2018年11月3日

書記長 中川 悟

 自治労連は、この国のすべての子どもたちの権利とすべての子育てしながら働く労働者の勤労権が保障される保育政策の拡充を求める立場で運動をすすめている。いうまでもなく、子どもはどの地域で暮らしていようと等しく質の高い保育を受ける権利を有している。そして、憲法25条に基づく児童福祉法は、その責任を国と自治体が負うことを明確に規定している。この点において、幼児教育・保育の無償化は国が進めるべき施策である。それは保育先進国ですでに実現されていることが物語っている。

 

 安倍首相は、憲法「改正」に必要な国会勢力の維持及び消費税増税に対する国民の不満を削ぐための手立てとして、昨秋の総選挙の自民党公約で唐突に「幼児教育・保育の無償化」(以降、「無償化」)を掲げた。

 2019年10月から消費税増税と時期を合わせて実施するとした概要では、3~5歳児で全面的に実施、幼稚園、認可保育所、認定こども園の「無償化」は、親の所得を問わず3~5歳児全員を対象、認可外保育施設等については所得制限付きで3万7千円を上限、0~2歳児は住民税が非課税の年収約250万円未満の低所得世帯に限定して無償化、などとなっている。

 

 問題は山積している。①東京新聞が行った負担軽減額の試算では高所得世帯の恩恵は低所得の5倍となる。②給食費は別途徴収の可能性が高く、上乗せ徴収、実費徴収も従前どおり徴収できるため、応能負担原則という児童福祉の観点からも利用者負担の大原則が崩壊する。③費用負担については、民間施設の負担割合を、国1/2、都道府県1/4、区市町村1/4とする一方で、公立施設の負担割合は全額区市町村負担とする考え方が示されている。④待機児童が増大する可能性が高く、小規模保育事業、企業主導型保育事業など認可保育所の基準に満たない保育施設がさらに増加する。⑤現在の認定制度には、短時間と保育標準時間があるが、無償化となれば短時間を選択する理由がなくなり標準時間への移行が進む。それにより長時間保育を受ける子どもが増え、認定制度が崩壊する。

 

 公立保育所の費用を自治体が全額負担することになれば、東京・世田谷区では8億円、中核市の平均でも2億5千万円の負担増になると試算されており、公立保育所の存続が大きく脅かされることとなる。国や自治体の責任を直接果たし、地域の保育水準や保育士の労働条件の基準となる公立保育所が「無償化」によって減少するなど、待機児童解消が求められるもと、まさに本末転倒である。

 

 「無償化」は否定するものではない。しかし、保育時間がここまで長く、施設間格差や自治体間格差がここまで大きい国は他にない。「無償化」を進めるのであれば、同時に最低基準の引き上げや保育士の増員、処遇の改善などを行い、待機児童の解消と格差の解消を優先すべきである。

 また、財源については消費税とは切り離すべきである。自治労連は、「無償化」の問題点を指摘し、広範な地域住民と連携を強め、自治体や地方議会、自治体首長などにも共同を働きかけるとともに、憲法に定められた国民の権利の保障(社会保障制度の拡充)としての、子どもたちの権利が保障される「無償化」の実現に向け、運動をすすめるものである。

以上