2.賃金・諸手当の改善にむけて

第1部 臨時・嘱託・非常勤職員の賃金・権利・労働条件

2.賃金・諸手当の改善にむけて

(1)自治体の非正規労働者の賃金・諸手当

1)自治体非正規労働者の賃金の現状

 特別職非常勤職員は報酬(自治法203条1項)が支給されますが、報酬額は職務に応じて、また高度の専門性や熟練性、経験年数などを加味して個々具体的に決められているのが一般的です。

 臨時職員の賃金は、正規職員とは切り離し、任命権者が条例、規則、規程、要綱で定め、月額制ではなく、日額又は時間給として統一単価による支給が一般的です。

 「正規職員」が、地公法第24条の「均衡の原則」によって一定の水準が確保されているのにたいし、「臨時・非常勤職員」の賃金水準は、その賃金決定が「正規職員」とはまったく異なった基準で行なわれています。多くの自治体では自治体財政や当局の裁量権にゆだねられているのが実態です。そして、一つの目安となっているのが「地域別最低賃金」水準や地域の民間パート賃金水準です。

 同時に、賃金形態も「正規職員」が月給制であるのにたいし、その多くが時間給・日給で分断されており賃金格差拡大にいっそう拍車がかかっています。また、月給制であっても報酬とみなされ、期限付き任用を根拠に、勤続をベースとして昇給する体系がなく、実態上何年働いても、低い賃金単価を押しつけられているのが現状です。

2)均等待遇の原則をかかげ、改善をすすめよう

 ILOは、「パートタイム労働に関する条約(175号条約)」、「勧告(182号)」で均等待遇の原則を明確にしています。EUなどの先進諸国では、パートの均等待遇が原則とされ、制度・実態がすすんでいます。

 また、「パート労働法」は、パートの賃金・ボーナス・退職金については、その就業実態、正職員との「均衡」等を考慮して定めるように努めることされていますが、現状ではほとんど実効性あるものになっていません。

 臨時職員の賃金決定基準について、かつて人事院給与局長は、公務員共闘代表との交渉の席で、「一般職員との均衡を考慮し、予算の範囲内で給与を支給する建て前からいって、一般職の25分の1(週休2日制の現在に換算すると20分の1)として算出した額を日額とする」と回答しました。

 また自治省も行政実例で、「臨時的任用の職員は、給与、勤務時間、その他の条件について、別個の条例で定めない限り、他の職員と同様にすべきである」(昭31、3、8自丁公発33号石川県総務部長宛公務員課長回答)と示しています。

 しかし、なんといっても全国の関連労働者のねばり強いたたかいによって、賃金・労働条件の改善は、国・自治体当局や、さまざまな法律・制度の規制をはねかえして、ひとつひとつ突破をはかってきたことが今日の前進を築いてきたのです。

 自治体の非正規・関連労働者の賃金を大幅改善をさせることは、地位向上のみならず、安上がりの「行革」路線や人減らし自治体リストラにストップをかける重要な課題として、いまや全ての自治体労働者がともにたたかわれる運動になっています。

3)賃金の底上げを、春闘、人勧闘争など、
全国の運動といっしょにすすめよう

 そもそもパートの「単価」は、「善くも悪くも」世間水準と深く結び付いていることは、わたしたちの実感ではないでしょうか。

 今日の公務パートの低賃金構造を根本的に打破するためには、みずからの大幅賃上げの闘いと、全国いっせいに闘われる春闘や、人事院勧告と闘う公務員のなかまといっしょになって、大きな運動につくりあげていくことが重要であることはいうまでもありません。

 特に近年は、全国一律最低賃金制度の確立(未確立)を求める運動や、すでにある地域最低賃金の抜本的引き上げ闘争、自治体キャラバンの取り組みなどとしっかり結合させて、底上げをはかる取り組みが活発になってきました。

 こうした運動とあわせて各自治体でのとりくみをすすめることが大切です。

(2)「基本賃金」の引き上げ、「経験加算」制度をめざそう

1)基本賃金の算定根拠の明確化、月給制・固定給への改善を

 多くの自治体では、臨時・非常勤・パート職員の賃金は、月給払いの形になってはいても実質は時間単価による時間給制または日給制となっています。パートだから安いまま据え置いてもよいということにはなりません。同じ職種ではたらく常勤公務員の月額の20分の1を最低の日額、その8時間分を最低の時間単価とするなど、根拠と目標を持って要求していきましょう。

 また、長期に継続雇用されているものについては、固定給(月額制)を実施させることが望ましいといえます。月給制は、次の利点があります。

  ○ 勤務日数の変動からくる不安定収入の解消

  ○ 定期昇給、人勧による給与改定(ベースアップ)をさせやすくなる

  ○ 時間短縮による月収低下をさせず、単価を引き上げさせることができる

  ○ 互助会などへの加入、福利厚生の正規に準じた措置をさせやすくする

 各自治体によって基本賃金はさまざまです。大切なことは、労使合意で制度をきちんと確立しておくことでしょう。そうすれば、改善をさせていく確実な根拠やすじみちが敷かれることになります。

 たとえば、人事院勧告による給与改定が公務員に行われる際にも、臨職・非常勤職員の単価引き上げ要求をしなければなりませんが、上記のように、賃金の基本を公務員の昇給制度の一部にでも格付けておくことで、ベースアップや定期昇給獲得も容易となります。

2)昇給制度の確立を

 賃金決定の均等待遇や「同一労働同一賃金」の原則をふまえるなら、長期に継続的に勤続することが求められるような業務に働く非正規労働者には、経験による加算制度がなければ、正規公務員との格差は年々拡大します。

 ベテランの非正規労働者が新人の正規職員に業務を教えるような状況もある中で、いわゆる昇給制度とか、経験加算制度などが必要です。全国では、長年の運動の成果とそして、不十分とはいえ経験加算の制度を勝ち取っているケースが拡大しています。粘り強く要求していきましょう。

(3)通勤手当は、実費支として常識

1)支給を認めざるを得なくなった当局

通勤手当は、地方自治法で非常勤に対しては支給できないと、ながねん当局は主張してきました。(昭和33年8月19日付で人事院は「非常勤に支給される通勤手当相当の給与に対する所得税は非課税扱いとする」通知を出していたぐらいなのですが)。

 全国各地の運動の実績によって、いまではかなりの自治体で臨職・非常勤への通勤手当は常識となっています。そうした反映もあって、旧自治省は96年3月13日付で各自治体に非常勤職員の通勤費を実費弁償として支給してもよい、との通知をしました。

 労働時間の多少にかかわらず全て支給対象とするものです。いまだ実施していないところでは実施を求めるとりくみをすすめましょう。

2)賃金部分と切り離して支給させましょう

実費弁償とは、基本報酬や諸手当とは別に切り離されたもので、必要上かかった費用を弁償するというものです。したがって自治省は、通勤費は通常の賃金とは別に支払うものとしたわけです。ところで通勤費は非課税(現在は10万円を限度額)扱いなので、賃金(報酬)部分と切り離す必要があります。

 毎月の給料支払明細書においても明記させましょう。通勤費が年間何万円にも及ぶ人は、払わなくてよい多額の税金をとられてしまいます。注意しましょう。(これまで不当に課税されてきた人に対し、本来なら使用者の責任で還付請求ができるようにさかのぼり措置をするべきでしょう)

3)時給の見直しを

 これまで通勤手当は支給できないことを理由に、臨時・非常勤の時給のなかに名目的に組み込んで賃金として支払ってきたところがあります。しかし、その賃金がすでに生活給となっており、従来の賃金から通勤費を差し引きようなことは絶対にさせないことです。むしろ費用弁償だというのですから、従来の賃金とは別に実費を支給するように、改善と見直しを要求していきましょう。

4)支給額上限をなくし、格差をなくそう

 パートを近在から採用するケースが多いなかで、遠距離通勤を余儀なくされている人への支給額が、実費よりずっと低く削られていることがよくあります。実費弁償であるというならば、不合理な上限をなくし、文字通り実費全額を出すのが道理というものです。少なくとも正規職員の通勤手当規程に準じるようこの際是正させましょう。

(4)一時金(ボーナス)

一時金の支給を求めよう …ボーナスも出さへん市が、どこにあるねん?

 正規職員には、期末・勤勉手当としてボーナスが支給されています。しかし、臨職・非常勤職員にはこの制度が適用されていません。しかし、名目は「○○報酬」「特別報奨金」などいろいろですが、たたかいによって実質的には一時金制度を各地で実現しています。

 大阪でもかつては「ボーナス出す市がどこにあるねん?」と、各当局は取り合おうともしませんでした。でも大阪自治労連として、長年の統一交渉・闘争の積み上げ、やがて逆転して「ボーナスも出さへん市がどこにあるねん?」と、逆に組合が詰めよるまでになり、いまでは一時金を年間4月以上獲得している自治体が多くあります。

「諸手当の支給は法律で禁じられている」って本当なの?

 当局はよく地方自治法203条をタテにとって、非常勤には「報酬しか認めていない」ので、一時金・退職金を含む諸手当の支払は禁じられているなどと宣伝しています。しかし、これは明らかに誤っています。

 現に、非常勤に残業させた場合は“時間外手当”を支払わなければならず、それを自治法で諸手当の支給は禁じられているので払わないという理屈は、労基法第37条に反するもので通用しません。また旧自治省は「通勤手当」も出せるとした通達を出しました。

 さらに、「報酬」とは、賃金以外のものを特別にさしたものでなく、民法や労基法でいう「賃金」と全く同じ意味にあたるものです。(労基法11条では、賃金の定義について「名称のいかんを問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう」と定めています)。一時金・退職金の法的性質は賃金の後払いと解されます。諸手当も賃金です。

 自治法203条は、今日のような常用に近い非常勤に対して予定されたものではなく、議会の議員、委員会の委員といった特別職に対する報酬について規定していると、解されています。一般の非常勤職員にとっては、自治法203条にいう「報酬」とは、あくまで労基法上の「賃金」ですから、むしろ諸手当・一時金・退職金もすべて賃金である「報酬」に含めて、支払われるように規定にうたうならば、何ら法に反する問題ではないというべきです。

(5)住宅手当など諸手当の支給を

 いまでは多くの自治体非正規職員にさまざまな手当支給が実現するようになっています。

 扶養手当を人勧に準拠して支給させ、住宅手当も独自に支給制度をかちとっています。夜間勤務者や土日勤務に対して、特別手当や時給割増し加算を支給させるなど、勤務条件に対する処遇の改善をきめ細かく勝ち取っています。

 自治労連の総務省交渉の際にも、総務省がどんなに公式発言として「手当は認められない」と言おうとも、全国の実施状況を示し「すべて違法状況として否定するのか」と追及しますと、「各地方の団体の判断によって行っていること」と、言わざるを得なくなっています。

 制度の壁を打ち破る全国のたたかいの経験をもっともっと広げて、やがて産別の大きな運動によって法制度に明確化させる「展望の時代」をめざしましょう。

(6)退職金の実現をすすめよう

1)退職金支給を求めよう

 多くの自治体当局は、「退職手当」は継続勤務でない臨職・非常勤には支払われるべきでないと主張しています。しかし任用の形式はともかく、実質的に長期にわたって雇用関係が継続している場合には当然支払われるべきものです。事実がものをいうわけでしょう。全国各地で、名目は「退職慰労金」「退職報償金」などいろいろ表現されていますが、実質的に退職金制度を実現しています。法的な性格としては、一時金も退職金も賃金の後払いと解されています。

 いまや正規に近い勤務実態の公務パート労働者が増えているなかで、退職金支給はさらに全国に拡大されていくでしょう。積極的に実現を求めていきましょう。

「常勤の実態に近いものには退職手当を支給する」と答弁

 旧自治省は、「実態が常勤と近い方は、退職手当等につきましては常勤職員と同じ扱いをする。具体的には、常勤の勤務時間以上勤務した日が月18日以上ある月が6ヵ月以上を超える(当初12ヵ月という答弁を訂正させた点に注目を)方には退職手当を支給する」(日本共産党吉川春子議員の質問による自治省公務員部長の回答/平成8・5・22第136国会参議院地方分権特別委員会)と答弁しています。

2)中小企業退職金共済制度(中退共)および特定退職金共済制度の活用を

 退職手当制度から除外されている不安定雇用の自治体の非正規労働者にとって、制度確立をめざしつつも、少しでも要求前進させていくために、以下のような既存の制度活用も大いに研究をして、実現させていきましょう。

中小企業退職金共済制度(中退共)とは
特定退職金共済制度とは

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