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政府の2017年度地方財政計画について(談話)

政府の2017年度地方財政計画について(談話)

2017年2月9日

書記長 中川 悟

 安倍内閣は2月7日、2017年度地方財政計画を閣議決定した。地方の一般財源総額は、税収増や臨時財政対策債の増額などにより前年度を0.4兆円上回る62.1兆円を確保しているが、地方交付税は前年度比3705億円減の16.3兆円と、5年連続の削減となっている。地方の財源不足は6兆9710億円に上り、1996年以来22年連続して、政府が制度の改正または法定率の引き上げを行うことを定めている地方交付税法第6条の3第2項に該当する状態になっている。政府は財源不足に対して、国負担分については一般会計から交付税特別会計への繰り入れによる加算、地方負担分については臨時財政対策債による補てん措置などの特例措置によって対応するとしている。

「三位一体改革」以降、地方の財源不足は深刻であり、地方自治体間の財政力の格差は拡大している。地方交付税は、地方自治体の財源を保障し、財源格差を調整する役割を担うものであることから、政府は「制度改正」と称した一時的な特例措置で対応するのでなく、法定率の引き上げをはじめとした抜本的な制度改正を行うことが求められる。

 地方交付税のトップランナー方式については、2016年度から導入した学校用務や給食、清掃など16業務について、3年から5年をかけた段階的な反映における2年目の見直しを実施するとともに、新たに青少年教育施設管理および公立大学運営の2業務に導入するとしている。一方、図書館管理、博物館管理、公民館管理、児童館等管理、窓口業務の5業務については2017年度の導入は見送られた。

 自治労連はこの間、政府に対して地方交付税の財源保障機能を損なわせるトップランナー方式の廃止を求めるとともに、地方団体に対しても同方式に反対する共同を呼びかけてきた。日本図書館協会は図書館へのトップランナー方式の導入に反対する声明を発表し、地方団体も、トップランナー方式について懸念を表明し、「地方交付税の財源保障機能が損なわれることがないように」と政府に要請をしてきた。政府が、図書館などの社会教育施設や窓口業務について2017年度の導入を見送ったことは、これまでの自治労連や、関係団体、地方団体等の運動が一定反映されたものである。しかし「経済財政運営と改革の基本方針2015(骨太方針)」や「経済財政再生計画改革工程表2016改訂版」では、これらの業務についても、トップランナー方式を導入する対象としている。なお、政府は、複数の自治体の窓口業務を一括して地方独立行政法人に委託できるようにする地方自治法の一部「改正」案を今国会に提出し、成立を図ろうとしている。引き続きトップランナー方式の廃止と、窓口業務のアウトソーシングを許さないたたかいをすすめることが必要である。

 地方公務員の人員については、給与関係費における地方財政計画上の職員数について、一般職員(教職員、警察官、警察事務職員及び消防職員を除く職員)を348人増員している。また、児童虐待防止対策の強化を図るためとして、児童福祉司の地方交付税措置について、2016年度に道府県の標準団体で3名増員したことに加え、2017年度は2名増員するとしている。さらに、東日本大震災の被災団体等の職員及び東日本大震災の被災団体等に現に派遣されている職員に係る経費については、引き続き、震災復興特別交付税を措置するとこととしている。これらの措置は一定の改善ではあるが、職場の実態からすれば極めて不十分である。地方公務員数は、総務省の地方公務員定員管理調査でも22年連続して削減されており、職員の長時間・過密労働、健康破壊、人員不足による公務公共サービスの低下は深刻である。地方自治体が業務に必要な人員を確保できるように政府は抜本的な財政措置を行うことが求められる。

 地方財政計画では、耐震化が未実施となっている市町村の本庁舎の建て替え事業について、地方交付税で支援する「市町村役場機能緊急保全事業」を新設するとともに、老朽化を理由に統廃合が迫られていた公共施設についても、単独での老朽化対策や耐震化ができるように財政措置がされた。また、2016年度に創設された「地方創生推進交付金」については、対象事業の要件の緩和等、制度の改善が図られることになった。これらの措置は、住民と自治労連の共同した運動と地方団体からの意見を一定反映したものであるが、引き続き、住民生活を守る財政措置の充実を求めていく必要がある。

 子ども医療費助成については、2018年度(平成30年度)より、全ての市町村が未就学児までは何らかの措置を実施している実態等を踏まえるとして、未就学児までを対象とする助成については国民健康保険の国庫負担金の減額調整措置を行わないこととしている。この措置は当然のことであるが、そもそも国が子ども医療費助成について地方自治体に不当なペナルティを課すこと自体許されるものではない。子ども医療費助成に係る国庫負担減額調整措置そのものを廃止するとともに、国の責任において、子どもの医療費助成制度を創設すべきである。

 政府がやるべきことは、国民が全国のどの地域に住んでいても憲法に基づく健康で文化的な生活が営めるようにナショナルミニマムを保障し、地方自治体の財源格差を是正して、地方財政を拡充させることにある。自治労連は、地方自治体が憲法に基づき「住民の福祉の増進」(地方自治法)を図る役割を発揮するために、政府が責任を持って地方財源を保障することを強く求める。地方交付税については「三位一体改革」で大幅に減らされた額を元に戻し、地方財源格差を調整し、財源保障の機能を果たすよう、制度の抜本的な拡充を図ることを求める。自治労連は、2017年度政府予算案が審議される通常国会に対するとりくみをはじめ、公務公共サービスを支える地方財政を拡充させるために、引き続き、住民、自治体関係者との共同を広げてたたかうものである。