第68景 |
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東京・世田谷区職労
池沢 昇さん
カンボジア
「赤い大地」に思いめぐらせ |
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▲アンコールワット寺院最上階の第3回廊。これより上は、中央祠堂と4つの小塔
▲アンコールワットの池の端から、中央祠堂の塔を中心とした寺院全景を望む
▲アンコールワット外壁塔門の廊下の石壁のレリーフ。デバタ女神
7月、 カンボジアは雨季にある。雨雲がたちまち現われ、ひとしきり雨を降らせて去って行く。雨にたたかれた赤い大地から、土ほこりが舞い上がり、熱気に覆われる。
シェムリアップはプノンペンからバスで6時間、周辺にはアンコールワットのほかにも最高級の遺跡が残されている。その拠点となるこの小さな町は、外国人観光客の落とす金を目当てに拡張を続ける。一角に欧米を思わせるバーやカフェーが並び、その眼前をオートバイや自動車が無茶苦茶に走り回る。そして、一雨で道路は見る見る泥田に変ずる。アジアとヨーロッパが混在する。
エアコンなしの部屋は5ドル。トクトクは馬車の馬をオートバイに変えた乗り物で、1日10ドルから20ドル。気の毒なことにカンボジア通貨リエルは1ドル未満に使われる。これを3日借り上げる。覆いがあるので、豪雨にも強い日差しにも耐えられる。
旅行の目的は、ひとつに、アンコールワットの端整優美な石の尖塔と回廊、そして柱や壁の精妙なレリーフ、ジャングルに呑み込まれ崩壊して苔むす石造物を、デジタルカメラがどのように写し撮るのかを試すこともあった。結果は不満足だが、この程度か。
シェムリアップからプノンペンに戻ると落ち着く。首都でも裏通りは舗装されず、赤土のままである。カフェーに入ってコンデンスミルクの入った甘いコーヒーを飲みながら思いをめぐらす。「ビルマの竪琴」だったか。ビルマの土が赤いのは人間の流した血に染まったからだと言う。確かに、アジア大陸はもとより、ニューギニアもインドネシアもフィリピンの大地も赤い。この国カンボジアでは、地雷で足を失った人はどこでも見かけるが、多くの殺された者は見えない。もし、殺された者の血が大地を赤く染めるのなら、この国の大地はもっと赤いだろう。