総務省・厚労省へ要請、全国自治体病院協議会・日本看護協会と懇談
 1月30日、前日の「いのちと地域を守る学習・意思統一集会」で学び、交流した全国各地のとりくみや職場の課題を持ち寄り、医療関係府省・団体への要請・懇談行動にとりくみました。

総務省 公立病院改革ガイドラインはあくまで、技術的な助言であり地域の実情に合わせた医療供給体制を構築すべき
 自治労連からは13人が参加し、総務省自治財政局からは公立病院担当、地域医療担当等が対応しました。 冒頭、福島副委員長が日ごろから地方自治発展のために尽力されていることに敬意を表し、自治体病院の役割がますます重要であるとして、日々現場で働いている職員の率直な声を聞いていただきたいとして協議に入りました。

要請項目

1.自治体病院の事業に対する地方交付税措置を減額せず拡充をはかること。また、自治体病院の運営に反映されるようその趣旨をふまえ、自治体の一般会計から病院会計に繰出し を行うよう助言すること。

2.地方交付税による公立病院への財政支援についての「算定基準」について見直すこと。

3.消費税による「損税」については、地域医療の最後の砦として、地域医療水準の向上、不採算医療、保健衛生行政の一環を担っている自治体病院の経営がさらに厳しくなるため対策を講じること。

4.「医療構想」にともなう病床数の削減を自治体病院に押し付ける「新たな公立病院改革プラン」の策定を強制しないこと。また、自治体病院の統廃合、民間移譲などの「再編・ネットワーク化」や、自治体の地域医療への責任体制を後退させる「経営形態の変更」などの「地域医療切り捨て」を行わず、住民要求に基づく医療体制の整備・拡充を行うことを促進するための財政措置を行うこと。

5.医療現場では、医師・看護師不足は引き続き深刻な状況にあり、地域医療を確保する上からも早急に緊急対策を講じること。

(1)2011年の「看護師等の『雇用の質』の向上」2013年の「医療分野の『雇用の質』向上」の通知に基づき、自治体病院でもこれらの「向上対策」を進めること。

(2)被災地・へき地医療をはじめ地域医療を確保・充実するため、医師・看護師・コメディカルスタッフなど医療従事者の確保・定着対策を抜本的に強化すること。

(3)医師不足が著しい地域で、必要医師数が確保されるまでの間、一定年限の勤務の義務化を行うなど、効果的な医師派遣システムを構築すること。

(4)看護師の確保・定着がはかれるよう支援すること。

 総務省からの回答(要旨)
1.今後も公立病院が地域で必要とされる医療を継続的に提供できるように必要な財政措置を講じていく。4月に繰り出し基準を地方公共団体に通知する。自ら設置する公立病院の果 たすべき役割を踏まえて、健全経営と医療の質の確保との両立を図られるような助言をしていく。

2.見直しによって措置額が減少する病院もあるが、本来あるべき形に移行したと考えている。医師不足等により一時的に稼動病床が減少する場合も考えられ、看護経費を急激に減らす事も出来ないケースも考えられ、措置額が急激に減少しないように緩和措置を講じている。

3.全国自治体病院協議会等関係団体からも改善を求める意見が出されていることは認識している。公立病院を所管する立場から、こうした動きを注視し地域の医療提供体制の確保を図 れるように必要な財政措置を適切に行使していきたい。

4.新公立病院改革ガイドラインは、地方自治法に定める技術的な助言で法的拘束は無い。公立病院改革を進めるうえで住民の理解を得ることは大前提。公立病院改革の目指すところは、地域において必要な医療提供体制の確保を図り、その中で公立病院が安定した経営のもとで重要な役割を継続的に担っていく事が出来るようにすること。地域医療構想は民間も含めた課題であり、「削減ありきではない」として公立病院が例外となるものではない。

5.医師・看護師などの医療従事者の確保については、厚生労働省において地域医療介護総合活動基金を設けて取り組みを進めている。総務省としては、これらにかかる自治体の負担分について適切に地方交付税措置を講じているところ。今後も厚生労働省の話もよく聞きながら適切に対応したい。

  総務省からの回答を受けて、大阪から、泉州地域の医療について医師不足に伴う脆弱な医療体制の実態について。東京から、都保健医療公社病院での賃金・労働条件の切り下げ問題について。愛知から、産科医師がいなくなり病棟閉鎖になり、市民が安心してお産ができなくなっていることや救急医療の受け入れが困難な実態。岡山と茨城から、病院民営化計画が出されたが、医師会・住民の反対があり、白紙になったことやそれらの影響で患者さんが他の病院に移るなど影響が出ている。多くの職員や市民が直営で運営を望んでいることや「再編・統廃合は止めるべきではないか」と訴えました。

 厚労省 地域医療構想は、地域の実状を把握し協議するもの。「病床削減」が目的ではない
 自治労連からは17人が参加し、厚労省からは医政局、労働基準局、保険局が対応しました。冒頭、江花憲法政策局長は「医療職場の人員不足や長時間・過密労働の実態を示し、人員増で労働条件・職場環境を改善し、患者に対して良い医療がしたいという現場の声を聞いてほしい」とあいさつしました。

要請項目

1.厚労省が通知した2011年の「看護師等の『雇用の質』の向上」、2013年の「医療分野の『雇用の質』向上」の通知に基づき、関係機関への周知・徹底をはかり、自治体病院で もこれらの「向上対策」を進めること。

2.ILO第149号看護職員条約に鑑み、「夜勤を含むことを基本とする看護職員」については、労働時間を大幅に短縮し、「1勤務8時間以下」「週32時間(当面、36時間)以下」「勤務間隔は最低12時間以上」「『公休日』は24時間以上」とすること。

3.夜勤体制については、職務の特殊性から「1看護単位(病棟)で夜勤3人以上、月(暦月)6日以内」とすること。長時間勤務の「二交代制」は、身体的・精神的に犠牲を強いるとともに、患者さんには看護の質の低下につながる問題であり、同時に法的規制に反するものであり、原則として実施しないこと。このことでは、国土交通省が定めた「高速バス運行基準」を下回らない基準を厚労省が策定し看護職員についても連続夜勤や勤務間隔の規制をおこない、安全な体制確保に努めること。

4.看護師の配置基準については、抜本的に改善を行い、安全・安心の医療提供ができる人員体制を確保すること。そのためにも離職防止の対策を行い、看護師が働きつづけられる職場になるよう環境整備を促進すること。

5.地域医療構想において、地域の実態を無視した安易な病床削減や病床機能の変更を行わないこと。

6.公立病院が、ひきつづき地域医療を提供する中心的役割と、看取りも含めた慢性期医療、終末期医療の受け皿としても、その役割を担えるようにすること。

7.患者が住み慣れた地域で安心して療養生活を送れるよう、日ごろの健康管理から医療機関の紹介、在宅療養の支援等を担う「かかりつけ医」の整備を図ること。

厚労省からの回答(要旨)
1.法改正を行ない、各都道府県に支援センターを設置。ホームページやセミナーなど普及に努めている。

2・3.離職防止、復職支援の2点で看護師確保を図っている。深夜回数制限やインターバルなどの見直しを検討している。

4.28年の診療報酬改定で引き上げが行なわれた。それぞれの病院が提供する医療内容に応じて、必要な看護師数を考えている。

5.「病床削減」が目的ではない。強制ではなく、調整会議で協議されるべきもの。国が示したのはあくまでも基準であり、方向性を示す参考値。地域の実情・必要性に応じて地域 で話 し合いを。
7.「かかりつけ医」の定義が、それぞれ異なるかとは思うが、普及・推進に努めていきたい。昨年からかかりつけ医研修の取り組みを進めている。医師・患者を対象とした実態調査を今年・来年で予定している

 

  厚労省からの回答を受けて、香川から「看護師は病棟では情報収集などで1時間前に出勤しているが、時間外の申請はできない(上司の許可)。休憩が取れない(上司の理解と協力)」、大阪から「夜勤が12~16回、19回の人もいる。人として生きていけない。人の命を預かる職場として改善していきたい」、愛媛から「看護師募集しても、人が集まらない。原因は『長時間労働』ではないか。36協定内の時間内でおさめようと時間外を申請させないようにしている」、北海道から「北海道は面積が広い。医療圏として人口20万人で考えられているが、そうなると病院にかかることが、遠くて時間がかかり困難に。地域の特殊性を考えてほしい。産婦人科が近くにない。家族も何泊もして行くことになる。地域に住み続けることができるのか。医療とは『命』であり、国の支援が不可欠だ」、増田副議長は「現行の深夜回数規制は、一人一人に対してではない。歯止めをかけるため一人ひとりに対して、月上限72時間への努力をしてほしい。『36協定』と同時に『夜勤協定』も現場任せにせず、厚労省も踏み込んで考えてほしい」と職場や地域の実情や要望を訴えました。

全国自治体病院協議会 「地域構想」なしに「地域医療構想」はありえない、自治体立病院が地域医療の拠点に
 自治労連からは9人が参加し、全国自治体病院協議会からは黒澤経営調査部長が対応しました。
  はじめに、自治労連から前田中執(自治体病院闘争委員会事務局長)が、「国がすすめようとしている地域医療構想により、地域住民は安心して暮らせる地域となるのか不安の声も多い。毎年、この懇談を通じて、お互い共感しあえるところも多い。地域医療を守るため忌憚のない意見交換を」とあいさつを行い、医療部会の池尾議長の進行により、意見交換をしました。
 全自病協からは『地域医療構想』について、「都道府県の中には、各病院に病床削減数の数値目標を割り振っているところもあるが、調整会議の中で合意を取って行くのが本来であり、必要病床数も調整会議の論議の中で改定されるべき。地域医療を守るために、不採算な部分の実施も含め自治体病院は必要な存在であり、そのためには自治体からの一般会計から繰り入れてでも運営される必要がある。機械的に算出された病床数に自治体病院が合わせることはできない。また新公立病院改革ガイドラインに対する新改革プランでは、地域社会をどのようにするかという地域構想があって地域医療構想を立てなければ成り立たない。地域住民に対して病院の役割や現状を分かりやすく説明し、応援団になってもらわなければならない」との考え方を示しました。
 自治労連からは、「地域での運動を通じ、地域医療構想で病院機能を縮小させられると十分な地域医療を提供できなくなる。地域医療を守るためには、自治体病院が最後の砦との認識も出されている」と紹介し、「引き続き頑張っていただきたい」と要請しました。
 また、全自病協からは「厚労省の看護師需給計画もいまストップしている。また働き方改革の法制度を踏まえて結論を出して欲しい。地域包括ケアシステムについては、中小の自治体病院が担わなくては成り立たない」との考え方が出され、自治労連からも「在宅ケアではボランティアのみでなく行政との連携が必要で、自治体病院が拠点となり病院専門職が関わる必要があり、自治体病院が地域づくりには必須。地域によれば産科医不足で8年間分娩ができなかった地域もある。若い人が定着する地域のためには、安心して出産できる環境づくりのためにも自治体病院の役割は重要だ」と伝えました。
 最後に、あらためて自治体立病院が中心となって地域の保健・医療・介護全体の社会保障を守る役割を持ってもらえるよう期待していることを表明し懇談を終えました。

日本看護協会 夜勤労働を行う看護職の所定労働時間短縮、インターバルの確保、夜勤回数の上限設定を求める一致点を確認
 自治労連からは、24人が参加し、日本看護協会からは、坂本すが会長、菊地副会長、勝又常任理事、労働政策部が対応しました。
 懇談にあたり高柳副委員長は、職能団体として労働環境の整備への尽力に対する感謝を述べ、「全国から自治体病院で働く組合員・役員が参加している。現場実態を交え、課題を共有し運動を前にすすめる機会にさせていただきたい」とあいさつしました。
 小野江医療部会副議長から、「平成28年診療報酬改正で『夜間看護体制の充実』をめざした評価項目が新設されたが、現場で働いている側は何も変わっていない」と状況を話し、続いて各参加のみなさんから ○看護師の切実な声を集めた、看護師の一言付箋のとりくみに寄せられた現場の声の一部読み上げて紹介、○夜勤専従の過酷な勤務実態、 ○サービス残業が横行している状況、○働き続けたいという組合員の要求を背景に「長時間夜勤」ではなく「8時間3交替」にさせた組合の運動、○自治体病院では条例上の問題で夜勤従事者のみの労働時間短縮が困難な現場の状況を伝えました。一言付箋のとりくみや長時間夜勤を阻止したことには、坂本会長も強く関心を示し、「大切なとりくみだ」としました。
 日本看護協会からは「まずは16時間働いて、残業もつかない状況を正して、働く時間を短くなるように動いていき、組合は、組合員の健康を守ることを考え各病院管理者に、看護協会は行政に対し、様々な戦略を考えながら対応していきましょう」と話されました。
 最後に、坂本会長から日本看護協会として事業計画の二番目に「看護職の労働環境の整備の推進」を入れ、賃金の改善にもとりくんでいくことを説明されました。
  現場での「『こうやったら、こうできたこと』を見せ合うことができないか、自治体病院での労働環境の改善等で前進していることも聞かせてほしい」と提案され、今後も懇談をしていくことを確認して終えました。