メニュー

すべての労働者の切実な願いである働き続ける権利に背を向ける政府の基本方針の決定に抗議する

2012年3月26日

すべての労働者の切実な願いである働き続ける権利に背を向ける政府の基本方針の決定に抗議する


日本自治体労働組合総連合
書記長 猿橋 均

行政改革実行本部及び国家公務員制度改革推進本部は23日、国家公務員の高齢期雇用施策として「再任用の義務化」を内容とする「国家公務員の雇用と年金の接続に関する基本方針」を決定した。

高齢期雇用については、公務・民間を問わず、年金支給開始年齢が段階的に引き上げられることに伴い、無収入になる期間が生じることから確実な雇用と年金の接続が求められていた。

民間では、政府が1月の労政審の建議を受けて、希望者全員を65歳まで再雇用することを義務付ける「高年齢者雇用安定法」改正案を9日に閣議決定し、今通常国会に提出している。改正案は、企業が再雇用対象者を選ぶ基準を廃止する規制強化が柱となっているが、財界は、昨年からこの動きに対し人件費の増大、若年者雇用への悪影響を理由に基準廃止に強く反対している。

自治労連は、公務労働者の高齢期雇用について「定年延長」を基本として制度設計を進めることを要求してきた。また、昨年人事院は不十分な点はあるものの、段階的「定年延長」の意見の申出を行った。

ところが、政府は、国家公務員の高齢期雇用について、財界の圧力により民間で定年年齢の規定に触れることができなかったことや、消費税増税などの国民負担増の露払いとしての公務員の総人件費削減改革のひとつとして位置付けていることから、人事院が研究会で十分検討してきたにもかかわらず、わずか2回の有識者による「意見交換会」を開き、その意見を踏まえ、雇用と年金の接続を図る施策として「再任用の義務化」を選択した。

具体的には、民間の「高年齢者雇用安定法」改正案において「基準に基づく制度の廃止等を措置していること」に触れ、定年退職者がフルタイム再任用を希望する場合、任命権者に採用が義務付けられるとしている。

しかしながら、以下のように問題点もある。①その期間は、退職共済年金の支給開始年齢に従って段階的に延長するもので、あくまで任期は1年を超えない範囲内で、再任用期間までの間更新するとしている。②「再任用の義務化」としつつも、「標準的官職(係員等)に係る標準職務遂行能力及び当該官職についての適性を有しない場合」、その義務を課されないとしている。③短時間再任用を希望する場合への対応を「できる限り当該希望に沿った対応」にとどめていることや、「60歳超職員の追加的増加への対応」では、「総人件費改革等の観点も踏まえつつ、必要な措置を講じる」など、選別などが行われかねない表現が含まれている。④「定年延長」については、再任用の義務化後の「一定の時期に、…雇用と年金の接続の在り方について改めて検討を行う」という表現にとどまり、基本方針には文言すら出てきていない。⑤「職員の給与の在り方」についは、「別途検討する」とあるように、「総人件費改革や職員の能力活用の観点も踏まえつつ」と触れるだけでこの基本方針には盛り込まれなかった。

政府は、最終的には臨時国会での法案成立をめざすとしている。高齢期雇用は、公務・民間含め共通の課題であり、年金の支給開始年齢を引き上げたのが政府ならば、定年と年金を接続させることが政府の責任である。地方にも大きく影響する国家公務員の制度設計をこのまま進めさせるわけにはいかない。

東日本大震災で明らかになったが、この間地方自治体では「集中改革プラン」等により公務の縮小・市場化や職員定数の削減が行われ、自治体本来の役割を十分に発揮できず、公務・公共サービスの低下を招いた。また、職場では、「いい仕事がしたい」という公務労働者の要求実現を困難にし、長時間過密労働など職員の労働強化がすすみ、結果としてメンタルヘルス不全の職員の増加や現在の定年年齢までさえ働き続けられない現状につながっている。

そのためにも、行き過ぎた人員削減による公務・公共サービスの低下や職員の労働強化・健康破壊の改善のため、また、新たな職務・職域の拡大による公務・公共サービスの拡充の好機ととらえ、職場からの声を基礎にした積極的な要求を掲げその実現に全力をあげる。

地方公務員の再任用については、これまでも希望しても任用されない場合があるのが現状で、ここに最大の問題がある。引き続き自治労連は、働きつづける権利を保障させる立場からも、「定年延長」を基本とした制度設計を求めつつ、確実な雇用と年金の接続、希望者全員の雇用確保の実現をめざす。また、公務と民間、正規と非正規、世代間の分断を許さず、全労連規模での取り組みを検討・具体化し、当面4・12中央行動や国会議員への要請行動などを通じ、民間の「高年齢者雇用安定法」改正案への取り組みなど公務・民間の共同した行動を進め、安心してくらし、働き続けられる職場をめざし奮闘するものである。

(以上)