保育所に無資格者を拡大する「厚労省令の改正案」の撤回と、保育士確保の抜本的な措置を求める(共同声明) 

― 「無資格者の導入拡大」は、子どもたちの保育内容を後退させ、保育の専門性を軽視し、保育士の誇りを傷つけるもの ― 

2016月1月5日

全国福祉保育労働組合

日本自治体労働組合総連合 

 厚生労働省は、省内の「保育士等確保対策検討会」の「保育の担い手確保に向けた緊急的な取りまとめ」(15年12月4日)を受けて、16年4月1日から保育職場に無資格者の導入を拡大する「省令改正案」を公表しました。

「緊急的なとりまとめ」では、①15年度に特例として容認した「朝夕の保育士配置の弾力化」を「特例」ではなく省令を改正し継続する、②「幼稚園教諭及び小学校教諭等の活用」、③「研修代替要員等の加配人員における保育士以外の人員配置の弾力化」をするとし、しかも、地域型保育事業や延長保育等においても同様としています。

今回の「省令改正案」は、現場の保育士不足が深刻な状況の下で、保育士資格保持者の確保をあいまいにし、無資格者の拡大で対応しようとする極めて不当なものです。また、「この措置は、あくまで待機児童を解消し、受け皿拡大が一段落するまでの緊急的・時限的な対応」としていますが、待機児童解消のめどがたたない中で省令を改正するものであり、事実上の「恒常化」をめざすものと考えられます。 

 保育という仕事は、乳幼児期の子どもへの成長・発達を願う深い愛情に裏打ちされた高度な専門性を有する仕事です。突発する病気、不慮のけがなどへの備えが必要なのはもちろん、乳幼児期を通じた発達の特徴、個々の子どもの要求や課題、子ども同士の関係など、子どもたちと向かい合うときには、常にいろいろなことを念頭に置いておかなければなりません。保護者に対する支援や地域との交流なども保育士の重要な仕事です。多くの保育士は、保育という仕事にやりがいを感じ、専門職としての誇りを胸に日々保育に従事しています。

今回の「省令改正案」は、なによりも子どもたちの健やかな成長や発達を保障する保育内容の後退につながるものであり、また、保育士の専門性を軽視し、保育士の誇りを傷つけるものと言わざるを得ません。そして、このことは幼稚園や小学校の教諭、養護教諭の専門性をも軽視する不当なものです。

 保育士不足は深刻です。保育士の有効求人倍率は、全国で1.93倍、東京都では5.39倍(2015年10月時点)と、全労働者の求人と比べても非常に高く、保育士確保が困難な状況は明白です。

保育士不足の主な要因は、保育士の賃金が全産業の平均より月額約10万円(所定内給与額比較)も低いこと、それに加えて他の先進国と比べ劣悪な保育士配置基準などにより過酷な労働が強いられているからです。120万人いる保育士登録者のうち40万人しか保育の職に就いていないこと、保育士資格を有するハローワーク求職者のうち約半数が保育士としての就業を希望していないことが、生活を支え働き続けることのできる職業となり得ていないことを示しています。

保育士不足の解消に最も有効な施策は、保育士の賃金労働条件を大幅に改善すること、保育士配置基準などの「最低基準」を大幅に引き上げることしかありません。厚生労働省もそのことはわかっているはずです。「取りまとめ」の中で、「保育所等における保育は、生涯にわたる人間形成の基礎を培う重要なものであり、その専門的知識と技術をもつ保育士が行うものである」と述べています。それにも関わらず、保育士の専門性の否定につながる施策を打ち出すことは、保育の質の低下による子どもたちへの影響を一顧だにせず、保育の予算を抑えるために安上がりな手立てを講じるものと言わざるを得ないものです。

 児童福祉法は「国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う(第二条)」とし、このことは「児童の福祉を保障するための原理であり、この原理は、すべて児童に関する法令の施行にあたって、常に尊重されなければならない(第三条)」としています。あたかも保育士確保に苦労する現場に寄り添うような言い方で省令を改正し、国と自治体の責任を後退させることは断じて許すことはできません。

「厚労省令改正案」を撤回し、保育士処遇改善、職員配置基準の改正、保育士確保のための必要な予算確保を強く求めるものです。 

以 上