人事院は、8月8日、今年度の国家公務員賃金について、官民較差(708円0.17%)に基づく月例給引き上げ、0.10月の一時金引き上げ勧告を行った。3年連続となる月例給・一時金ともの引き上げは、春闘を起点にした公務・民間共同のたたかいの成果であり、「すべての労働者の賃上げで景気回復を」が、今や国民的なスローガンとなっていることの証である。同時にそれは、春闘の成果を公務員賃金、最低賃金につなげ、さらに翌年の賃上げへと結実させる「賃上げのサイクル」定着へのさらなる一歩となった。

 

地方を励ます「みんなの賃上げ」が求められている

 しかしながら、初任給で1,500円、若年層以外では400円という改定額は、公務職場の生活改善どころか、地域経済の再生には到底結びつかない低水準のものと言わざるを得ない。また、一時金増額分の勤勉手当への配分は、再任用職員における勤務実績の新たな反映とともに、「成果主義」をいっそう強めるものとなった。

さらに人事院は、較差の8割を地域手当に配分した昨年に続き、今年も、3割を霞が関の職員だけを対象とする本府省業務調整手当の引き上げに充てる一方で、地方や高齢層の職員にも賃上げとなる「現給保障」額の引き上げを見送った。これでは、公務員賃金の影響を受けるはずの公務関連労働者や公務員に準拠する地域の労働者には「賃上げ効果」が届かない。

 7月27日に出された最賃目安額も、公務・民間共同の運動の広がりを反映して、平均24円の引き上げとなったが、これもまた、生活できる水準にはほど遠く、さらに地域間格差を拡大するものとなっている。

 地方の低賃金が改善されなければ、「経済の好循環」はさらに遠のくことになる。人事院は、非正規労働者を含む公務職場に働くすべての労働者の賃上げを進めることを通じて、地方全体を励ますべきである。

 

職員の生活実態に沿った扶養手当等の維持・拡充を

 配偶者に係る扶養手当については、手当額を半減する一方で、それによる原資を用いた子に係る手当額の増額と併せ、激変緩和のため、来年度から段階的に実施するとした。

 配偶者の扶養手当の見直しは、職員の生活実態からみて不当な賃下げであるだけでなく、そのプロセスにおいても、昨年の勧告が、民間の実態からみて「見直す状況にない」としていたものを、政府の要請を受け、突如、「民間企業及び公務における状況の変化」を理由に行うとしたこと自体、認められるものではない。これに対し、全国の公務職場から、短期間のうちに団体署名など多数の反対の声を集中し、配偶者の扶養手当全廃を許さず、扶養手当全体の原資を確保したことは、職場要求に基づいた公務全体の取り組みの成果である。

 かねてから財界は、賃金のあり方を「生活給」から「成果給」へと転換することをねらい、扶養手当などの生活関連手当をなくそうとしてきた。また、昨今の深刻な労働力不足のもと、女性の多くを安上がり労働力として動員する等の目的から、税制上の優遇措置とともに扶養手当の廃止が企図されていた。今回の措置は、こうした財界の意思に沿った賃金制度改悪を公務から推し進めようとするものであり、引き続き注視する必要がある。

 

均等原則に立った臨時・非常勤職員、再任用職員の処遇改善を

 臨時・非常勤職員の賃金については、今年もまた、「平成20年に発出した指針の内容に沿った処遇の確保」を繰り返し、俸給(給料)表改定の反映を除く改善は見送られた。16春闘期を通じて、労働力不足も反映した非正規労働者全体の処遇改善が前進したにもかかわらず、「今や公務運営になくてはならない」と人事院も認めざるを得ない臨時・非常勤職員の処遇について、勤務環境改善を言うにとどまったことに強い憤りを禁じえない。

 同時に、組合側の強い要求であった再任用職員の処遇改善、とりわけ生活関連手当の支給も見送られた。年金支給開始年齢が62歳となり、すでに最長2年に及ぶ無年金期間が存在するもとで、確実な雇用(任用)とともに、基本賃金の改善自体が急務となっている。定年退職前と何ら生活上の変化がない中で、極めて切実な要求である手当支給を見送ったことは納得できない。

 賃金の地域間格差とともに、雇用形態による賃金格差は、極めて差別的である。「均等待遇」「同一価値労働同一賃金」の立場から、積極的な改善が進められなければならない。

 

権利を行使できる人員体制の拡充こそ必要

 人事院は、育児や介護に関わる両立支援策の具体化として、今年の通常国会で成立した民間の法制度改正にそった国家公務員の育児休業法、勤務時間法の改正について、それぞれ意見の申出と勧告を行った。これらは、社会的な要請だけでなく、職場の切実な要求に基づく運動の成果である。

同時に、そうした権利を実際に行使できるかどうかは、人員体制にかかっているのが現実である。人事管理報告で指摘している「年齢別人員構成の偏り」、さらには長時間労働も、その主たる原因は、政権党が主導してきた極端な人員抑制の結果にほかならず、政府・人事院が、国・地方を通じて、まともな人員体制を早期に実現することを強く求める。

 

 公務の民間化や職員の非正規化、そして、「給与制度の総合的見直し」は、賃金の地域間格差、雇用形態による格差を拡大することで、公務・民間を問わず、地方における総人件費抑制を公務職場から具体化するものであった。

 さらに政府は、「一億総活躍」の名で、低賃金労働力として女性、高齢者、外国人の「活用」を進める一方で、正規労働者には、「生活給」から「成果給」への転換、公務においては、「人事評価制度」の徹底という思想攻撃を強め、低賃金と長時間過密労働に追い込んでいる。

 「すべての労働者の賃上げで景気回復を」の運動は、アベノミクスがもたらした「貧困と格差」を可視化し、3年連続の賃上げ状況を生み出す成果を上げた。地方の公務職場においても、昨年、地方の公民較差に基づく賃金水準の引き上げなど、不当な国公制度の押し付けを押し返してきている。

 自治労連は、これまでの到達点の上に立ち、引き続き、公務・民間そして、市民運動とも連携を進め、臨時・非常勤職員の大幅賃上げ、全国一律最賃制度実現、公契約条例制定など賃金底上げの大きなうねりをつくり出す中で、地域再生に結びつく公務員賃金改善の運動に、引き続き全力を尽くすものである。

 

2016年8月8日
日本自治体労働組合総連合 中央執行委員会