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3. 身近な病院がなくなる?

 

 山間地や農村部など人口密度の低い地域では、民間病院の経営が成り立たず、自治体病院が地域医療の重要な役割をにない、そこに暮らす住民の命と健康にとって欠かせない存在になっています。
 しかしいま、赤字や医師不足の問題から、こうした「わが町・わが村の病院」が閉鎖されたり、診療所に縮小されるといった計画が全国で行われようとしています。
 総務省は2004年5月から「地域医療の確保と自治体病院のあり方等に関する検討会」を開催し、同年11月にその報告書をまとめました。その内容は「サテライト構想」ともいわれ、広域の医療圏の中で1つの病院を「基幹病院」として充実させ、その周辺の病院は機能を縮小し「後方支援病院」にしたり、診療所にするというものです。
 総務省は、これによって医師不足や経営赤字が解消されるかのようにいっています。しかし先行事例の山形県置賜地域でも医師確保ができず「成功」したとはいえないのが現状です。
 また、総務省は「住民のための計画であること」を題目として掲げてはいるものの、現実には県主導による行政間の密室協議で計画が進行し、そこで決まったことを住民に「理解を求める」ようなやり方ですすめられる危険性も否定できません。
 病院の赤字や医師不足などをどう乗り越えて、地域の自治体病院を守っていくのか。それは住民を中心に医療関係者なども加わり、「地域づくり」という視点でじっくりと話し合ってすすめていくべきであり、行政側が一方的にすすめるべきではありません。

「若い人は安心して暮らせません」

青森県鯵ヶ沢町に住む女性(72歳)

 わが町ではお産もできず、小児科もなく若い人は安心して暮らせません。赤字だから縮小するのではなく、住民にとって必要な医療の安心を確保するのが首長の使命ではないのでしょうか。

「生活者に視点を向けた医療を」

健生五所川原診療所 所長・津川信彦医師

 自治体病院ベッド削減の冷たい姿勢に日常の地域医療を守る診療所の医師もまた困惑している。何としても生活者の方に視点を向けてほしい。医療は生活者と医療者のハーモニーであるはずだから。

◎人口の7割にのぼる3万筆の署名を無視して事実上の「廃止」を強行
 

 釜石市民病院は、高齢化のすすむこの地域で充実した在宅診療を行うなど、地域医療を守るとりでとしての役割を果たしてきましたが、2004年9月に釜石市・岩手県医療局などが突然、県立釜石病院との「統合」・迷上の市民病院の廃止案を発表しました。これに対し「市民病院の存続。充実強化を」の署名が釜石市人口の7割にあたる3万筆以上も集められました。
 しかし市・県は計画を撤回せず、その後市民病院の医師が当局に対する失望と不信から次々にやめていきました。また市中心部から病院がなくなることによる雇用、地域経済への影響も危惧されています。
 「地域医療の充実へ向けて」と称して強行された「統合」は、県立釜石病院の満床・大混雑をまねき、救急医療の不安を拡大、地域医療の破壊だけをもたらそうとしています。

「早く死んでしまえ…といわれている様な気がします」

岩手県釜石市に住む女性(75歳)

 市の東側地域に住んでいる高齢者です。戦争中は青春もなく、ただ「勝つまで、勝つまで」を合言葉に生き、戦後は釜石の復興に力を注いできた人々が今こそ病院を必要とする時、市民病院が姿を消すなんて情けないことです。私たちのような高齢者は早く死んでしまえ・・・といわれている様な気がします。何とか病院をなくさないで下さい。


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