自治体職場で「改正パート労働法」(08/4/1施行)を活用するポイント(案)

07/10/04 関連対策委員会

はじめに

 改正パート労働法は差別禁止となる条件が極めて厳しいなど様々な問題点を持っていますが、他方、「短時間労働者の待遇は必ずしもその働きに見合ったものとなっていない」状況を改善し、「通常の労働者との均衡の取れた待遇」を確保することなどを目的としており、公務職場でも積極的に活用できる部分を持っています(パート労働法そのものは地方公務員を適用除外としていますが、自治体でも法の趣旨がふまえられなければならないことは総務省も認めています)。
 法によれば、(1)業務内容や責任が同じで、(2)(その1)非正規に異動等がなくても、同職種の正規労働者にも(長期的にはその一部が管理職になるとしても一定の期間は)異動・転勤がない、あるいは(その2)一定期間では正規も非正規も同様に異動する等の場合には、非正規の賃金について、決定方式を正規と同一にすることが必要になりますので、同一賃金表への格付け(労働時間による案分支給)と定期昇給制度、正規職員と同率の地域手当・一時金の支給が求められます。保育、病院、給食、清掃などの専門職や現業職の非正規の場合にはこうした条件に合致する場合も少なくありません。
 また、(1)(2)の条件に合致しない非正規労働者についても、職務が同じなのに正規職員と比べて低すぎる賃金単価、何年働いても一律の時給などの状態は許されず、職務や経験等に見合った大幅賃上げと定期昇給制度、一時金支給等が必要です。
 その他、教育訓練や福利厚生施設でも活用できる内容になっています。
 改正パート労働法をしっかり学び、活用し、待遇改善に大いに役立てましょう。

1.「改正法」の問題点

 07年5月27日、「改正パート労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)」が成立しました。
 「改正法」は、正社員と同視できる短時間労働者(その条件は(1)職務の内容・責任の程度が同じ、(2)将来にわたって異動・転勤など人材活用の仕組みが同じ、(3)期間の定めのない雇用契約)に限って差別待遇を禁止するとし、圧倒的多数の短時間労働者については「職務の同一性」「契約期間の定めの有無」「人材活用の仕組み」に応じて分類し「均衡処遇」することを「努力義務」にしています。
 しかし、委員会の審議を通じても、(1)差別禁止となる条件が極めて厳しく、正社員と同視できる短時間労働者の存在そのものが疑問視されている、(2)「今回の法律で禁止対象になる者は現在の法律でも公序良俗違反になりかねない」(厚生労働省)、(3)正社員と同じかどうか第一義的に判断するのは使用者であり、処遇に疑問を持った短時間労働者が裁判に訴えた場合での挙証責任は労働者側にあるとされている、(4)短時間労働者のなかに区分を設け待遇に違いを設けることにより新たな差別・格差をつくり固定化してしまう、(5)喫緊の課題である非正規労働者全体の処遇改善、均等待遇実現には結びつかないものである、などの重大な問題が明らかとなりました。

2.「パート労働法」と自治体非正規労働者

 以上の通り、「改正法」にはたいへん問題が多いのですが、そもそも今回の「改正」は、「短時間労働者の待遇は必ずしもその働きに見合ったものとなっていない」状況を改善し、「通常の労働者との均衡の取れた待遇」を確保することなどを目的としていました。
 そのことは、「改正法」第1条「法の目的」でも「短時間労働者について、その適正な労働条件の確保、雇用管理の改善、通常の労働者への転換の推進、職業能力の開発及び向上等に関する措置等を講ずることにより、通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等を図ることを通じて短時間労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、もってその福祉の増進を図り、あわせて経済及び社会の発展に寄与することを目的とする。」と明記されており、このこと自身は積極的な意義を持っています。
 また、自治体は、「改正法」第4条で「短時間労働者の福祉の増進を図るために必要な施策の推進努力」を義務づけられていることからも、パート労働法を推進すべき立場にあるのであって、自ら雇用する短時間労働者の福祉の増進についても消極的であってはならず、「改正法」の趣旨をふまえた積極的な対応こそが求められています。
 しかも、「改正法」は第43条(旧32条)によって、地方公務員などを適用除外としていますが、それは、地方自治体においてはパート労働法が定める内容を下回り、逸脱してもいいということではもちろんなく、地公法や各自治体の条例において、「改正法」の趣旨をふまえた適正な処遇を確保しなければならないということであり、そのことは総務省も認めています。
 したがって、各自治体にたいし、「改正法」をふまえ、非正規労働者の待遇を改善していくよう強く求めていく必要があり、当局にも改善していく責任があります。

改正法の提案理由(07年5月10日参議院厚労委員会 柳澤厚生労働大臣による趣旨説明)
「近年、就業形態が多様化する中で、短時間労働者については、その数の増加とともにその果たす役割の重要性も増大してきておりますが、短時間労働者の待遇は必ずしもその働きに見合ったものとなっていない状況にあります。短時間労働者一人一人が安心し納得して働くことを可能とし、ひいては我が国の経済社会の活力を維持していくためには、多様な働き方に応じた公正な待遇を実現することが極めて重要な課題となっております。
 こうした状況を踏まえ、政府といたしましては、短時間労働者について、通常の労働者との均衡の取れた待遇の確保等を図り、その有する能力を一層有効に発揮することができる雇用環境を整備するため、本法律案を提出した次第であります。」
非正規労働者の待遇は働きに見合ったものになっていない(5月17日参議院厚生労働委員会での大谷雇用均等局長)
「提案理由説明の中の、その短時間労働者の待遇が必ずしもその働きに見合ったものとなっていないということでありますけれども、これは短時間労働者の待遇につきましては、例えば職務と人材活用の仕組みが通常の労働者とほとんど同じというパートの方について、この賃金の決定方法について調べた場合に、正社員と同じであると答えた企業の割合はまだ一四・四%にとどまっておりまして、むしろその水準が七割程度以下と回答している企業が三五・六%ある。言わば仕事もそれからそういう人事や何かも同じなのに七割以下の水準だと、こういう方が、事業所が三五%ある。こういった実態を踏まえますと、言わばその待遇は働きに見合ったものではないと、こういったことが見て取れるというふうに考えております。」
パート労働法の考え方は公務員も潜脱してはいけない(07年4月11日、衆議院厚生労働委員会における総務省上田公務員部長の答弁)
「今回のパート労働法、公務員は別になっているわけですが、短時間で働く方の待遇が不当に低いものとならないようにしようという考え方、これについては、公務員が別法だからといってそれを潜脱するというたぐいのものではないと思います。ただ、法体系としては、公務員の場合には勤務条件法定主義ということで、法律または自治体の立法である条例によってそれを保護するということになっておりますので、例えば東京都であれば、東京都の条例のレベルで適正な処遇を確保するようにすべきものであるというふうに考えます。」
公務は適用除外「改正」パート労働法第32条「この法律は、国家公務員及び地方公務員並びに船員職業安定法第6条第1項に規定する船員については、適用しない。」

3.「改正」パート労働法のしくみと自治体における活用

 「改正法」は、義務規定はわずかで多くの規程が努力規程であるため、民間企業においてはその有効性が疑問視されています。しかし自治体においては、努力規定条項であっても、当局に対してその実現を迫る有効な規程となることから、大いに活用し、待遇改善に結びつけましょう。
 以下、「改正法」の主要条文に沿って説明します。

1.労働条件の文書交付

(1)法の仕組み
 労基法第15条1項に定められたもの以外にも、昇給の有無、退職手当の有無、賞与の有無について、(原則的に文書で)明示・交付しなければなりません。(6条)

労基法第15条1項に定められたものとは、労働基準法施行規則第5条に掲げられた以下の項目
 1.労働契約の期間に関する事項
 1の2.就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
 2.始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
 3.賃金(退職手当及び第5号に規定する賃金を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
 4.退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
 4の2.退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
 5.臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及び第8条各号に掲げる賃金並びに最低賃金額に関する事項
 6.労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
 7.安全及び衛生に関する事項
 8.職業訓練に関する事項
 9.災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
 10.表彰及び制裁に関する事項
 11.休職に関する事項

(2)活用
 以上の点については、文書で一人ひとりに交付させるよう要求しましょう。

2.賃金等の差別的取り扱いの禁止

(1)法の仕組み
 「改正法」は短時間労働者を(1)業務の内容およびその責任の程度(以下、「職務の内容」)、(2)異動・転勤など人材活用の仕組み、(3)雇用契約の期間、の3点から通常の正社員と比較し、差別禁止、均衡処遇などを課しています。
 第1に、上記の(1)が通常の正社員と同一で、(2)についても慣行その他の事情から、退職するまでの全期間において同一と見込まれ、(3)が期間の定めのない短時間労働者を「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」と定義し、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的取り扱いをしてはならない、としています。(8条1項)

「全期間」とは、採用時点では補助的な仕事でスタートした非正規労働者でも、経験をつみ、途中から正社員と同視できる状況になり、その後、退職までの将来にわたってそうした同視できる状況が慣行等から続くと見込まれる場合をいいます。
(「期間の考え方でありますけれども、職務の内容あるいは人材の活用の仕方が同じであっても、それがごく一期間にすぎなかった、こういうことであれば、それは同一とはなかなかみなせないということで、今回、その期間という考え方が強調されるわけでありますが、それにつきましても、例えば、採用時点で補助的な仕事でスタートされた方が、その経験を積んで、これはもう正社員と同視すべき職務内容あるいは人材の活用レベルになったということであれば、その時点からやはりカウントしていくということになりますので、その全期間という意味は、やはりそういうことで、同視すべき社員については今の考え方が今回の法案で盛り込まれたというところでございます。(070404衆議院厚生労働委員会大谷政府参考人)」)
期間の定めのない労働契約には、反復して更新されることによって期間の定めのない労働契約と同視することが社会通念上相当と認められる期間の定めのある労働契約を含むものとする。(8条第2項)

 第2に、上記の(1)が通常の正社員と同一で、慣行その他の事情から(2)も一定の期間においては同一と見込まれる場合は、通常の労働者と同一の方法により賃金を決定する努力義務を課しています。(9条2項)
 第3に、その他の場合であっても、職務の内容、成果、意欲、能力又は経験等を勘案して賃金を決定する努力義務を課しています。(9条1項)

「一定の期間」とは、「長期的な人材活用の仕組みあるいは運用等が同じであるかどうかを見るための期間であります。そういう意味で、通常の労働者とパート労働者について、人事異動などの態様を比較して、その有無や範囲が同じかどうか判断できる程度の期間がなければならない(070404衆議院厚生労働委員会大谷政府参考人)」
 9条第1項の職務内容等を勘案して決定する努力義務のある賃金とは基本給や調整額、超過勤務手当、一時金などであり、(1)退職手当、(2)通勤手当、(3)家族手当、(4)住宅手当など職務内容と密接な関連を有しない手当は9条第1項から除外されています(「施行規則」)。ただし「短時間労働者の雇用管理改善指針(パート労働指針)」でそれらについても「就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮して定めるように努めるものとする」とされています。
 また、5月17日の参議院厚生労働委員会において大谷局長は「この通勤手当につきましては、かなりの事業所でもいろんな形で取り組んでいただいているという実態もありますので、今回は法律で一律の措置を求めるというふうには至りませんでしたが、やはり今後の課題としましては、これは最も次の有力な項目として、今後ともこの通勤手当の取扱いについては検討を続けるべきものと考えております。」
意欲の評価は事業主の主観ではなく客観的基準が必要
 4/11大谷局長答弁「短時間労働者の意欲等を勘案して決定することとしておりますが、実際に勘案するに際しまして、事業主の主観に基づくものではなく、総合的かつ客観的な判断がなされるべきものであると考えております。その評価の要素あるいは基準等について客観的な説明ができるということが求められているものと考えます。
 例えば、あるスーパーで、短時間労働者が遅刻、欠勤がなく勤続したという場合に、当該労働者の意欲を勘案して、精勤、皆勤の手当を支給するといったことが想定されるのではなかろうかと思います。」

(2)活用
 義務規程となっている第1については、民間企業でも対象となる短時間労働者が存在するのかが議論になりましたが、自治体に働く非正規労働者においても、期間の定めがない、退職までの全期間において人材活用の仕組みが同じという条件をクリアーすることは困難と思われます。
 しかし、保育、病院、給食、清掃などの専門職や現業職においては、業務内容や責任が同じ場合も少なくありませんし、比較すべき正規労働者も(長期的にはその一部が管理職になるとしても一定の期間は)異動・転勤などはあまりありません。したがってこの場合には「9条2項」に該当し、「通常の労働者と同一の方法により賃金を決定する努力義務」が生じるのであり、同じ賃金表を使うなど賃金の決定方式を同一にすることが必要になります。
 この点を活用し、同一賃金表への格付け(労働時間による案分支給)と定期昇給制度、正規職員と同率の地域手当・一時金の支給を求めることが必要です。
 また、それ以外の非正規労働者についても、職務の内容、成果、意欲、能力又は経験等を勘案して賃金を決定する努力義務を課しているのですから、職務が同じなのに正規職員と比べて低すぎる賃金単価、何年働いても一律の時給などの状態は許されません。
 非正規労働者が担っている職務の内容や成果、意欲、能力、経験を勘案した大幅賃上げと定期昇給制度、一時金支給などを強く要求することが必要です。
 通勤手当や退職手当については法定化されませんでしたが、「指針」なども活用して引き続き取り組みを強めましょう。

3.教育訓練

(1)法の仕組み
 事業主は、通常の労働者に対して実施されている、職務遂行に必要な能力を付与するための教育訓練については、職務内容が同一の短時間労働者にも実施しなければなりません。(10条1項)
 その他の教育訓練についても、短時間労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力及び経験等に応じて、実施するように努めなければなりません。(10条2項)
(2)活用
 10条は職務(業務内容と責任)が同じ場合には雇用契約の期間等に関わらず、同一の研修を実施しなければならないとしており、職務等が違う場合でも、それらに応じて実施せよとしています。
 職務遂行に関わる研修が、非正規職員には行なわれていない場合が少なくありませんが、この条項をもとに大いに改善させる必要があります。

4.福利厚生施設

(1)法の仕組み
 事業主は、通常の労働者が使える福利厚生施設(給食施設、休憩室、更衣室)については、短時間労働者に対しても、利用の機会を与えるように配慮しなければならないとしています。(11条)

07年5月17日 参議院厚生労働委員会での大谷局長答弁
「配慮義務という考え方であれば、施設に余裕があるのに使わせないとか、そういうようなことはこれはあり得ないというところはもう法律ではっきりしているわけでありますから、そのスペースがあるのに使わせないというような事例があったような場合に、これは、もしそういう事例があって事業主との交渉が成り立たなければ、これは労働局に御相談いただければこれは配慮が必要であるという判断が下されて、必要な指導まで勧告等があると思うわけでありますが。
 一方で、配慮ということの限界というのは、じゃ全員収める場がないので増築しなければならないといった場合に、そこが企業の経営上無理だったということを言った場合に、それが配慮義務としての限界かどうかと、こういったところで表れてくると思いますが、少なくとも現行の指針よりは前進しているものと考えております。」
 また「短時間労働者の雇用管理改善指針」では、上記の3施設だけでなく、「医療、教養、文化、体育、レク等を目的とした福利厚生施設の利用」や、慶弔制度などが想定される「事業主が行なうその他の福利厚生の措置」についても「就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮した取扱いをするように(事業主は)努めるもの」とされています。

(2)活用
 更衣室やロッカーの使用などが正規職員と平等になっていない場合は強く要求しましょう。政府答弁にあるとおり、スペースがあるのに使用させないような場合は大問題であり、直ちに改善させましょう。
 また、「指針」を活用し、慶弔休暇などの均衡取扱いにむけた当局の努力を強く要求することも大事です。

5.通常の労働者への転換

(1)法の仕組み
 事業主は、通常の労働者への転換を推進するため、短時間労働者にたいし、次のいずれかの措置を講じなければならない。
1.通常の労働者の募集を行う場合、募集要項等を短時間労働者に周知すること。
2.通常の労働者の配置を新たに行う場合、短時間労働者に当該配置の希望を申し出る機会を与えること。
3.一定の資格を有する短時間労働者を対象とした通常の労働者への転換のための試験制度を設けること。(12条1項)
 国は、通常の労働者への転換を推進するため、前項各号に掲げる措置を講ずる事業主に対する援助等必要な措置を講ずるように努めるものとする。(12条2項)

(2)活用
 12条は1~3号のうちのいずれかの措置を講じればよく、第1号が「募集要項等の周知」であるため、結果として法的な効果は疑問視されます。
 しかし、第3号として「一定の資格を有する短時間労働者を対象とした通常の労働者への転換のための試験制度を設けること」が明記されていることは重要であり、専門職については転換試験制度を設けること、そして希望者の正規職員化を強く要求していきましょう。
 しかも第2項では、そうした試験制度をとることにたいし、国として必要な措置をとることなど援助すべきことになっています。

6.フルタイム労働者

 「パート労働法」は短時間労働者を対象とするものですが、指針では、フルタイムの非正規労働者の処遇についても法の趣旨を活かし改善されるべきことがうたわれています。
 「改正法」による改善を短時間労働者に限定させないようにしましょう。


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