2008年7月

 「官から民へ」と声高にさけばれて進められてきた民間委託は、多くの問題を引き起こし、民間委託すると住民サービスがよくなるという単純な議論は説得力を持たないものとなってきつつあります。

 総務省の指定管理者制度に関する調査結果でも、多くの指定取消事例が明らかにされていますし、続々と事故例や破綻事例が報道されています。PFIは事故や破綻だけでなく、特に公立病院で想定以上の赤字を出し、民間委託が必ずしもコスト削減につながらないことも示されてきています。「競争」を通じてはてしなく公共サービスを民営化・解体していく「市場化テスト」は、地方自治体の間に必ずしも経済界の期待する速度では広がっていません。「偽装請負」や「官製ワーキングプア」が広く知られるようになり、民間委託や「競争」によって自治体労働者の処遇を切り下げることの問題も見えやすくなっています。分野ごとにも、保育の民営化をめぐる訴訟の上級審での判断、相次ぐ民間管理のプールでの事故など、注目すべき動きも数多くあります。民間事業者の商機のために住民の人権保障が後退するという民間委託の正体は、ますます事実によって裏付けられるようになってきています。

 ところが経済界や政府は、次々と起きている破綻や失敗事例を受け止めて反省して民間委託の推進そのものを見直すのではなく、あくまで民間委託を推進しようとしています。とくに「窓口業務に関する総務省通知」(3月31日付)」は、市場化テスト法の法案審議の過程で明らかにされた窓口業務の民間委託の限界について、「住民基本台帳関係の窓口業務では、交付・不交付の決定や審査については、市町村職員自らが行う必要がある」としながら「予備的行為」を委託して「市町村職員による最終判断」を得ることは可能、などとしています。労働省告示37号(労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分基準の具体化、明確化についての考え方)からみて偽装請負にあたるおそれも大きいものです。

 自治労連全国弁護団は、いち早く公の施設の指定管理者制度、地方独立行政法人制度などの新しい法律を住民と自治体労働者の立場から批判してきました。総務省の研究会報告書については、2007年9月付で報告書に対する総括的な批判をまとめていますが、最近の新しい事態の進展の中で、改めて基本的な視点を提示する必要性があると考えられることから、この資料集に掲載することとしたものです。

 指定管理者制度、派遣労働の受入、市場化テストなどを含む広義の民間委託について、それが住民にどのような問題をもたらすかという視点から根本的に批判し、かつ、強行されるときには住民や自治体労働者への被害を最小限度にとどめる運動もあわせて進めていく上で、この批判意見書が活用されることを願っています。

「地方公共団体における民間委託の推進等に関する研究会」 (235 ダウンロード)