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2016年度地方財政対策について
(書記長談話)

地方自治に介入し、公共サービスの低下をもたらす

地方交付税への「トップラナンナー方式」導入を中止せよ

 ~2016年度地方財政対策について(談話)~

2016年2月2日

日本自治体労働組合総連合

書記長 中川 悟

 

 総務省は2016年度地方財政対策を決定し、1月25日に都道府県財政課長等会議を開くなどして、地方に周知徹底を図ろうとしている。地方財政対策では、地方の一般財源総額については、税収増により前年度を1300億円上回る61.7兆円を確保している。しかし、地方交付税はリーマンショックを機に導入された「別枠加算」を廃止して、前年度比546億円減の16.7兆円と4年連続の削減となっている。地方交付税の不足分を補う臨時財政対策債も0.7兆円減の3.8兆円としている。「三位一体改革」以降、地方の財源不足は依然として深刻である。地方の税収は全体として増収になっても、地方の税源には格差があり、地方自治体間の財政力の格差は拡大する。地方交付税は地方の財源格差を是正し、地方の財源不足を解消させる重要な役割を担うものであり、今後も、法定率の抜本的な引き上げを含めた拡充が求められる。

 地方交付税では、新たに「トップランナー方式」として、税金の徴収や、民間委託や指定管理者制度などのアウトソーシングを全国で「先進的」に進めている自治体をモデルにしたコストで算定を行うとしている。2016年度では、学校用務、本庁舎の清掃、警備、体育館、プール管理など16業務について算定の見直しを行うとしている。地方交付税の算定に職員の削減など「行革」努力を反映させる「地域の元気創造事業費」も前年度から継続するとしている。さらに総務省は、自治体の窓口業務について、第31次地方制度調査会の答申案に沿って、複数の市町村が地方独立行政法人に業務を包括的に委託できる制度を創設することを検討し、アウトソーシングをさらに進めようとしている。一方で、総務省が民間委託や指定管理者制度の「モデル」として紹介している事例の中には、偽装請負で民間委託を一部直営に戻した足立区戸籍事務、指定管理者が不適正な図書購入を行っていた佐賀県武雄市立図書館、委託業者が突然撤退して給食の提供が中止になった静岡県浜松市の学校給食調理業務など、重大な問題が発生している。「トップランナー方式」や「行革」努力の反映は、地方交付税の目的・趣旨に違反し、地方自治に介入して「行革」を押し付け、公共サービスの低下を招くものであり、導入の中止を求める。

 国がやるべきことは、国民が全国のどの地域に住んでいても憲法に基づく健康で文化的な生活が営めるようにナショナルミニマムを保障し、地方自治体の財源格差を是正して、地方財政を拡充させることにある。自治労連は、地方自治体が憲法に基づき「住民の福祉の増進」(地方自治法)を図る役割を発揮するために、国が責任を持って地方財源を保障することを要求する。地方交付税については「三位一体改革」で大幅に減らされた額を元に戻し、地方財源格差を是正し、財源保障の機能を果たすよう、制度の拡充を図ることを求める。自治労連は、2016年度政府予算案が審議される通常国会に対する取り組みをはじめ、公共サービスを支える地方財政を拡充させるために、引き続き、住民、自治体関係者との共同を広げてたたかうものである。