1.賃金・労働条件はどのようにきまるの?

第1部 臨時・嘱託・非常勤職員の賃金・権利・労働条件

1.賃金・労働条件はどのようにきまるの?

 自治体に働く非正規職員は、公務員なの? 民間の労働者なの?

 正規公務員ではない、パートだからと言われると、公務員に適用される制度や処遇からも外されているように思えたりもします。

 しかし、非正規労働者も当たり前な労働者ですし、さまざまな点で正規公務員並みの扱いをしなければならない制度がたくさんあり、同時に民間労働者と同様な権利や制度保障が適用されているのです。

 以下、賃金・労働条件の改善をすすめる上で、大切な基本的な原則を知っておきましょう。

(1)労働基準法(労基法)が全面適用されます

 憲法第25条では「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と、すべての国民の生存権を保障しています。また、第27条では「全て国民は勤労の権利を有し、義務を負う。賃金、就業時間、休息その他の労働条件に関する基準は、法律でこれを定める」と勤労権を明記し、「労働基準法」を定めました。

 この労基法の第1条では、労働条件について「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすものでなければならない。・・・その向上を図るように勤めなければならない。」としています。そして、労基法では、賃金の原則や支払方法、労働時間や時間外手当の支給、有給休暇の制度、雇用契約や解雇の制限など働くルールについての最低基準を定めています。

 これは、すべての労働者を前提にした法律ですから、自治体・非正規労働者も適用されることは当然です。そもそもパートとは、身分的区分をいうのではなく、勤務時間が常勤の労働者より短い労働者のことをいうのですから、この点を除けば常勤の労働者と同じです。

 また、労働基準法は「同一労働、同一賃金」の原則をうたっています(第4条)。およそ世界の大勢も、正規とパートの差別撤廃を基準として確立しています。自治体の非正規職員にも、正規職員と同一の労働に従事しているのであれば、当然、勤務時間に比例した、賃金を支給するべきです。その他の手当や福利厚生部分も実態に合わせて同一の扱いをすべきです。

「最低賃金」は適用される

また、事業主は最低賃金法に基づいて定められた地域別・産業別の最低賃金以上の賃金を支払わなければなりません。これは、パート・アルバイトなどの雇用形態にかかわらず、また性、国籍に差別なく、すべての労働者に適用されます。

最低賃金額は、イギリスなどの先進諸外国が1000円を超えているように、労働者全体の運動で大幅引き上げをすすめることが自治体・非正規労働者にとっても大変重要です。

 ◆労基法に違反すると使用者は処罰されます
 他の労働法規もそうですが、労基法も自然に労働者を守ってくれるものではありません。きちんと要求し、守らない相手にはキゼンとした姿勢をとることが大切です。その際、権利を要求・行使したからといっても、使用者が労働者をクビにしたり、不利益な扱いをすることは法律が禁じています。使用者が労基法の定めに違反し、監督署からの是正勧告を無視するような悪質な場合は、刑事処罰が課せられます。

(2)賃金・労働条件は、労使交渉・労働運動で改善をすすめる

 労働基準法では、労働条件を憲法にもとづき人間らしい暮らしを保障するものとして、たえず向上するよう労使に努力責任があるとしています。そのために労働組合法では、労使対等の立場で労使交渉を行うことを保障しており、これは、自治体の非正規職員でも同様です。

 たとえば、労働基準法や労災補償制度などは、あなたの雇用形態などにかかわらず原則的に適用されます。また社会保険、雇用保険などは勤務時間によって、適用対象が決められています。(詳しい解説はその項目を読んで下さい)

 そして、ボーナス・退職金・諸手当などは、法律や制度で支給することを定めていないからといって、出せないとか要求できない、というものではありません。

 よく当局側は「非常勤には報酬以外には手当(一時金や退職手当など)を出すことは地方自治法203条で禁じられている」として、認めないことがあります。でも、労働組合の運動によって全国、各地で一時金や退職金制度を実現させています。先進例がこの手引きに沢山掲載しています。

 賃金・労働条件の改善は、法律などで上から保障されるものでなく、働くものが団結し労働組合の運動で改善させるよう、ねばり強く要求し制度や規程を変えていくことが大切です。

(3)賃金・労働条件を決める原則は・・正規労働者との「均等待遇」

 非正規職員は、正規職員とほとんど同じ仕事、同じくらいの労働時間であっても、賃金は数分の一という劣悪さ、加えて一時金や退職金もない、労働時間は(年休・特別休暇・諸権利休暇なども考慮に入れると)正規に限りなく近く、総労働時間で計算した賃金の格差は驚くほど大きいのです。「名のみのパート」「疑似パート」といわれるゆえんです。

均等待遇は、国際的な原則

 国連人権規約では賃金上の差別は人権差別であるとしています。国際的な労働基準を定めているILO(国際労働機構)は、1958年ILO111号「雇用と職業における平等」条約、1994年ILO総会で採択された「パートタイム労働に関する条約(175号条約)」と、各国への「勧告(182号)」で、公共部門・民間部門を問わず、「正規職員と同一の労働に従事しているのであれば、勤務時間に比例した、同一の賃金が支給されるべきである」ことの「均等待遇」の原則を国際的に確立しました。

 これは「すべてのパートタイム労働者に適用される」ものとされ、もちろん期間の定めのある臨時的雇用、季節的アルバイトも含めて、各国が次のような基準を達成するよう求めています。しかし、日本政府はこれを今日まで見送っており、未批准はわずか11ヵ国のみとなっています。

 国内法には『パート労働法』や同法にもとづく『パート労働指針』があります。いずれも正規労働者との均衡を考慮するよう使用者側の努力をうながしていますが、強制力がないため実効性が事実上失われています。

 そんな中でも、契約スチュワーデス問題や長野県の丸子警報器事件のように、不安定雇用の解消と均等待遇の実現を求める闘いでは、経営者団体が大衝撃を受けるほどの勝利をつぎつぎとおさめています。

 不安定雇用労働者のたたかいは今日大きな前進をみせて、自治体の仲間に運動が力強くひろがっています。『処遇と地位の向上、自治体職場で良い仕事がしたい』 そんな公務パートの誇りを胸に、全労連・自治労連の仲間といっしょにがんばりましょう。

「任期付短時間勤務職員制度」の問題点と課題

 「任期付短時間勤務職員制度」の導入が、近年拡大されてきました。この制度の最大の問題点は、正規職員の本来業務に、低い処遇でしかも3年任期などの短期間任用で非正規職員を配置するということです。

 すでに導入されているところでは、たたかいによって3年任期(再任用を妨げない制度なので)のたびに事実上継続雇用をかちとっています。また一般職であることから、休暇制度、一時金、福利厚生面などで、非常勤のときよりも処遇を改善させているところがあります。

 しかし一方では、非常勤では確保されていた退職金や生活給の手当などが、「任期付短時間」に移行したことで、処遇が下げられる場合もでています。「任期付短時間」については、こうした処遇の維持・改善と、正規との均等待遇に近づける制度設計を強く求めるとりくみが大切です。とりわけ、不安定雇用をそのまま制度として持ち込んだ「任期付」ですから、必ず継続雇用を実質的に確保させることを厳格に求めることが重要となります。

真に均等待遇を保障する「短時間公務員制度」をめざして

 私たちは、たとえ勤務は常勤職員より短時間であっても、均等待遇こそが大原則という、いまや国際的常識を公務の職場において実現することをめざしています。このことは民間も公務もまったく同じことであり、ともにその実現をめざして運動を進めてきました。

 そうした点では、私たち自治体の非正規職員にとって、「短時間公務員制度」の法的確立が目標となっています。

 『期限の定めのない雇用契約』、そして『賃金も権利も福利厚生も均等付与を保障する』、これが自治体の非正規職員の正しいあり方といえます。

 (1) パートタイム労働者とは
 “パート[part]”はもともと“全体の一部”という言葉ですから、パートタイム労働はフルタイムに対して“部分的な時間”での働き方、つまり短時間労働という意味になります。
パートタイム労働者(短時間労働者)は一般の企業では、パート、アルバイト、嘱託、臨時従業員、定時社員、準社員など、いろいろな呼び方をされており、また実際の仕事や処遇は様々です。
パートタイム労働法では、その対象となる短時間労働者を「一週間の所定労働時間が同じ事業所の通常の労働者(正社員)よりも短い労働者」と定義しており、名称は問いません。

(2) パートタイム労働者に適用される法令
 パートタイムやフルタイムにかかわらず、またその名称にかかわらず、労働者には労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労災保険法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、雇用保険法等の労働者保護に関する法令が適用され、その権利は保障されています。

*パートタイム労働法 ~パートタイム労働者の福祉の増進を図る~
 「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム労働法)」と同法に基づく〈パートタイム労働指針〉では、事業主が行なうべきパートタイム労働者の適正な労働条件の確保などの雇用管理の改善を図るための措置について定めています。パートタイム労働者の就業の実態、正社員との均衡を考慮した処遇が求められています。


← はじめに  |  2.賃金・諸手当の改善にむけて →


PAGETOP
Copyright © 日本自治体労働組合総連合 All Rights Reserved.