国民の生存権を切り捨てる生活保護基準の引き下げ、制度改悪を許さず、憲法25条に基づき生活保護制度の充実を要求する(談話)

2013年1月17日
日本自治体労働組合総連合
書記長 猿橋 均

 厚生労働省社会保障審議会の「生活保護基準部会」と「生活困窮者支援特別部会」は1月16日、生活保護基準の引き下げをはじめとした制度改悪を求める報告書案をとりまとめた。政府はこれを受けて、生活保護制度の改悪を盛り込んだ2013年度予算案を1月末にも閣議決定し、1月28日から始まる通常国会に提出しようとしている。

 「生活保護基準部会」が提出した報告書案では、低所得世帯の生活水準が生活保護基準を下回る「逆転現象」があるとして、夫婦と子供2人の世帯で約26300円(14.2%)引き下げるなど、子育て世代を直撃する方針を打ち出している。また「生活困窮者支援特別部会」の報告書案では、(1)一定期間で就労できない場合、本人が望まない職種・職場であっても、とにかく就職を迫り「低額であってもいったん就労」することを基本とする、(2)扶養義務者に対し福祉事務所の判断で、扶養が困難な理由の説明を求めることを要件とする、(3)生活保護受給者の就労や保護費の支出状況を調査権限に加えるように地方自治体の権限を強化する、等の制度改悪を提言している。

 そもそも生活保護法は、国民の生存権を定めた憲法25条に基づき、第3条で「この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない」と定めてある。構造改革による「貧困と格差」が広がるもとで、本来は生活保護が受給できるのに受給ができず、生活保護基準以下の所得で劣悪な生活を強いられている国民が増大している。日本の生活保護の捕捉率は2割程度に過ぎず、先進諸国の中でも異常に低い状態にある。政府がやるべきことは生活保護制度の目的・趣旨をふまえ、必要とするすべての国民に生活保護の支給を行うことである。生活保護が受給できない国民を放置して、今でも不十分な生活保護基準をさらに引き下げれば、労働者・国民の暮らしに重大な悪影響をもたらす。

 政府は、生活保護基準の引き下げとあわせて、地方公務員の賃金を国並みに7.8%カットすることを、地方交付税の削減もタテに、強要しようとしている、国民の最低生活を定め、最低賃金の水準を決定づける生活保護基準と、地域の地場賃金に影響する地方公務員賃金の切り下げは、国民全体の賃金、生活水準を切り下げる攻撃にほかならない。
 また、生活保護基準の引き下げは、住民税の課税限度額、就学援助や保育料、国民健康保険料や介護保険料、公営住宅家賃の減免基準など各種の税金、福祉、教育制度の基準の切り下げにも連動する。

 生活保護制度利用者に対し、拙速に低賃金で劣悪な就労を強要したり、扶養義務者に「扶養できない」理由の説明を求める措置は、これまで以上に受給抑制をはかり、生活保護を必要とする国民を、ますます制度から遠ざけることになる。また支給された保護費の使い道は、判例でも自由であると認められているにも関わらず、保護費の支出状況を自治体の調査権限に加えることは、生活保護制度利用者の人権を不当に侵害するものと言わなければならない。

 自公民の3党合意によって成立した社会保障制度改革推進法は、福祉・社会保障に対する国の責任を後退させ、憲法25条の実質的な改悪により、国民に「自己責任」をおしつけている。今回の生活保護基準の引き下げ、制度改悪は、その方針の具体化にほかならない。

 自治労連は、生活保護行政の第一線に立つ労働組合として、生活保護基準の引き下げ、制度改悪に断固反対するとともに、憲法25条に基づき、国民が健康で文化的な最低限度の生活がはかられるように老齢加算の復活はもちろん、生活保護制度の充実を行うよう政府に要求する。1月28日から開会する通常国会において、生活保護切り捨てをはじめとした制度改悪を許さず、国民、労働者の生活と権利を守るために、関係諸団体との共同を広げ、たたかうものである。

以上