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政府の2013年度地方財政対策について

地方公務員の人件費削減、借金まみれの大型公共事業の押しつけを許さず、住民本位の地方財政確立を

政府の2013年度地方財政対策について(談話)

2013年2月7日
日本自治体労働組合総連合
書記長 猿橋 均

 安倍内閣は1月29日、2013年度予算案を閣議決定した。予算案に盛り込まれた地方財政対策について、一般財源総額は前年度と同水準の59兆7526億円としているが、(1)地方公務員の給与について2013年7月から国家公務員と同様の削減を実施することを前提に、給与費を8504億円減額する、(2)給与の削減分を、「緊急防災・減災事業費」(4550億円)、「地域の元気づくり事業費」(3000億円)、「全国防災事業費(地方負担分)」(973億円)に充当する、「地域の元気づくり事業費」については、「算定にあたり、各地方公共団体のこれまでの人件費削減努力を反映する」としている。

 2013年度地方財政対策の問題点は、第一に、国が地方公務員の給与削減を押し付け、地方自治に不当な介入をしていることである。総務省は昨年10月10日に行った自治労連との交渉で「総務省から各地方公共団体に対して、今回の国家公務員に関わる時限的な給与削減措置と同様の措置を実施するよう要請することや、強制することは考えていない」と回答していた。今回の地方財政対策は、これまでの総務省の見解を一変させるものであり、断じて許すことはできない。地方6団体も1月27日に共同声明を発表し、「国が地方公務員の給与削減を強制することは、地方自治の根幹に関わる問題である」として、給与の決定について国に「自主性を侵すことのないよう強く求める」としている。

 震災復興特別交付税では、6198億円(前年度比で657億円減)を計上し、被災地の自治体を支援するための職員派遣や職員採用、福島第一原発事故の除染費用を含む地方単独事業分で1220億円(昨年1200億円)を確保するとしている。被災地では、復旧・復興事業を担う自治体職員が圧倒的に不足しており、国からの長期にわたる支援が求められる。国は震災復興特別交付税を2015年度末までの時限的な措置としている。自治労連は、被災地の自治体において、正規職員の計画的な採用を行って人員不足を解消し、行政機能を回復できるように、人的支援を行う特別交付税を2016年度以降も延長するように求めている。

 第二は、地方自治体の財源を保障する国の役割をゆがめ、地方財政を大型公共事業推進という安倍内閣が掲げる政策目的達成のための手段に使おうとしていることである。地方財政対策でかかげている「防災・減災事業」や「地域活性化事業」が住民本位の復旧・復興につながる保障はない。不要不急の大型高速道路建設など、安倍内閣が進める「経済成長戦略」にのっとって、大企業に巨大な利益を与える大型公共事業に地方自治体の財政を動員しようとするものである。地方財政対策で「財源不足の補填」としてかかげている臨時財政対策債は、大型公共事業への支出を誘発し、地方自治体の借金を増大させる要因にもなっており、地方団体からも廃止すべきとの要望が上がっている。

 政府は「復旧・復興」に名を借りた大型公共事業に地方財政を動員するのをやめ、被災者の生活と生業の再建、消防・医療・現業・福祉など公務公共サービスを担う人員確保など、地方自治体が住民のための施策を行うのに必要な財源を確保するべきである。

 第三は、安倍内閣が進めようとしている公務員の人件費削減、大型公共事業への財政支出、金融緩和などの政策が、景気回復につながらず、逆に、地域経済の衰退と地方自治体の財政悪化、公務公共サービスの深刻な低下をもたらすことである。地方公務員の給与削減は、地域の地場賃金引き下げにも連動し、生活保護基準の引き下げとあわせて、国民全体の生活をますます悪化させ、「貧困と格差」を拡大させる。さらに、地域医療を担う自治体病院等の医師、看護師の確保にも困難が持ち込まれるなど、地域の公務公共サービスの深刻な低下を招くことになる。
 大型公共事業への財政支出と金融緩和策は、政府が1990年代を通じて一貫して進めてきた政策であったが、デフレ対策としての効果はまったく見られなかった。そればかりか、国と地方自治体の累積債務を増大させ、1997年には消費税の増税と社会保障改悪で国民に9兆円もの負担がおしつけられた。 大型公共事業や金融緩和で一部の大企業がもうけても、国民のくらし向上、地方財政の改善につながらないことは過去の事実が証明している。消費税増税をねらった大企業本位の「経済成長戦略」を進めるために、住民と自治体・公務公共労働者に犠牲をおしつけることは許されない。

 自治労連は、地方公務員の人件費の削減と、借金まみれの大型公共事業を地方に押し付ける2013年度の地方財政対策の問題点を、地方自治体関係者との共同を広げて、さらに明らかにするとともに、住民本位の地方自治体財政を確立するために、住民とともにたたかうものである。

以上

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