、「貧困問題を解決するには、全国一律最低賃金制度の確立など、普通に働けば人間らしい生活ができる労働政策の確立。失業・病気で働けないときも人間らしい生活ができる社会保障の充実。富裕層に対する課税の強化と富の再分配の実現が必要である」と強調しました。

 特別講演として京都府職労書記次長の木守保之さんからは、京都地方税機構の現状、問題点について、見切り発車による事務の矛盾や労働条件・執務環境で差が生じていることを報告。納期限が過ぎたものをすべて「機構」送りにすることで、市町村での徴収のノウハウの蓄積がなくなっている現状を指摘されました。

 21日には、大阪社保協事務局長の寺内順子さんが報告。「役所が忙しくなっているのは困りごとを持った人が多くなったことの裏返し」「困った人がいたら自治体は助けてほしい。自治体労働者にとっても、市民にとってもええ仕事をやっていきましょう」と結びました。

 分科会は、①生活保護職場、②保健所・保健センター、③高齢者介護、④あらためて障害者福祉を学び直す、⑤国民健康保険職場、⑥豊かな教育行政をめざす交流会、⑦税務職場の本来の役割、⑧防災から考える公務技術者の役割、⑨財政分科会、⑩市民課職場、⑪大阪から子どもの政策を考える、の11分科会にわかれて交流・討論を行いました。

 参加者からは「ベテランの方の意見や専門の方の意見を聞けたのでとても参考になりました。今後の仕事に活かしたいです」「まとめの集会で、各分科会の報告を聞き、しっかり考察されていることと、自分が公務員である以上、関係のある話ばかりで、改めて自分の職業を考え直す良い機会になりました」などの感想が寄せられています。

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▲全体会(記念講演)の様子。183人が参加しました
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▲元日弁連会長の宇都宮健児さんによる記念講演


今月の連載・シリーズ

いいとこよりみち発見伝
第5景
大阪~札幌
惜しまれる引退――トワイライトエクスプレス

憧れの寝台列車で時間を忘れ移動を楽しむ旅

かがやきDAYS
〔5〕
神奈川・横浜市従 樋口 一郎さん
日本百名山を新たな視点で検証
まちコレ
Collection5
城崎「麦わら細工」
城崎に根づいた麦わら細工素晴らしい芸術品に

兵庫県豊岡市

うレシピ
第36品
岩手・奥州市職労 三宅 悦子さん
鮭のおからマヨネーズ焼き

おからだからカラダにいいよ

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