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第1録 木造の洋風建築並ぶ「大正ロマン」の旅館街

いい旅ニッポン見聞録2016年1月号 Vol.506

山形県尾花沢市・銀山温泉

木造の洋風建築並ぶ「大正ロマン」の旅館街

他と一線を画する「秘湯」
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▲大正時代を思わせる旅館街

 東北には「秘湯」とよばれる温泉は数々あり、それぞれが独特の情緒を醸し出し、どこも味わい深い。青森の酸ヶ湯(すかゆ)、岩手の夏油(げとう)温泉、秋田の乳頭温泉、福島の野地温泉など、いずれも雪深い山の中にある一軒宿です。

 同じ東北のこのような秘湯と明らかに一線を画する珍しい秘湯が、山形県尾花沢市にある「銀山温泉」です。

 銀山温泉は、「延沢(のべさわ)銀山」の鉱夫が寛永年間(1630年代)に発見し、当初は銀鉱で働く人たちに使われ、1689年の銀山廃鉱後は湯治場とされ賑わいましたが、1913(大正2)年に銀山川の大洪水があり温泉街は壊滅しました。

 その後、大正末から昭和初期にかけて、相次いで建てられた3~4層の木造の洋風建築が今日の銀山温泉の旅館群です。

 銀山温泉の何が他と「一線を画する」のか、それは、この当時建てられた、まさに「大正ロマン」そのものを漂わせる旅館街の景観です。

 山間の小さな銀山川の両岸の、わずか300メートルほどの狭い谷間に古色蒼然とした旅館が所狭しと立ち並んでいる景観は大正時代にタイムスリップしたような、不思議な感覚に襲われ、夜ともなると、銀山川の両岸の旅館の灯とガス灯が何とも言えぬ幻想的な風情を醸し出しています。

 温泉は無色透明で、泉質は「ナトリウム・塩化物・硫酸塩温泉」です。

 源泉温度は64度前後と少し高めですが、各旅館の浴槽は源泉かけ流しで、躰の芯までしみとおるような温泉力の強さを感じさせます。

 山形県には、他にもお勧めしたい秘湯が幾つもあります。新庄駅から50分ほど入った「肘折(ひじおり)温泉」、昨年は6メートルもの積雪を記録した雪深いところです。また米沢駅から40分ほど入った、西吾妻山登山口にある白布温泉、その奥の新高湯温泉など、秘湯のはしごをしても楽しめます。

 また山形に行ったら、ぜひ立寄りたい名所が「山寺」です。

 仙山線山寺駅の目の前の山全体に広がる伽藍群が、860(貞観2)年に開山された「宝珠山立石寺」、俗に「山寺」とよばれている名刹です。

 山頂近くに建つ「五大堂」は巨大な岩の上にあり、天候に恵まれれば、眼前に蔵王連峰の雄姿が広がります。

 また境内のあちこちに、松尾芭蕉の足跡が残されており、有名な「閑さや岩にしみ入る蝉の声」の句の短冊を埋めた上に建てられた「せみ塚」など、1000段続く石段の随所に見どころがあり、楽しめます。

見聞メモ
【銀山温泉】
交通/山形新幹線・大石田駅よりバスで約40分、温泉街は一般車両通行禁止、徒歩約3分の宿指定の駐車場を利用
問い合せ/銀山温泉観光案内所0237-28-3933

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▲夜の幻想的な風情
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▲五大堂から見た山寺の一部