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2014人事院勧告に対する声明

2014人事院勧告に対する声明

 

 人事院は7日、今年度の国家公務員賃金について、官民較差(1,090円・0.27%)にもとづく月例給平均0.3%、一時金0.15月の引上げ勧告を行った。月例給・一時金とも引上げは7年ぶりとなるもので、この間の国家公務員の特例賃下げ、地方自治体への賃下げ強制の継続を許さず、わずかとはいえ引上げを勝ち取ったことは、これまで、公務・民間が共同して進めてきた「すべての労働者の賃上げで景気回復を」をめざす取り組みの重要な到達点である。とりわけ、私たちが強く改善を求めてきた初任給の2,000円の引上げは、職場・地域から共同で取り組んできた大きな成果である。

 

 他方で、今年度の勧告による引上げ率は、アベノミクスによる円安や4月に強行された消費税増税による物価上昇にも追いつかず、実質的には賃下げにとどまっている。14春闘における民間賃金引上げ、また、7月29日に出された地域別最低賃金目安額の引上げに続き、勧告による引上げが低水準に止められたことは、安倍政権が進める経済政策が大企業・資産家への富の集中を進める一方で、厳しい生活実態に直面している大多数の労働者・国民には何ら利益をもたらさないことを、改めて示すものとなった。

 

 あわせて人事院は、安倍政権の賃金抑制政策に迎合し、差別と分断をいっそうすすめる「給与制度の総合的見直し」の来年4月実施を勧告した。将来にわたり地方に働く多くの公務員に賃下げをもたらす重大な不利益変更でありながら、労働組合に対し、勧告間際まで具体的な提案も、その説明に必要なデータも示さず強行した。

 「見直し」は、①民間賃金水準が低いとされる12県の官民較差をもとに俸給表(給料表)水準を平均して2%引下げ、地域手当で地域民間賃金との均衡を図る、②民間に比べ賃金水準が高いとされる50歳台後半層が多く在職する号俸では最大4%程度の引下げを行い、それにそって賃金カーブを引き下げることを主な内容とするものとなっている。

 

 「見直し」は、公務員賃金を地域の民間賃金実態に合わせるとして、民間における企業規模や業種間の格差、さらには新自由主義による規制緩和と経済政策のもとでつくり出された劣悪な賃金実態を是認・放置したまま、大都市と地方、高年齢層と若年層、一般職員と技能労務職員等を分断し、総体として公務員賃金を引下げる意図を明確に持ったものであり、差別と分断の「見直し」にほかならない。

 

 非常勤職員の処遇改善については、夏季における年次休暇の運用改善を行うとした。他方で、賃金については労働組合との交渉で、「各府省において、人事院の発出した指針(平成20年8月)に沿った…適正かつ円滑な運用が図られるよう」取り組むとして、昨年同様に具体的な改善を見送った。「総合的見直し」というのであれば、極めて劣悪な賃金労働条件にありながら、日々の公務を支える臨時・非常勤職員の賃金改善こそ求められる。

 同様に、再任用職員の給与についても、生活と仕事の実態を無視し、改定を見送った。すでにこの4月から年金が支給されずに極めて低い賃金水準のまま働いている再任用職員の賃金改善は急務である。2016年度には、年金支給開始年齢が62歳に引上げられる。11年の人事院「意見の申出」を踏まえ、定年延長を基本にした雇用と年金の接続が求められる。

 

 政府は、昨年11月の閣議決定により、地方自治体に対しても、この「見直し」の実施を求めている。人事院は、今回の「見直し」を「諸手当改善等を含む配分の見直し」であるとしているが、地方公務員には、賃金水準(給料表)の大幅な減額にほかならない。

 地方の民間賃金に重大な影響を及ぼす地方公務員の賃金水準の引下げは、地域経済へ深刻な影響を与える。それはまた、困難な中で公務公共サービスを担う多くの地方公務員の意欲を削ぎ、とりわけ、自治体職場の明日を担う職員の将来設計を狂わせ、人材の確保・育成を阻害するものとなる。

 

 安倍政権が進める公務・民間を含む賃金抑制政策は、今春闘で上がり始めた民間賃金を、人事院勧告制度によって抑え込むものであり、地域手当の格差拡大は、解消すべき最低賃金の地域間格差の固定化を狙うものにほかならない。人事院が、労働組合の納得や合意を軽視し、政府・与党の方針に迎合し「給与制度の総合的見直し」を強行したことは、人事院が自ら自認する「第三者機関」としての役割を放棄したものであり、断じて容認することはできない。

 自治労連は、もはやその機能を失ったに等しい人事院勧告制度を廃止し、憲法がすべての労働者に保障する労働基本権を回復し、労使交渉による賃金・労働条件決定システムを確立するよう政府に強く要求する。

 

 この間、不当な「見直し」提案に対し、公務の労働組合は、民間労組の仲間とも団結を強め、職場・地域からたたかいを進めてきた。「すべての労働者の賃上げで景気回復を」の立場から、公務員賃金の引下げが、いかに労働者・国民の願いに背を向けるものであるかを訴えた地域労連による自治体や人事院地方事務局要請行動等の取り組みは、職場・地域の共感を広げ、初任給をはじめとする賃金引上げや、「給与制度の総合的見直し」についても、現業職員狙い撃ちのさらなる引下げをやめさせるという成果を上げた。

 自治労連は、こうしたたたかいの成果を確信に、今年度勧告による改善部分の実施はもちろんのこと、さらなる賃金・労働条件改善、「見直し」阻止、権力に奉仕する公務員づくりをすすめる人事評価制度の導入・強化に反対し、たたかう。安倍「雇用改革」阻止、全国一律最低賃金制確立、公契約法・条例制定、すべての労働者の賃上げへ向け、公務・民間の共同を大きく広げ、引き続き奮闘することを表明する。

 

2014年8月7日

日本自治体労働組合総連合 中央執行委員会