2017年12月25日

書記長 中川 悟

 厚生労働省社会保障審議会生活保護基準部会は12月14日、5年に1度実施される全国消費実態調査のデータ等を用いた生活扶助基準の検証に関する報告書をとりまとめた。政府はこれを受けて、生活保護費の削減を盛り込んだ2018年度予算案を12月22日に閣議決定し、年明けの通常国会に提出しようとしている。

 生活保護基準部会は、生活扶助基準や有子世帯その他の扶助・加算等について検証を行い、その結果として一部の世帯類型で消費実態を生活扶助基準が上回っているとした。基準部会の報告書は複数の選択肢を提示し、実施にあたって慎重な検討を付したが、厚生労働省は12月18日に、2018年10月から3年かけて段階的削減する方針を固め、詳細は示されていないものの、生活扶助費は1.8%・160億円、母子加算20億円の削減と報道されている。特に都市部の子育て世帯・母子世帯と高齢者単身世帯の引き下げ幅が大きく、政府が重要課題としている子どもの貧困対策に逆行するものであり、これでは貧困の連鎖の解消につながらない。

 生活保護制度は、国民の生存権を定めた憲法25条に基づくもので、生活保護法第3条は「この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない」と定めている。

 生活保護費の前回改定では、生活扶助費が3年かけ6.5%引き下げ、冬季加算の廃止などと合わせ、受給者の生活に計り知れない影響が及んだことを、我々は自治体労働者として目の当たりにしてきた。その影響が十分検証されないばかりか、当事者の声に耳を傾けようともせず、さらなる引き下げが強行されようとしている。今も2013年改定に対して、全国29都道府県で955名の原告が違憲訴訟(いのちのとりで裁判)を提起して闘っており、その判決が出る前のさらなる保護費削減は、暴挙と言わざるを得ない。

 アベノミクスによる「格差と貧困」が広がる中、生活保護基準以下の所得で劣悪な生活を強いられている国民が増大している。一方、日本の生活保護の捕捉率はわずか2割程度に過ぎず、先進諸国の中でも著しく低い状態にある。言い換えれば、基準部会が比較検討した低所得階層の消費実態には、本来生活保護を受給すべき階層の8割が含まれているということであり、そもそも比較対象として不適切と指摘する研究者も多い。いま政府がやるべきことは、生活保護制度の目的・趣旨をふまえ、基準以下の収入で生活している国民に生活保護費の支給を行うことであり、保護基準を下回る年金制度の拡充である。

 また、生活保護基準の引き下げは、住民税の課税限度額、就学援助や保育料、国民健康保険料や介護保険料、公営住宅家賃の減免基準など各種の税金、福祉、教育制度の基準の切り下げに連動するばかりか、毎年改定される労働者の最低賃金にも影響を及ぼす。そもそも低賃金で働くパート・アルバイト労働者の実態を顧みようともせず、保護基準以下の年金で生活する国民をまでも放置したまま、不十分な生活保護基準をさらに引き下げることは、すべての労働者・国民の暮らしに重大な悪影響をもたらすものであり、絶対に許されない。

 くわえて、厚生労働省は生活保護基準の見直しと並行して、社会保障審議会生活困窮者自立支援及び生活保護部会において、「経済・財政再生計画改革工程表(2016年12月21日経済財政諮問会議決定)」に基づき、生活困窮者自立支援制度及び生活保護制度の課題及びその対応方策を検討してきた。12月15日にまとめられた報告書は、「早期」、「予防」の視点に立った自立支援の強化や、貧困の連鎖を防ぐための支援の強化を謳いつつ、制度の信頼性の確保として、後発医薬品のさらなる使用促進や、保護費の返還金を保護費から差し引くことを可とするなど、大きな問題を含んでいる。国民生活の悪化は、非正規雇用を増大させた労働政策と、年金や雇用保険制度、医療保険制度の改悪によるものである。安定した雇用と安心して暮らせる社会保障の拡充なしに、生活困窮問題は解決しない。

 自治労連は、生活保護行政の第一線に立つ労働組合として、生活保護基準の引き下げ、制度改悪に断固反対するとともに、憲法25条に基づき、国民が健康で文化的な最低限度の生活がはかられるよう、生活保護制度の充実を行うよう政府に要求する。1月22日に開会する通常国会において、生活保護切り捨てをはじめとした制度改悪を許さず、国民、労働者の生活と権利を守るために、関係諸団体との共同を広げ、たたかうものである。

以上