2018年12月25日

書記長 中川 悟

 地方自治体が行うべき住民サービス業務の大部分を民間企業に委託し、臨時・非常勤職員を解雇・雇い止めして、受託する民間企業に身分を移管させる「包括委託」の動きが各地であらわれている。「包括委託」は、地方自治体が「住民の福祉の増進を図る」ために実施している業務を民間大企業の営利の対象に開放する安倍政権の「公的サービスの産業化」(「骨太方針」2015年)の方針に基づいたものであり、地方自治体の公的責任を放棄するものである。自治労連は、「包括委託」に断固反対し、地方自治体が責任を持って実施すべき業務は、直営で行うことを強く求めるものである。

 「包括委託」は会計年度任用職員制度への移行に乗じて行われているのが特徴である。政府・総務省は、会計年度任用職員制度を導入する前提として、「民間にできることは民間に委託せよ」と、徹底したアウトソーシングを行うことを自治体に求めている。参入をねらう大手民間企業は、各地で「包括委託」を自治体に売り込んでいる。このような国や大企業の動きを背景に、会計年度任用職員制度移行に伴う財政負担増や人事管理の煩雑を避けることを口実に、同制度の移行に乗じて「包括委託」を行おうとする自治体があらわれている。

 

 「包括委託」は住民サービスと自治体職員の働き方、労働条件に次の重大な問題をもたらす。

 第一は、自治体の業務に必要な専門性・継続性が失われ、住民サービスが深刻なまでに低下することである。地方自治体の業務は、憲法に基づき「住民の福祉の増進を図る」(地方自治法1条の2)ために、専門性を持った自治体職員が継続して行うことが必要である。「包括委託」がされれば、地方自治体が行うべき業務の大半を、民間企業が交替で行うことになる。委託契約の期限が到来するたびに受託する企業や社員が入れ替わる。自治体の業務は膨大な住民のプライバシー情報を取り扱っており、「包括委託」をすることで情報漏えいのリスクが高まる。

 第二に、「包括委託」は、一つの自治体で行われれば、隣接する複数の自治体に拡張されるおそれがあることである。「包括委託」は、一つの民間企業が複数の自治体の業務をまとめて受託することも可能である。受託する民間企業にとっても、請け負う業務の規模が大きい方ほどスケールメリットがある。すでに窓口業務では、一つの地方独立行政法人に複数の市町村の窓口業務を一括して行わせることができる法律(「改正」地方独立行政法人法)が4月より施行されている。総務省が7月に発表した「自治体戦略2040構想」では、今後の地方自治体の業務について、複数の自治体業務を「圏域」単位で集約して実施することを打ち出している。

 第三に、臨時・非常勤職員の大量の雇止めが発生することである。雇用の継続を希望する職員全員が「包括委託」を受託する企業に雇用される保障はない。仮に雇用されても、自治体が委託料を削減し、受託する企業が営利優先の経営を行えば、現在より劣悪な賃金・労働条件にされる。委託契約の期限が到来するたびに入札やプロポーザルなどでコスト削減競争が行われれば、賃金・労働条件の一層の低下を招く。受託する企業が入れ替わるたびに、大量の解雇・雇い止めが繰り返し発生する。

 また、「包括委託」は自治体の広範囲な業務を請け負うものであることから、地場の中小企業では受託ができない。東京など大都市に本社がある大手企業が参入し、「包括委託」によって得た利益は、地域には還元されず、外部の大都市部に吸収される。

 第四に、偽装請負をはじめとした違法行為が発生することである。自治体の業務を民間委託して、住民サービスの水準を確保しようとすれば、自治体職員から委託社員へ直接に指示を行うことが避けられないが、直接指示を行えば偽装請負となる。偽装請負を避けようとすれば、自治体職員と委託社員それぞれの管理職を通じてしか直接のやりとりができない。窓口では住民との間でトラブルが頻繁に発生するが、業務の処理について自治体職員に緊急に判断を仰ぐことが必要な場面に直面しても、現場で直接のやりとりはできない。また、国は窓口業務について、「公権力の行使に関わる業務が含まれていることから、行政の判断が必要な業務は、民間に行なわせてはならず、自治体職員が行うべき」と通知しているが、短時間のうちに様々な判断を迅速に行うことが求められる窓口の現場では、これが遵守されなくなるおそれがある。

 第五に、受託企業が契約途中で撤退し、住民サービスに重大な穴が空く危険がある。自治体がコストを削減して民間に委託することにより、各地で受託した企業が「採算が取れない」「必要な人員が確保できない」ことなどを理由に契約の途中で撤退をしている。「包括委託」により、自治体職員の専門性やノウハウが失われ、受託する民間企業に業務を頼らざるをえなくなる事態まで進行すれば、自治体と民間企業の力関係が逆転する。自治体が提示する委託料で引き受けてくれる企業がなくなり、直営の時よりも高い費用を支出しなければならなくなる。

 

 自治労連は、これまでにも、学校給食や学校用務・清掃、窓口業務などの民間委託、公共施設の指定管理者制度導入などアウトソーシングを許さず、住民サービスを守るために住民と共同したたたかいを進め、各地で民間委託を押し止めたり、委託された業務を直営に戻させてきた。「公的サービスの産業化」や「自治体戦略2040構想」など、地方自治を根底から変質・破壊させる動きに対して、住民サービスと地方自治を守るために、広範な住民、諸団体との共同を広げて反撃していくことが求められる。

 自治労連は、憲法をいかし、地方自治体の住民サービスを守り、充実させるために、「包括委託」を許さないたたかいを進めるものである。

以上