日本自治体労働組合総連合

「人間らしく生きること」を保障できる職場づくりのための

生活保護政策提言(案)

2014年3月

 はじめに

 自治労連は2007年8月に「住民の『生きること』を保障する仕事と職場をめざして(案)」との生活保護の職場政策提言をまとめ、2008年と2009年に全国交流集会を開催するなど、生活保護制度と職場の課題について、議論と運動を進めてきました。

 生活保護制度をめぐる状況は、この20年で激変し、ますます困難な自治体職場になっています。

 生活保護利用者は1995年を底に増加へ転じ、以降急増しました。2008年のいわゆるリーマンショック以降その勢いはさらに増し、過去最高を更新し続けています(2013年11月時点で約216万5千人、159万6千世帯)。最も多いのは高齢者世帯であり、稼働年齢層を含むその他世帯(高齢、母子、障害、傷病以外の世帯)の増加が特徴と言われています。

 リーマンショックによる影響で、何万人という派遣労働者が年末に解雇され、職と住居を同時に失ったことを機に年越し派遣村がつくられました。東京では集団で生活保護の申請がされ、名古屋でも連日集団申請がありました。こうした中、各地で貧困問題に取り組むNPOや反貧困ネットワーク等が組織され、福祉事務所の対応、運用などが問題視されました。その後も受給者が増え続ける中で、不正受給問題や、特定芸能人に対するバッシングが、連日マスコミで大げさに取り上げられることで制度への誤解が増長され、また貧困ビジネスが横行するなど、制度の問題だけではない構造的な課題も表面化してきました。

 生活保護利用者の急増は、景気の悪化ということだけでなく、派遣労働者法の改悪による非正規労働者の増加と不安定雇用の拡大、雇用保険の改悪、年金削減、医療費や介護保険の負担増など社会保障制度改悪、さらには貧困な住宅政策などによって、セーフティネットが崩壊していることが原因であり、貧困を拡大している政治に責任があります。その中で、最後のセーフティネットとしての生活保護制度が機能し、国民の生存権を保障する役割を、それなりに果たしているということになります。

 本来ならば、利用世帯数の増加に応じて、担当職員の増員が行われるべきです。ところが実際には、世帯数の増加にケースワーカーや査察指導員、経理事務等の増員が間に合わず、深刻な人員不足状態が続いています。自治労連が行った調査(2009年。全国1,347実施機関のうち757か所から回答)では、社会福祉法上の標準数は市部で1現業員あたり80世帯であるにもかかわらず、中核市、政令市では約9割がこの標準数を上回り、約2割が110世帯を上回る状況です。

 また、人員不足だけでなく、対応力の低下が構造的に生じています。そもそも、ケースワーカーや査察指導員は、生活保護法のみならず他の法律や制度を熟知し、経験を蓄積して援助することが求められる業務です。ところが、生活保護職場への異動希望者が少ないこともあって新規採用者を配置したり、短期間での異動をさせたりすることでノウハウが蓄積されず、正しい法・制度への理解が周知徹底されない状況が生まれています。先の自治労連の調査でも、ケースワーカーの平均経験年数は3年以下が3分の2を占め、5年以上の職員は職場に1割しかいません。さらに、社会福祉主事の資格がないケースワーカーは2割を占めています。これでは、現場での対応力を継続することも困難であり、利用者に寄り添うこともできず、事務仕事や不正の摘発に追われるなど、全く余裕のない職場になっていて、ケースワーカーの心身の疲れ、病気休職も問題となっています。

 さらに、自治体の定数抑制・削減方針により正規職員が増員されない代わりに、自治体によっては、期限付き職員や嘱託、派遣、アルバイトのケースワーカーもあらわれています。また人件費に国庫補助のある就労支援員などの嘱託職員(非常勤職員)や、適正実施を背景にした警察OBが配置される自治体も増えています

 こうした状況の中、この提言は2007年の提言案をさらに深めるとともに、この間に進められた生活保護基準の引き下げや生活保護法の改悪等に対して、自治労連としてどのように考えるのかを整理しました。この提言をもとに、職場で議論を深め、分会・支部・単組・地方組織での運動にいかしていただきたいと思います。

1 生活保護制度の意義「あらためて考える制度の基本」

1-1 生活保護は最後のセーフティネット 生存権を保障する社会保障制度の根幹

 生活保護を受けることは憲法で保障された権利です。

 憲法第25条には「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」とあります。

 生活保護法は、法の目的を「憲法第25条に規定する理念に基づき、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長すること」と定めています。すなわち、生活に困窮した国民がいた場合、その保護は国が直接の責任において実施することとしたのです。また、単に生活困窮者の最低限度の生活を保障するだけではなく、将来における自立(経済的自立のみならず、社会的自立・日常生活自立を含む)の助長を図ることも目的としています。

 生活保護を受けることは恥ずかしいことでも、隠さなければいけないことではなく、「権利の行使として生活保護制度を利用できる」ということであり、それを私たち自治体職員も常に念頭に置く必要があります。

1-2 生活保護は国が責任を負う制度 都道府県や市区町村は法に基づきその処理を受託

 生活保護法の目的にあるように、この制度は国が直接実施するものですが、実際の事務は生活保護法第19条で「都道府県知事、市長及び社会福祉法に基づく福祉事務所を管理する町村長は、保護の実施機関として、(中略)保護を行わなければならない」と定めています。日本国民であれば、同じ条件で生活保護を受けることができるのが原則ですが、地方によって差がない訳ではありません。もともと「機関委任事務」として、法令に基づいて国から委任され、「国の機関」として処理する事務という位置付けでした。しかし1999年の地方分権一括法により、地方自治体の事務である「法定受託事務」に変わりました。法定受託事務とは、法令により都道府県、市町村または特別区が処理することとされる事務のうち、国(または都道府県)が本来果たすべき役割に係るものであって、国(または都道府県)においてその適正な処理を特に確保する必要がある事務となっています。

 機関委任事務も法定受託事務も文字面ではたいして変わらないようですが、「受託」といえども地方の事務であることに変わりありません。市町村等は、技術的助言として厚生労働省が示している「実施要領」に則って生活保護制度を実施しており、個別の事例について厚生労働省は一切判断を行いません。また現業員(ケースワーカー)の配置基準も、地方分権一括法以降、法定数から標準数に変えられてしまったことにより、実施機関によっては1人のケースワーカーが150世帯以上を担当する状況も生じているなど、負担は増えるばかりです(市部では被保護世帯80世帯に1人、町村部では65世帯に1人という配置基準は変わっていません)。

2 生活保護制度は、どのように改悪されているのか

2-1 生活保護制度を含む労働者をめぐる制度の変遷 国はいかに責任放棄を進めたか

1981年 123号通知「生活保護の適正実施の推進について」発出

1989年 生活保護費の国庫負担率が5分の4から4分の3に削減

2000年 地方一括分権法により機関委任事務から法定受託事務に

2001年 雇用保険改悪、退職理由によって給付日数に差

2003年 マイナス0.9%の基準引き下げ、2004年にもマイナス0.2%

2005年 三位一体改革で国庫負担率4分の3から3分の2への削減提案、地方反発で撤回

2006年 段階的に削減されていた老齢加算が廃止、生存権裁判に

2007年 雇用保険再改悪、国庫負担削減のため短時間被保険者制度の廃止など

2009年 4月に母子加算が全廃されるが政権交代により12月に復活

2013年 保護基準引き下げ(3年かけて最大10%)

  生活保護法一部改正・生活困窮者自立支援法成立

2-2「社会保障制度改革」の先駆けとされた生活保護制度

 2012年に成立した「社会保障制度改革推進法」は、社会保障を自己責任とし、医療、介護、年金などの改悪を推進するものであり、わざわざ附則で生活保護制度の見直しが謳われています。これは憲法25条を空洞化するものであり、「立法による改憲」とも言えます。この改革法に基づき、生活保護基準の引き下げ、生活保護法の「改正」、生活困窮者自立支援法の制定と、矢継ぎ早に制度の見直しが行われましたが、基準見直しも生活困窮者支援のあり方も、改革法成立前から議論されていたものです。改革法の附則に盛り込んでまで、生活保護制度改悪を急いだのは、これから始まる他の社会保障制度改悪に先行させることで、その批判を緩めようというねらいにほかありません。最後のセーフティネットである生活保護の締め付けは、国民の生存権を脅かすものであり、続く社会保障の自己責任化による切り捨ては、国民生活全体の危機といえるでしょう。こうした国の動きに対して、住民の福祉の増進を図ることを基本的な役割とする自治体のあり方が、改めて問われている課題でもあります。

2-3 矛盾だらけの生活扶助基準引き下げとその影響

 2013年8月、2014年4月、2015年4月と、三段階で生活保護基準を最大10%引き下げることがすでに決められていますが、この生活扶助基準の引き下げには、検証方法の問題とデフレへの対応の問題があります。

 生活扶助基準の検討にあたっては、これまで「平均的一般世帯の消費支出、下位40%の低所得世帯の消費支出、被保護世帯の消費支出の3つの間差の均衡」に留意して決められてきましたが、今回は下位10%の所得層(第1・十分位)の消費実態と比較されました。日本の生活保護制度の捕捉率(生活保護が必要な所得水準にある人のうち、実際に生活保護を受給している割合)は2〜3割と言われています。生活保護基準以下の所得水準で暮らす人が多いにもかかわらず、下位10%の低所得者層の消費水準と比較すれば、生活保護基準が高くなるのも当然です。それを根拠に生活保護基準を引き下げてしまうと、さらに国民生活全体の消費に影響が生じて、負のスパイラル現象が起こってしまいます。

 また、デフレを理由に基準が引き下げられましたが、消費者物価の比較対象とした2008年は石油の高騰等で物価が突出して上がった年で、比較対象としてきわめて不適切です。前回生活保護基準が下げられた2004年の消費者物価指数と比較してみると、耐久消費財等の下落幅は大きくなっているものの、食料、水道光熱費等の生活費の中心的な支出は軒並み上昇していて、低所得者層の生活は2004年に比べむしろ厳しくなっていると言えるでしょう。

 こうして基準部会の検討結果としての90億円に加え、厚生労働省主導でデフレの影響分として基準部会では検討すらされなかった580億円が削減されました。しかし、基準部会で検証した下位10%の消費実態も当然デフレの影響を受けている訳であり、580億円の削減はデフレ分を二重に計上したことになります。

 生活扶助基準引き下げの影響は、保護受給者ばかりでなく多方面に及びます。生活保護に係る施策との整合性に配慮するよう定められている最低賃金が引き下げられれば、労働者の労働条件に大きく影響します。また、地方税の非課税基準も、法令によって生活保護基準を元に定めると明記されています。生活保護基準が下がれば、住民税の非課税対象の所得額も下がることになり、収入の変わらない人が、非課税から課税になることがあります。さらに、住民税の課税状況は、就学援助の給付対象基準、高額医療費の自己負担限度額、介護保険の保険料・利用料や障害者総合支援法による利用料の減額基準、公営住宅家賃の減免基準など、福祉・教育・税制等の多様な施策の適用に影響します。各種制度を利用できる対象者を少なくし、市民生活全体に大きな影響を与えます。その結果消費が抑制され、新たな不況の糸口ともなりかねません。

2-4 生活保護法一部改正は、生活保護を受けにくくするための布石

 2013年末に成立した生活保護法一部改正は、以下の5点について問題があります。

① 申請書の提出(第24条第1項)。保護の開始を申請する者は、申請書を作成することができない特別な事情がない限り、法が定める事項を記載した申請書を提出しなければなりません。記載事項の不備を理由に申請を却下された場合、不服申立ができなくなる可能性があります

② 保護の要否・種類・程度等を決定するための書類の添付が申請時に必要(第24条第2項)。こちらも特別な事情がある場合を除いて、申請者が必要な書類を添付しなければなりません。書類不備を理由に申請が却下された場合、不服申立ができなくなる可能性があります。

③ 扶養義務者への書面での通知(第24条第8項)。扶養義務を履行していないと認められる扶養義務者に、保護開始前に書面で通知しなければならないとなりました。

④ 福祉事務所の調査権限の拡大(第29条第1項)。調査対象に過去に保護を受給していた者(被保護者であった者の扶養義務者含む)が追加され、資産や収入の報告を、勤務先や銀行に求めることができるようになりました。

⑤ その他、医療扶助の適正化の名の下に後発医薬品の使用促進(第34条第3項)、被保護者の生活上の責務(第60条)、保護金品からの不正受給徴収金(4割まで上乗せ可)の徴収(第78条の2)など。

 申請書提出および添付書類の義務化などは、水際作戦を公認するものだとの批判や、現場からの不安の声に対して、国会答弁でも厚生労働省は「現行の運用を変えるものではない」と説明しています。一部改正法成立後の説明会で、今改正の概要と詳細、運用の留意事項等が説明されました。その中で厚生労働省は「速やかかつ正確な保護の決定のためには、できる限り早期に要否の判定に必要となる資料を提出していただくことが望ましいが、書面等の提出は申請から保護決定までの間でも構わないというこれまでの取扱いには法改正後においても変更はない。現在でも省令上申請は書面を提出して行うこととされており、申請していただく事項や申請の様式も含め、現行の運用の取扱いをこの規定により変更するものではない。また、資産や収入の状況についても従来から提出を求めているところであり、今回の改正で新たな資料の提出を求める事項はない。現在、事務連絡に基づき事情がある方に認められている口頭申請についても、その運用を変えることはなく、従来同様に認めることにし、その旨を厚生労働省令で規定する予定としている。なお、保護申請の意思が確認された者に対しては、速やかに保護申請書を交付するとともに、申請手続きについての助言を行うことや、保護の申請書類が整っていないことをもって申請を受け付けないということのないよう、法律上認められた保護の申請権を侵害しないことはもとより、侵害していると疑われるような行為自体も厳に慎むべきであることについては、法改正後も何ら変わるものではない(2013年12月10日『生活保護制度の見直しに関する説明会』資料2:運用の留意事項より)」とあらためて説明し、運用上の変更がないことが強調されています。

 なお、法改正前のもとでも、扶養義務者への扶養照会について、あたかも保護の開始にあたって扶養義務者の援助が前提であるかのような照会書が全国の約3分の1の福祉事務所で使用されていたことが明らかになりました。それを踏まえ、誤解を受けることがないよう表記を改め、保護のしおり等にも同様の表記が使用されていないか確認を求める旨の事務連絡が、厚生労働省保護課保護係長名で発出されています。また、扶養の有無・程度は当事者間の、きわめて個別の関係によるものであるにも関わらず、親族等による扶養(仕送り)月額の目安を一覧表にして示す自治体(大阪市)も現れていて、こちらも注視が必要です。

 職場で、生活保護法改正についての正しい理解を深めるとともに、国会での厚生労働大臣答弁や、参議院での附帯決議(申請権を侵害しないよう口頭申請が可能なことを省令などで明記すること。相談窓口の対応を実態調査すること。扶養義務者への通知については、扶養義務の履行が要保護認定の要件とならないことを明確にすること等)の内容を確実に伝え、全国で不適切な運用が図られないようにすることが重要な課題です。

2-5 生活困窮者自立支援法の真のねらいは国庫負担の削減と処遇の委託

 生活保護法の一部改正とセットで導入された生活困窮者自立支援法(以下「新法」とします)は、生活保護の役割を圧縮することを「前提」とした制度となっていることが問題です。しかも、ここでの「自立」は、「就労」に特化されています。すなわち、「社会的孤立」や「生活支援」という視点が含まれた「生活困窮者支援」ではなく、あくまで「就労自立」を前提とした「就労自立支援法」になっています。生活困窮者に対して、「就労自立」という観点からの支援をおこない、そして一度は就労し自立に至っても、孤立や生活の立て直しが解決されないとすれば、社会構造的な「貧困状態」の解決をはかることは困難です。

 また、生活保護法が、現に生活保護を利用している者と、保護を必要とする状態にある者を対象としているのに対し、新法は「経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することができなくなるおそれのある者」を対象としていて、要保護者はその対象にならないという関係性にあります。

 とはいえ、生活困窮者も要保護者も、必要とする支援に重なる部分が多くあります。新法の就労準備支援や家計相談支援について、要保護者を対象とする支援策はなく、「今後生活保護法に基づく事業として検討する」に留まっています。一方で、新法の「生活困窮者の子どもの学習相談支援事業」は、生活保護受給者の子どもの学習支援も対象としているなど、わかりにくい一面もあります。

 いずれにしても新法の事業と生活保護法に基づく事業が連携して、連続的な支援を行うことが重要になってきますが、懸念される点もあります。厚生労働省は新法の説明会において、「生活保護が必要な場合には、確実に生活保護につなぐこと」と話していますが、新法の相談支援事業や就労準備支援事業、一時生活支援事業など、市町村から委託を受けた法人等が、包括的・継続的な支援による生活困窮状態からの脱出という成果を求められることによって、生活保護の適用に躊躇することが危惧されます。また、自立相談支援事業と住宅確保給付金の支給については必須事業となっていて、生活保護費同様国がその費用の4分の3を負担することになっていますが、それ以外の事業は任意事業で、2分の1または3分の2の国庫補助事業という位置付けのため、市町村の実施体制に格差が生じる可能性が高いと思われます。

 新法の附帯決議でも、相談者の困窮の状況に応じ、保護制度下で生活再建を図ることも含め、最善の対応に向けた指導を徹底すること。相談員がケースワーカーや民生委員など関係者と連携し、訪問支援に積極的に取り組むことが盛り込まれています。しかし、そもそも生活困窮者の定義があいまいで、市町村で対象者の取扱いに差が出ることや、相談支援の窓口が福祉事務所に置かれた場合、それが生活保護の申請権侵害に使われるのではないか、人材養成研修の受講が必要となる相談支援員が確保できないなどの声が、市町村からあがっています。特に新法と既存制度との関係性(住居確保給付金と住宅支援給付、一時生活支援事業とホームレス自立支援法、家計相談支援事業と社協の日常生活自立支援事業など)については線引きがあいまいで、引き続き検討するとなっています。

 2013年度は全国68自治体でモデル事業が実施されましたが、派遣会社が実施主体として参入し、新たな貧困ビジネスの利権と指摘せざるをえない状況なども生まれています。2014年度はさらにモデル事業実施自治体を増やし、10月以降に運営ガイドラインの最終版を示すスケジュールになっています。今後のモデル事業で明らかになる課題や問題点を把握し、適切に生活困窮者支援が実施されるよう求める運動が必要になるでしょう。

 新法の目指す方向性が第2のセーフティネットの拡充であれば、貧困と格差を拡大してきたこれまでの政策を改め、改悪を続けてきた雇用保険や、非正規雇用を増大させた派遣労働者法などを見直すべきです。しかし、そうした構造的問題には手をつけず、民間市場に委ねる形での生活保護転落防止策のみを打ち出してきているというのは、社会保障費の抑制こそが真のねらいだと言わざるを得ません。

 生活保護の就労支援も新法の就労支援も、得られる収入が低くても就労を求める傾向にあり、結果的に非正規雇用や不安定労働を増大させることになっています。それが国民全体の所得水準を引き下げ、巡りめぐって私たち公務公共労働者の労働条件の悪化にもつながっていることを、しっかり掴んでおくことが重要です。

 また、新法によって就労支援等一部の処遇部分と保護費を支給する給付部分が切り分けられたことから、今後さらに生活保護法本体から処遇部分を分離して、そこをアウトソーシングするための布石という見方もできることから、新法のさらなる解明に取り組む必要があります。

 

3 職場で生活保護制度を適切に運用するために「生活保護職場の充実を求める提言」

提言1 人間らしく生きることを可能とする制度・施策を求める

○ 第2のセーフティネット拡充は、まず雇用保険の改善と労働者派遣法の見直しから。不安定雇用をなくし、万が一失業した場合でも、再スタートまでを失業給付でしっかり支えること。

○ 生活保護基準を現代の社会経済情勢にあわせ充実させること。当面矛盾だらけの生活保護基準引き下げを見直して元に戻すとともに、老齢加算を復活させること。

○ 漏給は憲法第25条違反です。他先進国に比べ著しく劣っている捕捉率を向上させるため、不正受給の摘発に力を入れるのではなく、国として漏給対策に本格的に取り組むこと。

○ 有期保護制度の導入や、医療費自己負担一部負担制度の導入は行わないこと。また「生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会」で議論された諸課題について、制度の改善に向けて検討を進めること。

提言2 正しく制度・施策を運用させる

○ 生活保護法改正時に国会で行われた大臣答弁や附帯決議が実効あるものとなり、不適正な運用がされないよう周知徹底を図ること。また国として責任を持って制度運用のモニタリングを行ない、広くその結果を公表すること。

○ 生活困窮者自立支援法があらたな「水際作戦」とならないよう、これから作成される運営ガイドラインについて、市町村や支援団体の声を反映すること。

提言3 生活保護職場の実施体制を改善し、充実させる

○ 現業員の不足の元凶である社会福祉法を改正し、配置基準を標準数から法定数に戻すこと。

○ 現業員の充足状況等の地域間格差をなくし、すべての国民が等しく制度を利用できるよう、生活保護費を全額国庫負担化し、現業員の人件費について補助対象とすること。

○ 市町村の現業員の配置基準を現行の80:1ではなく60:1に改めること。また、市町村合併により広域化した実施機関を考慮し、新たに面積基準による加配などを制度化すること。

○ 査察指導員について、その配置基準を7:1と明文化するとともに、現業員未経験等の業務経験が十分ではない者が配置されている状況を改善する方策を講じること

○ 現業員・査察指導員の専門性を確保するため、専門職採用等先進的な自治体の事例を紹介するとともに、研修制度の充実を図ること

○ ケースワーカー・就労支援員等は、臨時・非常勤職員ではなく、正規職員を充てること。現に臨時非常勤職員をケースワーカー等に充てている場合は、継続雇用と正規職員に準じた均等待遇を行い、研修や職場会議等による専門性の確保と雇用の継続性を保障すること。

 

4 自治労連の役割と決意

 私たち自治労連は、自治体労働者の労働条件の改善と働きやすい職場づくりの課題、住民の権利と暮らしを守る自治体づくりの課題を統一的にとらえて運動してきた産業別労働組合として、生活保護をめぐる今日的課題にも、憲法を職場、仕事に貫くことを基本に、積極的に取り組むものです。

 生活保護の仕事は、まさに憲法25条そのものを社会にいかす、誇りとやりがいのある仕事です。同時に、社会の矛盾と正面からぶつかる仕事でもあります。そこから見えてくる課題は、生活困窮者の個別の問題にとどまらず、社会全体の課題であり、雇用や社会保障全体の課題でもあります。

 地域から憲法をいかし住民生活を守るため、自治体・公務公共関係労働者と住民が一緒になって「人間らしく生きることを保障できる職場」をつくりあげていきましょう。

4-1 法改正や制度改正の理解を深めるために

○ 生活保護受給=罪悪という概念を払拭するために

  • 「地域から憲法をいかし、住民生活を守る」という自治労連の特別の任務を実践すべく、生存権を保障する社会保障制度の根幹である生活保護制度の改善を求めます。
  • 生活保護職場の中で社会保障・平和の問題を中心とした学習活動に、積極的に取り組み、憲法と民主主義を守るとりくみを進めます。
  • 全国で闘われている生活保護基準引き下げに対する不服審査・裁判や生存権裁判を支援するとともに、基準引き下げを他の制度に波及させない闘いを進めます。

○ 生活保護法一部改正でも運用は変わらないことの徹底

  • 国会での厚生労働大臣答弁や、附帯決議の内容を踏まえ、申請権を侵害することなく、全国で適正に制度が運用されるよう、厚生労働省に周知徹底を求めます。
  • 制度が正しく理解されるよう、学習宣伝素材(プレゼンテーション用資料など)を作成・配布して組合員の制度理解を深めるとともに、未加入組合員への働きかけに活用します。
  • 全国で申請者に不利な運用が図られている事例がないか、厚生労働省にモニタリングとその結果の公表を求めるとともに、自治労連としても独自の調査を行います。

○ 失業者の生活保障の拡充を

  • 失業者の生活保障ができるよう、雇用保険・失業給付について、抜本的な改善を求める運動を展開します。また、生活困窮者自立支援ではなく、雇用保険・失業給付に連続する失業者等の生活保障施策を探求します。
  • 当面、生活困窮者支援法が新たな「水際作戦」に使われたり、貧困ビジネスの新たな土壌とならないよう、厚生労働省が作成する運営ガイドラインに必要な提言を行います。

4-2 生活保護利用者増に見合った職場体制の構築のために

○ 標準数ではなく法定数で、ケースワーカー60:1、査察指導員7:1の配置を

  • 最低生活の保障と自立助長に必要なケースワーク業務が実施できるよう、現業員配置基準は60:1、査察指導員は7:1で配置することを求めます。
  • また、地域間格差の激しい実態を改善するため、標準数ではなく法定数としての配置基準になるよう、法改正を求めます。
  • 職員の専門性が確保されるよう、専門職採用や希望する職員の異動期間延長、研修制度の充実など、地域の実情にあった方法を求めていきます。

○ 生活保護職場の非正規労働者の雇用条件の拡充を

  • 全国で増加する生活保護職場の非正規労働者の雇用条件は、一部で生活保護基準以下の賃金水準にあるなど、官製ワーキングプアの元凶となっています。これを大幅に改善する運動に、非正規労働者とともに取り組みます。

○ 市区町村の職場体制を確立するために生活保護費は全額国庫負担で

  • 生活保護制度に対する国の責任を堅持させ、全国で同じ水準の制度運用が図られるよう、生活保護費の全額国庫負担化を求めます。

○ ケースワーカーの専門性を高める工夫を交流しよう

  • 各地域の実情にあった方法で、ケースワーカーの専門性を高めるための方策を検討・推進します。また2014年5月の全国交流集会(大阪市内)に続き、ブロック別での交流集会を開催し、各地でのとりくみの交流を進めます。

4-3 生活保護利用者との共闘や、雇用・社会保障の充実のために

○ 生活扶助基準引き下げ不服審査請求は生きる権利をかけた闘い

  • 全国で展開されている生活保護基準引き下げに関する不服審査・裁判闘争について、憲法25条実質改悪との闘いであるというその意義を理解し、その取り組みを積極的に支援し、また基準引き下げを他制度へ波及させない闘いを進めます。
  • 全国で闘われている生存権裁判(老齢加算廃止処分問題)も、これを支援します。

○ 弱者の力をさらに奪う分断攻撃に負けず、相互理解と連帯で闘おう

  • すべての国民が生活保護受給者へのバッシング報道に踊らされないよう、制度理解を深める取り組みを進めるとともに、カウンターを挟んで受給者・支援団体と自治体労働者が対立する構造に落とし込まれないよう、引き続き、全国生活と健康を守る会連合会などの運動体との共同を広げます。

○ 雇用を守り、社会保障の充実を求める闘い

  • 医療・介護・所得(年金)の保障について、制度の改悪を許さず、充実させる取り組みを住民とともに進め、貧困に陥ることを防ぎます。また、非正規・不安定労働者の労働条件を向上させる取り組みを進めます。

                                     以上